両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く |チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン

両利きの経営

一般的に、事業の成熟化によりさらに効率的な運営に磨きをかける「深化」に偏っていく傾向があります。コストとリスクが伴う「探索」も同時に行わなくては、変化する社会で、永続的な経営は難しいです。大切なのは、「深化」と「探索」を両利きでできるようにする経営と組織を作ることです。

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成功する企業ほど陥る「サクセストラップ」とは!?

成功している組織は存続していく中で、規範をつくり、成功にかかわる行動について期待値を設定する。

第2章 探索と深化

ビジネスを円滑にすすめるには社会から信用を獲得しなければなりませんが、信用を得るためには事業の安定性が不可欠です。安定性を突き詰める「深化」によって、短期的な成功をもたらされます。

しかし、変化する時代や社会に対応するように新しい挑戦も行う必要があります。同じ領域だけで「深化」に偏っていては、いずれ事業に陰りが訪れることになるのです。

矛盾を抱えることが、継続的な成功への道!?

変化に直面した組織が生き残るためには、リーダーは相矛盾する二つの重要なことをやってのけなくてはならない。

第3章 イノベーションストリームとのバランスを実現させる

変化が激しい事業環境では、重要な資源や、投入先の市場自体も変わっていきます。これに対応しながら事業と組織を進化させ永続性を獲得するには、事業の安定化を志向する「深化」だけではなく、新たな事業の「探索」も必要です。

「探索」は、1.多様化(組織が違う特徴に目をつけ、)2.選択(違いによって、組織が生き延びる能力に差が生まれ、)3.維持(次へと生き残るための特徴が受け継がれる)という進化の系譜の出発点になります。偶然生まれた特徴が、変化する時代に適合すれば、組織が生き延びる可能性を高めます。適合とは、物理的、財務的、知的資源が集中するということです。

必要不可欠な「探索」は、一方でリスクとコストがかかる上に、どれだけリターンがもたらされるか不確実性が高いのも事実です。また、”いまのままだけでは、いけない”という自己否定をし続ける根気も必要となるのです。

短期的に見て、相反する2つの志向性を同じ組織の中に持たなくてはいけないということです。

4つの両利きの要件とは!?

このすべてを組み合わせることが、領域基礎式をうまく設計するために必要な要素だと、私たちは考えている。

第6章 両利きの要件とは?

相反する取り組みを組織に内包しておくには、それ相応の工夫が必要です。著者は次の4つのポイントを重要な順番に掲げています。

1.戦略的意図
一見して非効率な両利きの経営をなぜ行わなければならないのか、探索と進化が必要であることを正当化する明確な戦略的意図を上層部全員が腹落ちしている状況を作る必要があります。そして、探索を任させる「出島チーム」が資源や資産を利活用できるように明確化する必要も同時にあります。

2.経営陣の関与と支援
成熟事業の短期的な需要に、探索をする「出島チーム」が飲み込まれてしまうことを常々守ってあげなくてはいけません。これは上層部の積極的関与が有効です。適切な監督、評価に加えて、ベンチャー企業の社長のようにオーナーシップを発揮しましょう。例えば、”非常に有望な成長事業ではなく、貴重な資源を浪費する「シンクタンク」”などと、社内からみなされるようではよろしくありません。

3.組織設計
「出島チーム」が、既存事業チームに影響を受けず、独立性を保つ必要があります。組織構造として分離する必要がありながらも、大組織の資産や組織能力を適宜活用できるアクセス権も同時にもたせる必要があります。分離と統合を両立させることが重要で、ここが難しいところです。

4.共通のアイデンティティ ―ビジョン、価値観、文化力
「出島チーム」と既存事業チームが、協働できるようなビジョンを掲げる必要があります。互いに邪魔や驚異とみなされないように、あくまでひとつの組織が生き残るために互いが必要な存在であると、認め合わなくては継続性はありません。

これら4つのすべての実践が、両利きの経営を成り立たせるために必要です。

著者の研究結果に基づくと、ほとんどの事業は探索への投資が不十分であることを示すそうです。また、激しい共創や不確実な状況に立たされる企業ほど両利きの経営が役に立つそうです。両利きの経営を組織にもたらすのは、間違いなくリーダーシップの問題であり、ひとりひとりの意識改革から始まる活動だと考えます。

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数多くの成功事例から、企業の永続性には深化だけではなく、探索も必要であると問いた注目の良書です。これは、非常に優秀な経営者が、天性の才能で、ごく自然に行えていることかもしれません。どうしたら天才経営者を待つのではなく、組織として対応できるのか!?についてひとつの答えを得ることができるでしょう。ぜひ、多くの方に手にとっていただきたい良書です。

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