【抽象化という「思考」と「野生の行動力」の間で・・・!?】具体と抽象|細谷功

具体と抽象
  • どうしたら、思考のちからを養えるでしょうか。
  • 実は、具体と抽象の行き来がポイントかも。
  • なぜなら、人間の営みは「抽象化」が支えているからです。
  • 本書は、具体と抽象を俯瞰して、人のものごとの捉え方に迫る1冊です。
  • 本書を通じて、自分の視野・視座・視点に俯瞰のエッセンスを加えられます。
細谷功
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数や言葉も!?

前回の投稿「【「わかりやすい!!」は、本当に価値なのか!?】具体と抽象|細谷功」に続き、今回もこちらの1冊『具体と抽象』レビューしていきたいと思います。

前回の投稿では、具体と抽象の入口に立ちました。情報化社会の中で、「わかりやすさ」が歓迎される中で、そのわかりやすさの正体に迫りました。それこそ具体です。具体的なものほど、わかりやすく、そしてみなに受け入れられることができます。

でもはたして、具体論だけがフォーカスされてよいのでしょうか!?一定の線引をしたり、まとまりを考えてみる、「抽象」視点を持つことが、実は人間の本来的な考える行動につながっているのです。

いくつかの抽象のパターンを見ていくことで、俯瞰した視点でものごとを考えたり、見たりする行動を強化してみましょう。

抽象は、私たちの身近にあります。実際に言葉や、数字も抽象概念であると言えます。

言葉と数を生み出すのに必要なのが、「複数のものをまとめて、一つのものとして扱う」という「抽象化」です。

【第1章】 数と言葉 人間の頭はどこがすごいのか

数と言葉を成立されているためには、「まとめて同じ」と考えることが不可欠です。例えば、りんごを数えることを考えてみましょう。りんごは、同じりんごが一つとして本来ありません。ですが、それをりんごとして「まとめ」ていくことで、1・2・3・・・個と初めて数えることができます。

実は抽象化というのは、具体をまとめるアプローチでもあるのです。

抽象化のポイントとは!?

ある種のデフォルメをするのが抽象化です。別の言い方をすれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」が抽象化とも捉えることできます。

この抽象化、これは人間だけが行える思考でもあります。また、そのことによって、人間は、社会や技術を発展させてきたと言っていいでしょう。

抽象化のメリットとはそもそもなんでしょうか!?それは、複数のものをグルーピング・まとめることで、「同じ」とみなすことで、ひとつのものごとにおける「学びを他の場面でも適用することが可能になること」です。

つまり「一を聞いて十を知る」(実際には、十どころか百万でも可能)です。

【第4章】 法則とパターン認識 一を聞いて十を知る

言い換えれば、「パターン認識」能力のことです。パターンを見つけて名前をつけることで、法則として複数場面に活用することができます。特定の場面で学んだことを、他の場面でも応用することで、学びを深めて、転用し、よりよい仕組みを構築することに役立てることができます。

これこそ「法則」の発見です。自然やものごとの中に法則性をみきわめることで、初めてそれを応用して、使っていくことが可能になります。「フレミングの法則」や「慣性の法則」などを思い出してみると理解が容易になります。あるいは、そうした物理法則でなくても、「燕が低く飛んだら雨が降る」とか、「夕焼けが出れば翌日は晴れる」というような経験則も、抽象化の産物でしょう。

「パターン認識」や「法則」によって私たちがどれだけ「賢く」なっているかは計り知れません。その根本にあるのが抽象化なのです。

【第4章】 法則とパターン認識 一を聞いて十を知る

具体→抽象化の構造は階層になっています。

ここでその階層を感じるために「おにぎり」を考えてみましょう。「おにぎり」という言葉は、うめのおにぎり、しゃけのおにぎり、おかかのおにぎりに対して、抽象的な存在です。しかし一方で、「食事」という言葉に対しては具体的です。このように、具体と抽象はレイヤー(階層)でできています。

コミュニケーションや仕事をしたりするときには、このレイヤーをピッタリとあわせないと齟齬が生まれてしまいます。しかし、このレイヤーはしっかり目に見えているかと言うとそんな事ないのです。そもそも抽象概念こそが目に見えづらいものでもあるので、ここに利便性と罠があります。

具体と抽象で、組織と仕事の内容についてふれることも可能です。上流工程(経営層等)は、抽象の世界です。ここでは、個性が求められます。「いかにとがらせるか?」という視点の中で、企業全体の特徴を引き出しながら、社会全体との取引を行っていくように方向づけを行います。一方で、下流工程は大勢の人に「わかりやすく」体系化・標準化して、落とし込むことが求められます。ここで「個性」はともすると全体の取り組みから相反する考え方になりかねません。このバランスの中で、組織ピラミッドが成り立っています。

このように、具体と抽象を考えることは、人間がこれまで構築してきた仕組みやそこで行われている営みを俯瞰して捉えるヒントを提供してくれるのです。

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抽象化は、ビジョン!?

企業を舵取りする時に、大きなビジョンが必要になります。このビジョンは、企業がステークホルダーと見て共有したい世界観のことです。実はここにも「抽象化の能力」が必要になります。なぜなら、ビジョンというのは、個別の行動に困った時に立ち返る視点だからです。「最終的に何を実現したいのか」を、「枝葉を切り捨てて幹」を想定してみることで、はじめてビジョンは見出されていきます。

別の捉え方をしてみれば、「やるべきこと(to do)」は見えやすいし、手触りもあるのですが、ビジョン、すなわち「みなと見たいこと(to be)」は、見えづらいことなのです。だからこそ、抽象化の視点を活用して、俯瞰して見つめて、そして、(これも抽象的概念ですが)言葉としてまとめておくこと肝心なのですね。

大きな目標があってはじめて個別のアクションが有機的につながり、「個別の無機質な行動」が意義とつながりをもった生きた行動になっていきます。

【第13章】 ベクトル 哲学、理念、コンセプトの役割とは

また、こうした活動は、つねに見直し続けることが欠かせません。

というのも、ビジョンや、あるいは、ルールなどは、環境や社会の変化に応じて、更新され続けられるべきものだからです。一度、固定化された抽象度の高い知識(ルールや法則等)は固定観念となって人間の前に立ちはだかってしまうこともあります。それに合わない現実のほうが間違いで、後付だったはずの理論やルールなどに現実をあわせようとするのは完全に間違いです。

常に状況を見ながら、新しい抽象化を繰り返し、改廃を繰り替えていく過程にこそ、価値が宿るのかも知れません。

また、過剰に抽象化を行おうとして「パターン」や「関係性」を意識的に見つけようとすることについても、注意が必要です。ただでさえ、人間はバイアスという色眼鏡で、ものごとをみているので、こうした傾向は強まります。これも含めて、自らを俯瞰することが大切で、具体と抽象の間を上手に生きていくことを目指していきましょう。

また、一方で、抽象化に慣れた人は、自然をありのままで見ることがむずかしくなります。抽象レベルの概念は、ものごとを見る際に、人の視点を「固定化」するからです。抽象化という一つの座標軸に固定化した人は、他の座標軸の抽象化をえた人とでは、なかなかコミュニケーションがとれなくなります。自身がある程度ものごとの見立てを固定化していると思っていないからこそ、やっかいになります。

そして、抽象化という視点を得ている人は、そうでない具体的なレイヤーだけで判断している人に苛立ちを覚えがちです。具体的なレイヤーで判断している人、たとえば、「前例」や「数値目標」だけに頼る人に対して、意味を感じたい人がイライラするようなことです。「見えている人」からみて「見えていない人」はイライラしてしまい、また「見えていない人」から「見えている人」の視点はわからないので、これまた、異星人の言葉のように捉えられがちなのも事実・・・

抽象化にも弊害があり、具体化だけではもったいない。そんな視点を持って、上手にレイヤーを行き来しながら、この世界や社会あるいは、自分の時間と向き合っていくことが大切なのかも知れません。

まとめ

  • 数や言葉も!?――抽象化の最たるものが、数や言葉です。
  • 抽象化のポイントとは!?――まとまり、デフォルメにあります。
  • 抽象化は、ビジョン!?――具体的な行動を取りまとめるビジョンを、常に更新し続けましょう。(会社も、自分自身のものごとの見立ても・・・)
細谷功
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