【心配は、集合が作る!?】心配学~「本当の確率」となぜずれる?~|島崎敢

心配学~「本当の確率」となぜずれる?~
  • 私たちはなぜ、確率の高い交通事故に比べて、確率の低い飛行機事故を過剰に心配してしまうのでしょうか!?
  • 実は、心配と確率の度合いとには、大きな隔たりがあるからかも。
  • なぜなら、人はリスクに正しく向き合うのが苦手だからです。
  • 本書は、心配の本質について説いた1冊です。
  • 本書を通じて、自分のバイアスを俯瞰する視点を得られます。

心配と確率とは!?

私たちはテロに巻き込まれたらどうしようと心配している一方で、車を運転する時や道を歩く時に事故にまきこもれたらどうしよう、とそれほど心配してないような気がします。

はじめに――テロリストが狙う「心配」

本当は、車で事故に合うことの方がよっぽど高いです。なぜ、人は、危ないのに心配せず、危なくないものに過剰に心配をしてしまうのでしょうか。そして、この心配の度合いは、個人差もあります。本当に心配なものを、正しい度合いで心配しないと、正しく身を守ることは難しいでしょう。

心配の度合いは、本当の確率からあまりズレていないほうが理想です。

テロの問題でも、飛行機事故の問題でも、原発の処理水の問題でも、確率に向き合うことは非常に複雑です。私たちは専門的な知識を一つしか持っていないことが多くの場合なので、本当の確率と心配とを両方の側面から捉え、語り、正しく理解するスキルをなかなか持ち得ません。

一方で、心配と確率は、感情とサイエンスでもあることが、横断をより困難にしていると言えます。さらに、たとえば直近で話題になっている厳罰の処理水の問題については、国際的な政治の兼ね合いもあいまり、複雑さをかなり増強させてしまっています。

リスクとは!?

心配を生み出している「不幸なできごとが起こるかもしれないこと」を、リスクと呼んでいます。不幸なできごとが起きる確率が0%より大きく、100%より小さい状態」をリスクと呼びます。

リスクにはさまざまな定義がありますが、大雑把に、「起きる確率」×「結果の重大性」だということができます。

第1章 どうせいつかは死んじゃうのに、なぜ「心配」するのか?

確率も、重大性も、数字に置き換えて科学的に説明することが可能でしょう。しかし、多くの人は、これらのリスクの内訳を正しく数字で考えることをしません。

「集合心配」の世界とは!?

私たちの脳は飽きっぽい。このことが、実は私たちを正しく心配することから遠ざけていると言ったら、意外でしょうか。次のようなメカニズムが働き、社会的に心配はつくられていくのです。

  • 私たちの脳は飽きっぽいので、よくあることには反応できない。
     ↓
  • だから、イレギュラーなことに注目が及びがち。
     ↓
  • よって、時間シェアを獲得したいメディアもイレギュラーなことを大々的に伝えがち。
     ↓
  • 事故や事件を実際の件数とは異なる比率で、集合的に認知させる。
     ↓
  • 確率と心配の度合いが偏る。

いわば「集合心配」が形つくられ、個人にフィードバックさせれていきます。過去にあった凄惨な事故や事件が、情報として繰り返しリーチされていくことによって、実態とは異なる認識の世界が構築されていきます。

何も、メディアの方々は人心を煽ろうとして偏った報道をしているのではないのです。どうしても経済と社会の仕組み上、視聴者・閲覧者が求めるがあまり、そうした傾向を形作ると見て良いでしょう。

つまり、心配は、私たちの脳が飽きっぽいことに端を発して、醸成されていくのです。

また、「平均」という社会性も心配を喚起します。人間は社会的な生き物であるので、どうしても自分の社会でのポジションを比較をもとに、見出すことをしてしまいます。比較の先に、幸福はないのですが、残念ながら、比較は人間の性です。

平均所得、平均年収、平均賃金、偏差値、学歴水準などなど、ありとあらゆるものが平均化されて、まるで社会を二分するように語られます。勝ち組、負け組のような表現も、これらを助長させます。

平均で心配しないためには、いくつか方法があります。

1)5パーセンタイル~95パーセンタイルなどの範囲で捉えること。
2)最頻値や中央値を算出して捉えること。

数字のマジックに惑わされずに、全体を正しい認識を持つコツです。

世の中はとても複雑なので、ある原因がひとつの結果にだけ影響を与えるという関係は稀です。

第2章 セレブと自分を比べて凹まない、ひとつの方法

また、社会はとても複雑であるということに、意識を向けるということも大切でしょう。例えば、東京大学合格の要素と聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか。「偏差値」かもしれませんし、「遺伝」かもしれませんし、「家庭環境」かもしれませんし、「受験者数」かもしれませんし、たくさんの変数が浮かぶでしょう。これらが複雑に絡み合って、アウトプットという目に見える形で現れてくるのです。

でも私たちに見えることは、社会や自然のごく一部分でしかないので、全体を捉えることは困難なのです。困難であるからこそ、どうしてもシンプルなロジックを採用して、いち早くケリをつけたい気持ちになります。でもここはぐっとこらえて、複雑なものを複雑なものとして捉え続ける胆力が必要なのではないでしょうか。

まとめ

  • 心配と確率とは!?――実際の確率と心配度合いは、かけ離れています。
  • リスクとは!?――不幸なことが起きる確率と不幸の度合いの掛け算です。これを正しく理解することが科学的なアプローチの第一歩です。
  • 「集合心配」の世界とは!?――人間の脳が飽きっぽいので、異常値を頻繁に取り上げるのです。
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