- 失われた30年をどうしたら、成長起点の30年として捉えられるでしょうか!?
- 実は、「循環」がポイントかも。
- なぜなら、経済は、「循環」で育つからです。
- 本書は、ヒト・モノ・カネ・情報(データ)の循環について説いた1冊です。
- 本書を通じて、今世紀にソフトランディングする路が見えるでしょう。
前回の投稿「【長期停滞の真因は!?】価値循環が日本を動かす 人口減少を乗り越える新成長戦略|デロイトトーマツグループ」に続き、今回もレビューを続けさせていただきます。
「循環」が必要な理由とは!?
循環価値は、すべてのリソースを「循環」させることで、付加価値を生み出し、それを増幅する考え方です。人の数が減っても、価値循環の「回転」と「蓄積」のメカニズムを用いて、1人あたりの付加価値を高めて成長できる、というシナリオです。
なぜ今「循環」が必要なのか。人口減少下での成長には、人の「数」に依存しなくても付加価値を高めていく考え方が求められるからだ。
今こそ「循環」が必要な理由
売上は、次のような式で表現されます。
売上高 = 価格 × 数量
数量 = 人数 × 頻度
売上高をあげて、経済的なインパクトを創出するには、「頻度」を高めて数量を伸ばすこと、もう1つは、「価格」を上げることがポイントになります。
これらの「頻度」と「価格」は2つを独立系でとらえるのではなく、1つとして捉えていくことで、突破口を見出すことが可能になります。
それが、「循環」という視点です。
循環 = 回転 × 蓄積
- 回転とは、取引(活動)の頻度を増やし「数量」を増やすことです。
- 蓄積とは、取引を通じて得られた情報や知見をもとに、製品やサービスの「質」を高め、価格を上げることです。
継続的にサービスを提供するリカーリングモデルなどが有名でしょう。この「循環」の視点でリソースを見た時に、あまりに資源がその場で停滞していることが散見されます。
取引を繰り返すたびに顧客や製品に関連したデータを取得できるようになると、さらに付加価値を高められる可能性がある。
回転と蓄積で価値を生み出す
回転を繰り返すたびに蓄積され、らせんを描くように価値が高まっていく。
こちらの投稿「【なぜあのベンチャーは成功したか?】ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則|ジム・コリンズ,土方奈美」のはずみ車のモデルもぜひご一緒にご覧ください。
4つの循環そのポイントとは!?
「循環」させる対象は、経済活動を構成する「ヒト」「モノ」「データ」「カネ」の4つの資源(リソース)だ。
循環させるべき「4つのリソース」
「ヒトの循環」は、就労の機会を増やし1人あたりのスキルや経験を高めるとともに、相互に交わり知見を深めることで、社会全体の付加価値向上につなげていくという考え方です。社内単位でも循環の機会は重要ですし、副業や兼業などで、従業員を外と積極的に交流の機会を生む考え方も重要です。
こちらの投稿「【越境人材は、2度死ぬから、生きる!?】越境学習入門|石山恒貴,伊達洋駆」「【経産省も注目する人材開発法とは!?】「越境企業」のはじめ方|瀬戸口航」もぜひご覧ください。
「モノの循環」は、1投入資源あたりの価値を高める考え方です。時間軸・空間軸の2つの循環を捉えてみましょう。時間軸とは、「リペア・リユース・アップサイクル」により製品を長い時間の中で繰り返し使っていく循環のことです。空間軸とは、産業集積地域などの特定の空間に資源を集中させて、企業同士が連携して有効活用するような考え方のことです。
こちらの投稿「【2050年循環型の未来へ!】サーキュラーエコノミー実践|安居昭博」もぜひご覧ください。
「データの循環」は、データを1回の処理で利用するだけにとどめず、顧客をはじめ「需要側」のデータを起点にして、他のデータと結びつけて繰り返し活用することで、データの持つ価値を増幅させるという考え方です。
「カネの循環」は、社会の中でカネの取引の頻度を増やしてその量を増加させ(回転)、次の新しい価値を生む投資に活用すること(蓄積)です。
現在の日本では、大量のカネが、成長性が高いはずの民間部門ではなく、安全だが成長性が相対的に低い政府部門に流れている。新たなカネの循環を創出するためには、家計や企業のリスク回避傾向を緩和して、民間部門を中心に投資するメリットを実感できる魅力的な環境づくりが必要だ。
循環させるべき「4つのリソース」
「循環」のその先の機会点とは!?
「循環」を捉えながら、外部の機会を上手にとらえていきましょう。
1:グローバル成長との連動
1 – 海外のカネやヒトの取り込み
2 – インバウンドのアウトバウンド化
3 – 課題先進国のソリューション輸出機会
2:リアル空間の活用・再発見
1 – 世界有数の海洋資源の開拓(ブルーエコノミー)
2 – 国土面積の約 3分の 2を占める森林の活用
3 – 広がる宇宙空間に関連する多様なビジネス展開機会
3:仮想空間の拡大
1 – 新しい経済活動の広がり
2 – 新しいコミュニティーの広がり
3 – 新しい労働の可能性の広がり機会
4:時間の蓄積が生み出す資産
1 – 日本各地特有の「宝」 ×他ジャンルのアイデア
2 – 健康寿命 ×グローバル研究開発
3 – 熟練技能者の知見・経験 ×テクノロジー
現在の日本経済は人口減少を背景とした将来不安により長期停滞に苦しんでいるが、これは新たな成長モデルをつくり上げていくための「得がたい経験」であり、むしろ圧倒的トップランナーとして世界に先駆けた経験をしているアドバンテージがあると捉えられるのではないだろうか。
「拡大の世紀」と「縮小の世紀」のはざまで
まとめ
- 「循環」が必要な理由とは!?――人口に依存しない成長機会を見出すためです。
- 4つの循環そのポイントとは!?――回転と蓄積を分けずに一体的に向上していくことです。
- 「循環」のその先の機会点とは!?――4つの視点で外部環境を見てみましょう。