【積読から読書体験を考えてみよう!】積読こそが完全な読書術である|永田希

積読こそが完全な読書術である
  • 本を読もう!と思って買っても、結局、積んだままの積読になっていることありませんか?
  • 実は、積読こそ、「完全な」読書術かもしれません。
  • なぜなら、情報のカオスから選び取り、あなたの手元に書物があるという事実こそがまず重要だからです。
  • 本書は、現代の情報環境を俯瞰しつつも、読書の完全性を紐解き、最終的には積読とは何かを見出します。
  • 本書を通じて、本とは何か、あるいはその本とどう向き合っていくべきかを考えるヒントが得られます。

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永田希
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そもそも、完全な読書は可能か?

一般に読書は個人的なことでしかないとか、書き手と読者との対話だとか言われますが、実際に生じつのは書き手の言葉を読者が取り逃し、読者が一体化することの出来ない書き手が書物の向こうに現れ、決して書き手と読者とが同一化できないという体験です。

第三章 読書術は積読術でもある

完全に作者の意をくんだ読書とする完全な読書は、そもそも不可能なものです。読み飛ばしもするし、読み違いもするし、しっかし1文字1文字精読したところで、それは必ず起こりうるものです。そもそも、本は全部読まなくてもいいのです。本と向き合ってできること、できないことを見極めることから、一度、読書体験について考えていく必要があります。

バイヤールは、完全な読書を諦めることを勧める一方で、「その本がどのような位置づけをされているのか」というマクロ的な視点を導入するように提案しています。

第二章 積読こそが読書である

バイヤールとは、『読んでいない本について堂々と語る方法』の著者です。完全な読書は幻想なので、それを求めるのではなく、むしろその本が、全体の中でどういう位置づけにあるのかに注意を払うべきだと言っています。つまり、本と自分の関係に閉じるのではなく、本と本の関係を見出しひらいていこう、というのです。

ピエール・バイヤール
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そもそも、本は読めないものだ、というスタンスを持つことで、すこし積読に対するイメージが異なってきます。さらに、著者は、本の機能について深く触れていきます。

本は、時間の貯蓄。

そもそも、本の起源を考えると、読んで親しむものというよりも、情報を蓄積しておくべきものという機能に重きを置かれていました。それが、商業用の本が増える中で、本の意味合いが変わっていったのですが、それでも現代でもなお、本は時間を蓄積するという機能を失ってはいません。

ある本を積読するとき、その本はまたいつか誰かに読まれることを待ち受ける状態になります。本を積むということは、この、いつかの、誰かの読書の時間を「貯蓄」することでもあるのです。

第一章 なぜ積読が必要なのか

著者は、この蓄積のアナロジーとして、資金の蓄積に光を当てます。ここが非常に興味深い。お金もすでに情報でしかないので、極めて相似的な関係にあるといえます。

世界で同時に進行している積読環境の爆発的増大を、世界金融市場の拡大にたとえるならば、自律的な積読環境を構築するということは、金融市場の中に自分だけのポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)を形成するようなものなのです。

第一章 なぜ積読が必要なのか

投資の鉄則は、「長期・積立・分散」です。時にポートフォリオをメンテナンスして、育てていくのが成功法。実は、この考え方が積読にも適応できるのです。

積読こそ、完全な読書術である!?

それはすべてこの「他律的な積読環境のなかに、自律的な積読環境を作る」ためのものです。

第一章 なぜ積読が必要なのか

情報が爆発的に増える中で、本の数も増えています。私たちは、積極的に選別をしなくては、その情報の濁流にさらされてそして、流されてしまう可能性があります。人なのか、情報なのか、主役がわからなくなっているようにも感じることさえあるでしょう。流されてしまっては、もう考えることはできず、ひたすら消費だけをするようになってしまいます。これを著者は、ファスト思考になぞらえます。

  • ファスト思考(システム1):直感や経験に基づいて、日常生活で大半の判断を下しています。例えば物の距離感や音の方角の感知など、自動車の運転をする際に働く。
  • スロー思考(システム2):発動には集中力が必要とされる。例えば、たくさんの文字の中から必要な情報だけを抜き出す、聞こえてきた言葉が何語かを聞き分ける、といった働き。
ダニエル カーネマン,村井 章子
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情報の濁流に飲み込まれないために、自分だけの情報の生態系を作り、スロー思考を守るのです。そのために、積読が機能するというのが本書の主張です。積読は、新陳代謝します。読まれようが読まれなかろうが、少しずつ自分の判断で、選別をしながら、濁流の中から、自分だけの本棚を更新し続ける行為、こそが、完全な読書体験なのです。そして、この自律的につくられた「小さなカオス」の中で、読む体験を通じて、自分なりのものの見方や考え方、あるいは情報の取捨選択を育てていくことを目指していくのです。

本との向き合い方については、こちらの投稿「【本は風のように読め!?】乱読のセレンディピティ|外山滋比古」もおすすめです!

まとめ

  • そもそも、完全な読書は可能か?――完全な読書は不可能です。本と本の関係性に焦点を当てましょう。
  • 本は、時間の貯蓄。――本は時間を保存しておく機能も持つのです。本は本として完全な状態なのです。
  • 積読こそ、完全な読書術である!?――情報の濁流の中から、自分だけの自律的な本棚を構築してみましょう。

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