【ブランドを経営に活かすには!?】ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと|小山田育,渡邊デルーカ瞳

ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと
  • ブランディングやこれに基づくデザイン活動は、商品やサービスを美しくすること!?って思っていませんか?
  • 実は、ブランディングを真剣に考えることは、経営を考えることなのです。
  • なぜなら、企業や商品・サービスの強みを徹底的に掘り下げて、人(従業員含む)に伝える活動全体がブランディングだからなのです。
  • 本書では、ニューヨークで活躍するアートディレクターがブランディングのあり方を伝え、その取り組み方の詳細を語ってくれます。
  • 本書を読み終えると、ブランドやブランディング、あるいはデザインといった輸入された言葉の本当の意味を理解しながら、自社や自分の関わる企業のブランディング活動に、良い角度からフィードバックを得られるでしょう。

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ブランディングは、経営戦略!?

私たちが目指す成功とは、ビジョンや強みを活かし、ビジネスに関わる人々がともにやりがいを感じながら収益を上げることです。そしてその結果消費者や人々の暮らしも豊かになることです。夢のような話に聞こえるからもしれません。しかし、この成功を可能にする経営戦略があります。それはブランディングです。

はじめに

「デザイン」「ブランド」「ブランディング」など、カタカナでそのまま語られる外来語は、どうもその意味の本来的な部分を欠落してしまっているようです。もともと、「デザイン」は明治期に日本に紹介された時、意匠や設計などと訳されていたようですが、その後、戦後にもう一度輸入されたタイミングで、表面的な見栄えをよくする「デザイン」として定着してしまいました。このことから、どうしてもカタカナで語られる「デザイン」は、本質的な事柄が不足してしまっています。

英語のデザインの本来的な意味は、デザイン思考という言葉で捕らえられるように、「問題を発見しその解決法を提示するまでに至る活動」のことです。

これは過去の投稿「【デザイン思考とはなにか?】HELLO,DESIGN|石川俊祐」でも取り上げられていました。

また、これと同じようなことがブランディングにも言えるようです。ブランドとか、ブランディングとか日本語で語られる時、どうしてもその表層的な意味合い、例えば、グッチとかプラダとか超高級ハイブランドに対してイメージが膨らんでしまいます。でも、本来的な意味は、「保証」であり、「約束」であるのです。

なぜなら、もともとは、ブランドは「バーンド(焼印)」からきていて、畜牛などの持ち主保証のための焼印が由来なのです。

ですから、ブランドを考えるということは、そのビジネス全体を、深く考えることであるのです。

著者は、このブランドとその活動であるブランディングの本質の意味をこのように説きます。

ブランディングとは、
・戦略的に企業、商品やサービスの強みを引き出し
・環境や時代、消費者のニーズを踏まえながら
・消費者や社会に伝わるようなかたちで表現し
・企業のブランド戦略を向上させる
経営戦略です。

はじめに

明快に、ブランディングの活動体が、経営戦略に直結するのである!と言い切っています。そして、注目するべきは、ブランディングのスタート地点です。ここが一番大切。まずは、「戦略的に企業、商品やサービスの強みを引き出す」ということ。実は、本書でも中盤からブランディングのステップを説いているのですが、この現状認識のパートに多くの紙面を割いています。ここが欠落しては、ブランドというのは文字通り台無しになってしまうということです。

また、同時に気になる言葉として、戦略的があります。これは、私なりの考え方ですが、その「対象となる企業や商品・サービスが、もっとも顧客と価値を共有しあえる位置付け」というような意味合いで捉えられると思います。

日本でよくみられる(残念な)ブランディング

日本でよくみられる「ブランディング」は、①ブランド戦略を立てても、デザインからの視点が欠如しているため、効果的な最終アウトプットができていない、もしくは②ブランド戦略がなく、土台のない状態でデザインだけするという表面的な解決策なので、経営戦略として機能していない、というもの。ブランディングは、「戦略」と「アウトプット」の両方が、クリエイティブで串刺しされてはじめて成り立つものです。

はじめに

往々にして、こういう状態に陥ってしまうことがあるのではないでしょうか。

その理由は、デザイナーの立ち位置の問題だと著者は語ります。

以下に引用するデザイン会社と広告代理店のポジションの文章が的確です。

一般的なデザイン事務所では「見た目の良いものをつくること」を求められ、それより深い、状況分析して問題解決していく部分は広告代理店やブランドコンサルタントなどの仕事とみられているようでした。

「デザインする」とは見た目の良いものをつくること?

たしかに、日本では、広告代理店が得意先のブランド課題を一緒になって発掘し、ブランド戦略を立案し、そして実行に移す「川上的」仕事を担っているようです。私も実際、10年以上広告会社のビジネスに携わってきて、広告会社と一言でいってもその内容は多岐にわたり、自分でもなかなか自分の仕事の範疇をうまくしょうかいできないことが多々あると思っています。

広告会社が得意先と決定したデザインを起こす仕事を担うのが、デザイン会社という意味合いになっていて、産業が作られている日本では、デザイン会社の位置付けが欧米などのそれとことなります。同時にデザイナーの地位というか、役割も異なるので、ブランド戦略を立案するような大事な場所に、デザイナー不在でものごとの議論が進んでしまったりします。

個性豊かな中小企業の時代、ブランディングはもっと大切なものに!

その会社らしい個性的なビジネスを実現させるには、大企業よりも中小企業の方が有利だと言えます。

個性豊かな中小企業の時代

いままでは、標準的で似通ったビジネスが多かった時代から、成熟する生活者の多様化するニーズに対応する商品やサービスを独自の強みを活かして提供するスモールビジネスの時代へ移行しているといいます。

そんなときにこそ大切なのが「ブランディング」の発想です。顧客のニーズと自社の強みを小さな、でも、専門性が極めて高いチームで見極めて、ブランドを作り、そして一貫性のある企業活動に展開していくこと、これこそが、経営であると言っても過言ではないでしょう。

やはりチームが大切です。

社内で(もちろん外部も含んでもOK)密なコミュニケーションをとりながら、ブランドのビジョンを語り、そして活動にしていくことがしやすいのは、大企業ではなく中小企業なのかもしれません。

この投稿を書いていて、広告代理店のマーケティング担当として10年以上、多くの大企業~中堅企業のみなさんとお仕事をさせていただいた経験と、中小企業診断士としてより幅広い視点で経営者の方と企業やお店の全容をつくり上げていくことに、参加させていただいた経験を、どうミックスしていくのが良いか、という問いを改めて持ちました。

もしかしたらこれをつなぐのが「デザイン」なのかもしれないとも思っています。著者は、「デザイン」(ブランドを表現すること)を2つの概念で捉えています。

1つめはバーバル(Verbal:言語)。言葉を使ってブランドのブランドの本質を表現していくことで、ブランド名称が代表的です。2つめは、ビジュアル(Visual:視覚)。目に見えるものでブランドの本質を表現していくことで、ブランドロゴが代表的です。

世界観を直感的に感じてもらうために

これ以外にも、「ブランディング」活動は受け手(顧客)の五感を通じて体験できる全てを取り扱います。経営診断や相談のときに、これらのアウトプットまで一貫してできたら、どれだけいいことか思い知ることが多いです。

一緒にお仕事をさせて頂く経営者の方や、ディレクターの方は、非常に幅広い領域を(それも本能的に)カバーして、考えを持つ方が多いです。私も、領域を一歩広げて、ブランドづくりとその活動づくりに貢献できるように、精進したいものだと、本書を通じて考えました。

まとめ

  • ブランディングは、経営戦略!?――ブランディングの本質的な部分を見つめましょう。強みを発見し、これを直感的に価値を顧客と共有できる素地を創る活動という感覚で、ブランディングを捉えましょう。
  • 日本でよくみられる(残念な)ブランディング――ブランド戦略にデザイン視点が不在、そもそもブランド戦略がない状態では、台無しです。
  • 個性豊かな中小企業の時代、ブランディングはもっと大切なものに!――個性ある小さなブランドにも可能性が広がる世の中になりました。

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