- 自社の売上・利益を増やしたい、広告宣伝を減らしながらも「ファン」を獲得したい、優秀な人材が入社し優秀な従業員に末永く働いてほしい。こんなふうに思わない経営者は少ないでしょう。
- 実は、「ブランディング」が上記のような経営課題を叶えてくれるかもしれません。もっというと、中小企業ほど、「ブランディング」を実施する効果は大きいです。
- なぜなら、「ブランド」の根源となる、POD(Point Of Difference)を設定しやすく、スピーディに組織変革を行いやすいのが中小企業だからです。
- 本書では、一貫したブランディング戦略でコンサルティングを実施する株式会社グロウ・リパブリックの宮村岳志さんが、いま「ブランディング」が経営に求められる必要性を説き、その方法論を説明してくれます。
- 本書を読み終えると、いかに経営にとって「ブランディング」が必要なものかを理性的に理解でき、実施に向けたモチベーションが高まるでしょう。
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デザインに重きを置くと、経営が上向く!
2018年に発表された『「デザイン経営」宣言』という報告書があるのですが、この報告書では、企業がデザインに投資した金額に対して、「営業利益」が4倍、「売上」は20倍になり、米国の株式主要500銘柄の中で「デザインを重視する企業の株価」は500銘柄全体と比べて2.1倍に成長しているという調査が初回されています。
はじめに (「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書/経済産業省・特許庁)
デザインの効果はなかなか数字面でとらえにくいものですが、なんと経済産業省・特許庁がこのような報告書の中で、真剣に取りまとめているのが驚きでした。
経営者もデザインについて最低限の知識と実践力を落ちあわせていたい時代と言えるでしょう。
面白い報告書でしたので、こちらにもリンクを貼っておきます。ちなみに、本研究会の参加者はこのような面々で構成されていました。
梅澤 高明 A.T. カーニー 日本法人会長
産業競争力とデザインを考える研究会報告書『「デザイン経営」宣言』について
喜多 俊之 株式会社喜多俊之デザイン研究所 所長
小林 誠 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
知的財産グループ シニアヴァイスプレジデント
田川 欣哉 株式会社 Takram 代表取締役
英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート客員教授
竹本 一志 サントリーホールディングス株式会社 知的財産部長
田中 一雄 株式会社 GK デザイン機構 代表取締役社長
永井 一史 株式会社 HAKUHODO DESIGN
代表取締役社長 クリエイティブディレクター
長谷川 豊 ソニー株式会社
クリエイティブセンター センター長
林 千晶 株式会社ロフトワーク 代表取締役
前田 育男 マツダ株式会社
常務執行役員 デザイン・ブランドスタイル担当
[座長]鷲田 祐一 一橋大学大学院 商学研究科 教授
コンサルティング会社、プロダクトデザイナー、メーカーなどなどの代表者が構成員となっています。しかし、Takramさんやロフトワークさんは、国の研究会にもよく参加されている印象です。よく拝見します。
経済産業省だけではなく、特許庁も連盟での報告となっているのもポイントでしょう。全体としてやや伸び悩む特許・意匠出願件数を受けて、企業の利活用を訴えたいという側面もあるのでしょう。
このように、著者は、まず理解のしやすいところでの「デザイン」について触れますが、それは「ブランディング」の一部であり、もっと重要なことをブランディングでは捉える必要があるといいます。
デザインのことだけではない!ブランディングの定義をきちんとおさえましょう!
私たちは、そんな企業の中にある、「柱にしたいもの」「柱になるべきもの」を、誰もが納得するブランドとして確立されるための施策を”ブランディング”と呼んでいます。
01 中小企業にいま最も必要な施策はブランディングである
ブランドとは柱であるというのが著者の主張です。この柱があれば、頑丈なブランドが構築できますし、この柱を軸にして、ブランディング(ブランドを作り上げる施策や活動のこと)も一貫して実施できます。そして、この柱はときに、強みだったり、工夫だったり、個性などと捉えられるものです。
ブランディングが求められる時代になった、背景にあるのが、
端的に言えば、「規模の経済」から、「品質の経済」への移行です。
02 大きな会社だけが主役の時代は終わった
安くて高品質なのはあたりまえで、さらに、その先の「違い・差異」を生活者は意識する時代になりました。
大量生産・大量消費・安くて、高品質・均一/画一・情報重視だった時代から、少量生産/カスタマイズ・高いけど、こだわり・個性/ダイバーシティ・体験重視の時代へ移行しています。
こうした時代の要請にあたって、全ての人のニーズをくまなくフォローすることは大企業だけでは不可能です。「トライブ」というターゲティング概念の言葉が象徴するように、ニーズは生活者の数だけ細分化されています。そんなとき、大企業だけではなく、中小企業がその「らしさ」をもってニッチな領域で存在感を高められる環境であるともいえます。
「細分化されつつあるニーズ」。ここに中小企業の活路があります。
中小企業のブランディング、「POD」からはじめましょう!
1つはPOP(Points of Parity;等価性)、もう1つはPOD(Points of Difference)です。前者のPOPは競合他社との差を埋めて「追いつく」差別化、後者のPODは競合他社にないものを伸ばし「追い越す」差別化と言えます。
04 中小企業の3つの課題をブランディングが解決する
品質の時代になって、コモディティ化(同質化)が進む中で、総合力で挑むと、資本が潤沢な大企業にさらに打ちのめされやすくなっています。自ら、つまらない方に行ってはいけません。大切なことは、自社ならではの強み・一点突破できうる要素にフォーカスすることです。それ以外のことを足してしまってはもったいない!
足し算は体力のある大企業に任せておいて、わたしたちは、引き算の思想でいきましょう。
「ブランディング」の9割は、私は、このPointsの発見であると思います。これが正しく抽出されて、その上でチームで共有されている状態を創ることが最も大切で、反対の言い方をすれば、これさえ記述できればあとはオートマチックに、坂を石がころころと転がるようにできてしまうものです。
ですが、情報化社会を経て、施策の数・バリエーションが多岐にわたり、そして簡単に展開できるようなこの時代だからこそ、このPointsの発見が蔑ろにされてしまっていると私も思います。
たとえば、自社や自店のいいところが客観視されていないのに、SNSでバラバラの情報を発信していたり、いろいろなクリエイティブを添加して図らずもバラバラの印象をお客様に与えてしまっていたり・・。これではもったいない!
まず、大切なのは、情報の棚卸しですね。
本書では、上記のようなブランディング×経営のポイントだけではなく、その展開方法も具体的に記述されています。おすすめです!是非、拝読ください。
まとめ
- デザインに重きを置くと、経営が上向く!――デザインへの意識が高い企業ほど、好業績です。
- デザインのことだけではない!ブランディングの定義をきちんとおさえましょう!――「規模の経済」から「品質の経済」へ移行する中で、ニッチニーズに対応することに中小企業の勝機が見えてきました。この機会に、本質的にブランドを考える機会を持ちましょう。
- 中小企業のブランディング、「POD」からはじめましょう!――総合力は大企業に任せて、中小企業ならではの視点で一点突破を目指しましょう。
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