最後の資本主義|ロバート・B・ライシュ

最後の資本主義|ロバート・B・ライシュ

貧富の差を拡大させ、人類が富を分け合える望ましい社会の実現を拒むのは「自由市場」という機会的な仕組みのためです。大多数のために機能する政府にするためには、”誰のための”政府か?ということが最も重要な問いです。今こそ、相対的な貧困層(小規模事業者やマイノリティ等)が結束し「拮抗力」として、将来の社会に対して影響力を持つべき時です。

ロバート・B・ライシュ
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社会の真の論点とは!?

問題は政府の規模ではなく、誰のための政府かということなのだ。

はじめに

政治的右派は自由市場の力を強めて政府の力を弱めるべき、つまり、一般的には税率の引き下げと公共支出の削減だと主張してきました。これと対をなすのが、政治的左派の主張です。これらの論点は、「自由主義」vs「政府」という対立構造で成立しています。しかし、著者はこれらの二項対立は、”見せかけ”であると言います。この見せかけの議論に労力を割いているからこそ、資本主義を変えられないのだと・・。

本来的な政府が本来担っている、「市場を設計し、構築し、機能させる」機能にフォーカスすることです。そして、それは”誰のためなのか”というのがキークエスチョンです。

「自由市場」という言葉のせいで、あたかも中立的な力によって不公平な分配さえも、自然で必然的な結果として無意識のうちに受け入れられてしまう怖さも指摘されます。そして、市場を通じて経済的利益を分配するシステムは、金額という「値」を決めているのに過ぎないけれど、それを受け取る本人の「価値」に比例しているという先入観さえ生んでいるのです。

「相対的な貧困層」が影響力を取り戻すことに、未来がある!

大きな政府か小さな政府かという選択肢ではなく、少数の富裕層をさらに豊かにするための要求に応える政府か、それとも、相対的に貧困となり、経済的に不安定な立場に立たされている大多数の要求に応える政府かという選択肢だ。そうなれば、私達は政治的右派と左派を大いに消耗させてきたイデオロギー対決を乗り越え、米国の政治経済システムに拮抗力を取り戻すという、私たちの時代の主要課題に取り掛かることができる。

第19章 拮抗力を取り戻せ

米国の民主主義が他の国の失敗をよそに成功したのは、米国が数多くの利益集団(組合とか、商工会議所とか)を内包しており、各利益集団がそれぞれの政治的少数派だったからです。

そして、それぞれの集団は目的を成し遂げるために他と連携する必要があるので、政治システム全体の柔軟性や反応性が高くなり、多数派による支配でも、少数派による支配でもなく、「複数の少数派の中の多数派」による支配となるのです。

こうした新たな影響力を持つ中枢が「拮抗力」を持ってこそ、民主主義は守られるというのです。

「拮抗勢力」を作って、社会を正しい方向へ、変えよう!

拮抗勢力が存在すれば、政治資金に関する法整備が進み、富めるものが政治システムの中で優位に立つ状況を変えることができます。あるいは、ベーシックインカムなどの新しい仕組みを導入することもできるでしょう。

私たちは自分で制御できない機械的な「市場原理」の犠牲になる必要は全くありません。

新しいルールを作ることが必要です。そしてこのルールは、誰が・どのような目的で、作り上げるのかということに執着することです。一部の大企業やウォール街の極めて裕福な個人資産家ではなく、相対的に貧困となっている圧倒的大多数のための仕組みの整備が必要なのです。

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岸田内閣が「新しい資本主義」を掲げました。「分配なくして次の成長なし」をスローガンに、今後も政策を進めていくとのことです。本書は、アメリカの事例が中心ですが、政府と市場の関係を明快に説き、資本主義の問題点を鋭く指摘している良書です。今後、以下にしたら新たな資本主義を目指すことができるのだろうか?という点にもひとつの答えを提示しており、論点を提供しています。今だからこそ社会を考えるために読んでおきたい1冊です。

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