- マーケティングで大切なのが、顧客のナーチャリング。どうやって設計すれば!?
- 実は、行動経済学のナッジを用いれば、有効かも!
- なぜなら、ナッジは、意思決定のボトルネックを見つけ、意思決定の仕組み化へと導くからです。
- 本書は、行動経済学の基本を見ながら、ナーチャリングモデル設計のヒントを説きます。
- 本書を通じて、デジタル時代のマーケティング施策立案の顧客視点でのフィードバックを得られるでしょう。
前回の投稿「【正しいナッジの見つけ方とは!?】行動経済学の使い方|大竹文雄」に続き、今回も本書をご紹介させていただきたいと思います。今回は、人の行動変容を促す「ナッジ」を上手に活用して、ナーチャリングモデル設計にどうしたら役立てられるかを見ていきましょう。
ナッジとは!?そして、ナーチャリングモデルへの応用とは!?
行動経済学的手段を用いて、選択の自由を確保しながら、金銭的なインセンティブを用いないで、行動変容を引き起こすことがナッジである。
1 ナッジを作る
ナッジは、命令ではありません。例えば、カフェテリアで果物を目の高さにおいて、果物の摂取を促進することはナッジですが、健康促進のためにジャンクフードをカフェテリアに置かないことはナッジではありません。人の行動の制限をするのではなく、人が持つ性分に訴えかけるアプローチをとります。
行動経済学を知れば、人の行動変容を支援することが可能です。大切なのは、「何が」その人の行動変容・意思決定のボトルネックになっているかの解像度を高めることです。
デジタルマーケティング時代において、解像度高く、顧客の意思決定において、さまざまな施策や情報を展開・提供することが可能になりました。ひとりひとりの顧客の意思決定をいかに支援するかという視点を忘れてはいけません。
ナッジを活用すれば、ナーチャリングモデル設計のヒントを得られます。例えば、次のような「老後貯蓄の意思決定に関わる」ボトルネックとナッジで、一目瞭然でしょう。
必要な意思決定 | ボトルネック | ナッジ |
老後貯蓄の重要性を理解する | 遠い将来の引退をイメージできない | 損失回避 (生活水準の下落を強調) |
老後貯蓄にいくら配分するか決定する | 複雑な計算ができない | 貯蓄額ガイドライン 計算アプリの導入 |
口座開設をする | 口座開設に手間がかかる | 手続きの簡略化 就職時に義務付け・自動開設 |
金融商品を決定する | 商品ラインナップが複雑で選べない | 投資ファンドの デフォルト化 |
金融商品を購入する | 購入を先延ばしにしてしまう | 自動引落システムの導入 |
運用状況をチェックする | チェックが面倒である | 自動的な通知システム 自動的再配分 |
大切なのは、顧客の意思決定に際して、どんなボトルネックがあり、どんなナッジが使えるのか?を決めるための、解像度だと思われます。リアルに顧客の意思決定の現場に立ち会うなどの、自らのマーケティング介入者の行動変容も必要かもしれません。
解像度については、こちらの投稿「【課題設定が命!?】解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法|馬場隆明」もたいへんおすすめです!ぜひご覧ください。

大切になるのは、ボトルネック!?
対策 | ボトルネック |
自制心を活性化するようなコミットメントメカニズムの提供、社会規範ナッジ | 本人が自分がしなければならないことを知っているのに達成できないのか? |
情報提供、デフォルト設定、社会規範メッセージ | 望ましい行動を知らないのでできないのか? |
コミットメントメカニズムの提供、デフォルトコミットメント | 自分自身でナッジを課するだけの意欲があるのか? |
損失回避・社会規範の利用 | 情報を正しく提供すればよいのか? |
シンプルに、何をすればわからないように、必要な情報だけに | 情報の負荷が多すぎるのか? |
競合的な行動を抑制するようなナッジ(社会規範、ルール化) | 引き起こしたい行動と競合的な行動が存在するのか? |
前回の投稿「【正しいナッジの見つけ方とは!?】行動経済学の使い方|大竹文雄」でも触れたボトルネックを参考にしてみましょう。
事前にボトルネックのタイプ分けをしておきながら、自動化・仕組み化を図り、マーケティング施策に応用していくことが望ましいでしょう。
計算能力が高くて情報を正しく用いて合理的意思決定ができる合理的経済人という人間観は、伝統的経済学のモデル上の設定である。そんな極端な人は現実にはほとんどいないが、そういう人間像をせっていしてもある程度世の中をうまく説明できる。しかし、個別の人間の行動を予測する上で有効な設定とは言えそうもない。
おわりに
社会は、マスだが、解像度をあげれば、ひとりひとりの人間の行動の集合ということです。
これからの時代は、マスではなく、インクルーシブ。ひとりひとりが意思決定を行って、自分自身の行動や考えを設定する世の中です。そんないまだからこそ、いかに働くか、いかに暮らすかについて、行動経済学的に新しい角度から考えてみることもポイントかも知れません。
行動経済学的、働き方改革アプローチとは!?
最後に、インクルーシブ時代に、いかに自由を掴むか、行動経済学的知見から、著者の見解を引用してみたいと思います。
行動経済学的に見ても、やはり「働く意義」をいかに感じる工夫をするかがポイントになっている点が、とても興味深いです。大竹文雄さんは、「意味のある仕事」と説きます。
同じ報酬なのに、作ったバイオニクルを目の前に並べるというだけでも仕事の意欲が増す。意味のある仕事ができたと認識できると意欲が増すということが、この研究の結果だ。このことは、私たちが仕事への意欲を高めるためのヒントを提供してくれる。
意味のある仕事
バイオニクルとは、レゴ®社が開発したブロックセットです。これをハーバード大学の学生に組み立ててもらう実験を行いました。2つのチームに分けられて、1つは作ったセットを目の前に並べられるチーム、もう1つは完成したらすぐにバラバラに崩されてしまうチーム。
結果は、前者のチームでは、同じ時間に10.6個を作り、後者は7.2個しか完成させることができなかったそうです。
大切なことは、
1)仕事そののもに意味があると実感できること。
2)仕事をしたことが実感できるということ。
だと、大竹文雄さんは、結びます。
まとめ
- ナッジとは!?そして、ナーチャリングモデルへの応用とは!?――行動経済学的アプローチから、マーケティング施策の有効性を高められます。
- 大切になるのは、ボトルネック!?――顧客の意思決定に関わる解像度を上げましょう。
- 行動経済学的、働き方改革アプローチとは!?――意味のある仕事を自ら創り出すことです。