忙しさによってもたらされる売上は、悪なのではないか!?『捨てないパン屋』田村陽至

『捨てないパン屋』田村陽至の書影と手描きアイキャッチ
  • 売上が伸びているのに、なぜか楽にならない。そんな矛盾を感じたことはありませんか?
  • 実は、「もっと頑張れば報われる」という思い込みこそが、私たちを疲弊させる罠なんです。
  • なぜなら、多忙と充実は全く別物だからです。
  • 本書は、年商2500万円を維持しながら労働時間を半減させた”捨てないパン屋”の実践記録です。
  • 本書を通じて、「手を抜く」ことの本当の意味と、持続可能な働き方の本質が見えてきます。
田村陽至
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田村陽至さんは1976年広島県生まれ、祖父の代から続くパン屋の3代目です。

大学では環境問題を学び、卒業後は北海道や沖縄で自然ガイドとして活動し、2年間のモンゴル滞在も経験しました。

2004年、家業のパン屋を継いだ田村さんは、当初40種類ものパンを製造し、1日15時間以上働く日々を送っていました。

お店は評判となり客で溢れていましたが、経営は常に火の車でした。

転機となったのは、モンゴル人の友人から「食べ物を捨てるのはおかしい」と指摘されたときのことです。

余裕のなかった田村さんは「仕方ないんだよ!」と言い返してしまい、そんな自分に嫌気がさしたといいます。

2012年、店を休業して妻と1年半ヨーロッパへ渡り、フランスとオーストリアのパン屋で働きました。

そこで目にしたのは、1日4〜5時間の労働でより美味しいパンを焼き、1個も廃棄しない店の姿でした。

帰国後、オーストリアで学んだ製法を実践し、現在は「ブーランジェリー・ドリアン」として、2015年秋からパン廃棄ゼロを継続しています。

多忙という名の消耗戦

お客が溢れていて、パンが売り切れていても『今月、お金が足りない……』ということになりました

売上至上主義の本質を突いています。

田村さんの店は「人気店」でした。

スタッフ8人が懸命に働き、3窯も4窯も焼き続け、活気に溢れていました。

でも実態は「余裕がない」状態だったんです。

スタッフにちゃんと給料を払いたい、だからもっと売らなければならない、そうしてどんどん量を増やしていく。

フルスロットルで走り続ける毎日は、まさに消耗戦でした。

お客さまは厳しいです。お客さまは誰一人として待ってはくれません。それは、毎日、真面目に、年中無休で、お店を開けていても同じです。意味がわかりますか?

旅しても、しなくても、お店の成長を感じられなくなったら、お客さまは去っていきます。

この指摘は鋭いですよね。

年中無休で頑張ることと、お客様に選ばれ続けることは別問題なんです。

むしろ、休みも取れない働き方は、店の成長を止めてしまう。

冷蔵庫を使わず、その日に仕込んだ生地を焼いていた当時は、まさにドタバタの連続でした。

「パンはもう膨らんでるぞ〜。窯を早く温めろ!!」「窯は温まったのにパン生地が膨らまない~」

こんな綱渡りの毎日では、本当においしいパンを焼くどころではありません。

そして何より、毎日大量のパンを捨てていたことが、田村さんを苦しめていました。

「これはきっと経験したことのある人にしかわからない感覚で、重りを飲みこんだような感じ。ぐーーーっと重い、罪悪感です」

多くの日本の職場が抱える問題がここに凝縮されています。

頑張れば頑張るほど、なぜか楽にならない。

売上は伸びているのに、利益は増えない。

忙しさに追われて、本質的な改善に手が回らない。

この悪循環こそが、「多忙という罠」なんです。

80点の革命

ヨーロッパで田村さんが学んだのは、「素敵な手抜き」でした。

手をかければかけるほど、良いパンが焼けると思っていた。

でもそれは違っていた。

手をかけ、時間をかけ、B級の材料を使うより、手を抜いて最高級の材料を使うほうが、つくるのもラクで値段も安く、そのうえ断然美味しいことに気づいたのです。

この発見は革命的です。

帰国後、田村さんは40種類あったパンをたった4種類に絞りました。

クリームやあんこなどの具材は一切使わず、500グラムか1キロの大きなパンだけを焼く。

使うのは国産有機栽培の小麦と自家製酵母、薪の石窯という昔ながらの製法です。

パンの値段が安くなります。人件費が減り、パンの中に入れる具材もないからです。原価が倍の小麦粉を使っても売値を安くできるのです。ここだけの話、グラム単価で見れば、スーパーで売っているバゲットと同じくらいです。

さらに、少ない種類のパンに気持ちを集中させてつくるので、パンの出来も良くなります。そもそも材料が良いと、勝手にうまいものができるのです。

加えて、働くのも楽です。かつては寝る間もなく働くこともあったけれど、今は朝4時〜12時の8時間労働です。

安くて、うまくて、働く人もニコニコ。売れないはずがありません。それに、しっかり儲かります。売上はスタッフが8人いたときと変わらず年間2500万円程度になり

この好循環を生み出す鍵が「良い材料を使って、80点を目指す」という考え方です。

B級の材料で100点を目指すには、膨大な手間と時間が必要になります。

でも、A級の材料を使えば、力を抜いても80点は取れるんです。

そして重要なのは、「毎日働いていれば、今日の80点は、去年の100点か120点のはず」という視点です。

完璧を追求して疲弊するのではなく、余裕を持って持続可能な品質を保つ。

この「80点でいい」という割り切りが、かえって高いクオリティを生み出すんです。

さらに田村さんは「緩衝力」という日本酒の概念を持ち込みます。

緩衝力とは、外部からのストレスに対する耐性のこと。

一人だと良い仕事をするけどいつもイライラしている人は「緩衝力が低い」。

逆に、いつもニコニコ周りと楽しく仕事する人は「高い緩衝力を持っている」。

この「緩衝力」ですが、昔から日本酒の味を評価する項目としてはあったのですが、醸造メーカーの間でさえもあまり理解されておらず、「これってなんだろうね?」と言われていたようです。

面白いのは、伝統的なつくり方ほど、この緩衝力が高い傾向にあるということです。

急がず、手を抜き、良い素材に任せる。

そうすることで、ストレスに強く、味わい深いものが生まれる。

これはパンだけでなく、働き方全般に言えることではないでしょうか。

現在、田村さんの店は定期購入のお客様が150人、レストランへの納品が中心です。

売れる分だけを焼くので、廃棄はゼロ。

しかも焼き上げたパンは腐りにくく日持ちするので、買った後も捨てられにくい。

80点を目指す「手抜き」が、あらゆる面で好循環を生み出しているんです。

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レトロ・イノベーションの可能性

田村さんが目指すのは「レトロ・イノベーション」です。

僕の大好きなフランスのパン屋「ポワラーヌ」は、何百年と変わらぬ薪でパンを焼く製法で、世界で一番と言われるパン屋になりました。

結局、美味しかったのです。

先代の店主はそれを「レトロ・イノベーション」と言いました。

古いやり方で革新するという意味です。

僕はこの考え方が好きなのです。

ここに、現代の働き方改革へのヒントがあります。

新しい技術や効率化ツールを導入するだけが革新ではない。

むしろ、古くから続いてきたやり方の中に、持続可能性の秘密が隠されているんです。

これは僕が考えた独創的な手法ではないのです。ヨーロッパのやり方を真似ただけなのです。

この謙虚さが重要なんです。

ゼロから新しいものを生み出そうとするのではなく、すでにうまくいっている方法を素直に学ぶ。

そして、自分の環境に合わせて応用する。

旅して真似すれば〝働き方改革〟は完了

このシンプルな提案は、多くの職場に当てはまるはずです。

自分たちで完璧な答えを見つけようとするから行き詰まる。

世界のどこかに、すでに答えはあるんです。

それを見つけ出し、謙虚に学び、自分たちの文脈で実践する。

パンを捨てるのって変だよな。

この働き方はおかしいよな。

と感じたことがこの本のはじまりでした。

だいたいの場合、みなさんが感じていることが正解なのです。だから自信を持って行動してみてほしいのです。

この言葉が示すのは、変化への第一歩は自分の違和感を信じることだということです。

「忙しいのが当たり前」「売上を伸ばすのが正義」という常識に疑問を持つこと。

そして、「変えられることを変える勇気」を持つこと。

田村さんの実践が教えてくれるのは、売上至上主義からの解放です。

年商2500万円を維持しながら、労働時間は半減し、廃棄はゼロ。

しかも、パンの質は向上し、価格は下がり、働く人は笑顔になっている。

これこそが、本当の意味での「成功」ではないでしょうか。

古いやり方に学び、80点で満足し、手を抜くことを恐れない。

その先に、持続可能で豊かな働き方が待っているんです。

これからの時代を反映する小さなでも、素敵なお店のお話はこちらの投稿「【小売の未来が、高崎にあった!?】おいしいものだけを売る-奇跡のスーパー「まるおか」の流儀|丸岡守」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 多忙という名の消耗戦――売上至上主義が生む悪循環は、頑張れば頑張るほど楽にならない構造を作り出します。年中無休で働いても、それが店の成長につながるとは限りません。田村さんが経験した「人気店なのに赤字」という矛盾は、多くの職場が抱える本質的な問題を浮き彫りにしています。
  • 80点の革命――良い材料を使って80点を目指すという考え方が、好循環を生み出します。完璧を追求して疲弊するのではなく、余裕を持って持続可能な品質を保つ。この「手を抜く」勇気が、結果的に高いクオリティと経営の安定をもたらすのです。
  • レトロ・イノベーションの可能性――古いやり方で革新するという発想は、現代の働き方改革への重要なヒントです。新しいものを追い求めるのではなく、すでにうまくいっている方法に謙虚に学び、自分たちの環境で実践する。その先に、持続可能で豊かな働き方が見えてきます。
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