- 本質を掴むために、必要なことは!?
- 実は、読解力かもしれません。
- なぜなら、それは、世界を知る術(すべ)だから。
- 本書は、読解力とはなにか、それを高めるとは何かを説く1冊です。
- 本書を通じて、ものごとの本質を掴むヒントを得ることができます。

読解力とは!?
山口拓朗さんは、「伝える力」「読み解く力」「書く力」の分野で多数の著作を持つ、言葉の専門家です。大学卒業後、編集記者としてキャリアをスタートされ、多くの取材・執筆・編集業務を経験されました。その過程で、情報の本質を見抜く「読解力」の重要性に着目されたそうです。
現在は、著述家・コミュニケーションコンサルタントとして、企業研修やセミナーでも活躍されており、これまでに累計30冊以上の書籍を出版されています。実践的かつわかりやすい解説には定評があり、ビジネスパーソンを中心に多くの読者に支持されています。
山口さんは、「情報があふれる現代において、何をどう読むかが知性を決める」と語ります。表面的な理解にとどまらず、1%の本質をすばやくつかむ力こそが、これからの時代を生き抜く武器になると提唱しているのです。
読解力とは、文章や発言の意味を理解し、その背景や意図を見抜く能力。
これが低いと、書く、話す、判断する、学習する、問題解決するなど、
あらゆるアウトプットに支障を来します。
そもそも、人が言葉を使うことのメリットを考えてみましょう。
言葉は、ただ情報を伝えるための記号ではありません。人が他者と協働し、複雑な世界を理解し、未来を構想するための「思考の道具」でもあります。言い換えれば、言葉を使いこなすということは、自分の考えを深め、他人の意図を汲み取り、社会の中で適切に行動するための“知的インフラ”を整えることなのです。
しかし、その言葉を受け取る側の「読解力」が低ければ、どんなに優れた表現も、真意を伝えられなくなってしまいます。相手の発言を表面的にしか捉えられず、必要以上に傷ついたり、誤解したり、あるいは学びのチャンスを逃してしまう――そんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
読解力とは、相手の言葉の裏にある「背景」や「文脈」、「意図」までも読み取る力です。それは、ただ“読む”のではなく、“深く理解する”という行為であり、「なぜ、こう書かれているのか」「この発言の本当の狙いは何か」といった一段深い問いを自らに投げかける姿勢でもあります。
一方、読解力のある人は、文章や会話から正確に内容を理解し、物事の本質を瞬時に捉えることができます。対人関係や会議、商談でも高い成果を得られます。
読解力を高めるためには、読解力の高い人の考え方やノウハウをインストールすることがキーとなります。
著者・山口さんは、読解力は、3つで構成されるといいます。
「本質読解」「表層読解」「深層読解」です。
まず「表層読解」とは、文字通り文章に書かれていることを正確に読み取る力です。誰が、何を、どうしたのか──事実関係や記述の内容を取り違えずに把握する、読解の土台とも言える力です。これは学校教育でよく問われる「読解力テスト」が対象とする領域で、最低限の情報処理能力とも言えるでしょう。
読解力において重要なのは、言葉をそのまま正しく受け取れるかどうか、ということにかかっています。そのためには、語彙も大切でしょうし、そのため、言葉に数多く触れていることも欠かせないのです。
次に「本質読解」。これは、文章や発言の中心にある「言いたいこと=主旨」を見抜く力です。著者がなぜこの話を持ち出したのか、どんな問題意識を抱えているのか、それによって何を伝えようとしているのか。文の背後にある論理や構造を読み解く力です。これは、思考力や論理力とも深く関わっており、「結局、何が重要なのか?」を瞬時に掴む能力に直結します。
本質とは「物事の『芯』や『核』とも言える部分で、そのものがどういうものかを根底から説明する要素」のことです。
そして最も奥深いのが「深層読解」です。これは、言葉に直接書かれていない“行間”を読み、発信者の価値観、感情、さらには無意識的な願望や立場までも理解しようとする力です。
たとえば、クレームのメールに込められた顧客の本当の不満は何か。あるいは、上司のちょっとした発言の裏にある期待や不安はどこにあるのか。この読解力があれば、相手との関係性に深みが生まれ、信頼を築くコミュニケーションが可能になります。
このように、読解力とは単なるスキルではなく、相手と自分の「あいだ」を深め、あらゆる知的活動の質を底上げする“最強の知性”なのだと、山口さんは説きます。
5つのスタンスを大切に!?
読解力を高めていく5つの基本姿勢は以下のとおりです。
1)話の流れと論理を整理する。
2)質問を投げかける。
3)実際に体験する。
4)意見を交わす。
5)アップデートし続ける。
これら5つの基本姿勢は、単なるテクニックではなく、読解力を「知性」として育てるための土壌づくりとも言えるでしょう。それぞれの姿勢を少し掘り下げてみます。
まず、1)話の流れと論理を整理すること。
これは文章や発言を受け取ったときに、ただ感覚で理解するのではなく、「因果関係」「前提と結論」「構造」などを意識的にたどることです。例えば、ある主張がなされたとき、「なぜそう言えるのか?」「前提は妥当か?」「反証は存在するか?」といった視点を持つことで、情報を鵜呑みにせず、自分の頭で再構築する習慣がついていきます。
次に、2)質問を投げかける。
読解とは受動的な行為ではなく、むしろ能動的に問いを立てることによって深まります。「著者はなぜこの話をここに置いたのだろう?」「この人の前提は何か?」「もし逆だったらどうなる?」など、自問することによって、情報の輪郭が立ち上がってきます。
3)実際に体験することも、読解力を支える重要な営みです。
頭で理解したつもりでも、体験を伴わなければ「自分ごと」にはなりません。たとえば、ビジネス書で交渉術を読んだら、実際に使ってみる。社会問題についての本を読んだら、現地の様子を見に行く、当事者の声を聞いてみる。そういった「体験との照合」が、理解を一段深いものにしてくれるのです。
4)意見を交わすは、他者の視点を取り入れ、視野を広げるためのプロセスです。
一人で読んでいると見えない「盲点」も、他者の解釈に触れることで発見されます。「そんな見方があったのか!」という気づきは、読解の幅を広げ、柔軟な思考の礎になります。
最後に、5)アップデートし続ける。
読解力は一度身につけたら終わりではありません。時代背景や価値観、情報環境は常に変化しており、自分の読み方や前提も古びていきます。「これは本当に今の社会でも通用する考えか?」「私はなぜこう考えるようになったのか?」と自らを問い直す姿勢が、読解力を“知性”として磨き続ける鍵となります。
事実、多くの情報は有機的かつ流動的です。
「理解したつもりの壁」に阻まれて、そこから出られないことも、読解力を阻害します。
ものごとの定義や、当たり前とは揺らぐものであるという前提に立ち、柔軟に解釈の波を乗りこなしていくスタンスが重要なのです。
その点において、上記の2)質問を投げかける。という姿勢はとくに際立つものとして理解できるかもしれません。
それは、つまり「問い」を持ち続けるということだからです。
「問い」を持ち続けるということは、常に自分の思考を開いたままにしておく、ということでもあります。
問いとは、答えをただ探すためのものではなく、物事の本質に近づこうとする“姿勢”そのものです。そしてその問いがある限り、私たちは「わかったつもり」から抜け出し、より深く、より多面的に世界を見つめることができます。
たとえば、「なぜこの人はこう書いたのか?」という問いは、単なる読解ではなく、その背後にある価値観や文脈を探る行為になります。また、「自分ならどう考えるか?」という問いは、読んだ内容を自己の内面に引き寄せ、自分の立場や考え方を更新する契機になります。
このように、読解力とは他者を理解する力であると同時に、自己を更新する力でもあります。

問いを持ち続けることとは!?
読解力を高めるうえで、「問いを持ち続けること」の重要性について触れてきましたが、その第一歩として非常に有効なのが、基本に立ち返ること──つまり【5W3H】の問いを使いこなすことです。
【5W3H】とは、When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・What(何を)・Why(なぜ)・How(どのように)・How many(どのくらい)・How much(いくら)という8つの視点のこと。
これらの問いは、一見すると単純な確認作業のようにも思えますが、実は読解の土台となる「表層理解」をしっかり固めるうえで不可欠なものです。
たとえば、ニュース記事を読むとき、ビジネス文書に目を通すとき、人の発言に耳を傾けるとき――私たちはつい、部分的な情報や印象で理解した気になってしまいがちです。しかし、誰が/いつ/どこで/何を/なぜ/どうやってという基本の問いを一つひとつ丁寧に確かめることで、情報の全体像が見えてきます。
そして、この5W3Hの問いを起点にして、
「なぜこのタイミングだったのか?」
「この『誰が』に他の可能性はないのか?」
「本当にその方法が最善だったのか?」
といった“次の問い”が生まれてきます。
このように、【5W3H】は単なる確認ツールではなく、読解力を深めていくための思考の階段として機能します。とくに「Why」や「How」は、物事の背後にある価値観や文脈、意図に迫るうえで重要な視点です。
言い換えれば、5W3Hを意識的に使える人は、「情報を読む」だけでなく、「状況を解釈する」「立場を理解する」「構造を再構築する」ことができるのです。
読解力とは、“問いの連鎖”によって育まれる知性です。
その入口としての5W3Hは、まさに最強の思考トレーニングフレームなのかもしれません。
こうした思考のトレーニングを通じて、私たちは世の中や物事を理解するための「型=枠組み」を少しずつ育てていくことができます。この“型”こそが、認知心理学の言葉でいうところの「スキーマ(schema)」です。
スキーマとは、過去の経験や知識の蓄積によって形成された、思考や認識の枠組みのことを指します。たとえば、「レストランに行く」というシーンに対して、私たちは「店に入る→席に案内される→メニューを見る→注文する→料理が出てくる→会計する」といった流れを自然に思い浮かべます。これが「レストランという状況に対するスキーマ」です。
読解においても同様です。
ある文章を読んだときに、「これはビジネスメールだな」「これは論説文だから主張と根拠を探そう」といった予測や理解の足がかりをつかむのも、スキーマが働いているからです。
ここで重要なのは、読解力とは、スキーマを“問いによってアップデートし続ける力”でもあるということです。
というのも、スキーマは便利である一方で、思考の“決めつけ”や“偏り”にもつながりやすいからです。ある出来事を自分の既存のスキーマだけで解釈してしまうと、見落としてしまう情報や、見えてこない文脈が生まれてしまいます。
だからこそ、「なぜ?」「ほかの可能性は?」「この前提は正しいか?」という問いが、スキーマをゆるやかに揺さぶり、拡張してくれるのです。
何より欠かせないのが、スキーマを充実化させるために、「人生の経験値」をUPDATEし続けていくということに、最終的には論点が循環してきます。
充実した経験があれば、それを考えるための言葉を得たいと思えるでしょうし、あるいは、読書自体を増やしたり、他者との対話を増やすという経験が増えていくことで、さらに言葉を得られる状況を作ることもできます。
そこから生まれた「理解の箱」が、次に人や物事を読み解く時に役立つのです。
本質的な問いは、以下の2つを駆使すると持ち続けることができると山口さんは語ります。
1)なぜ
2)そもそも
- なぜ:理由や原因、動機などを突き止めるときに使う
- そもそも:背景や前提、定義、目的、事実などを明確にするときに使う
根本に触れる思考と、そこから得られた情報(キーワード)をふかぼり続けるスタンスを持っていくことで、自分自身、あるいは、社会の中での他者との関係性、さらにはものごとの本質を見極める力を養っていくことができるのです。
深い理解を求めていくには、「考えること」やめないことが何より大切です。人は、言葉があり、言葉があるからこそ、抽象的なことや、空想もすることができます。
しかし、一方で、言葉があるからこそ、その世界に囚われてしまうとも捉えることができるでしょう。
言葉とは、実は、仮説であり、ものごとの仮の形でしかないということを前提に、ものごとに向かったり、他者や、経験に向かっていきながら、自分自身の理解をアップデートしてくことが重要なのかもしれません。
言葉について、思考を深めていくには、こちらの1冊「クラウドに接続せよ!?『僕たちは言葉について何も知らない 孤独、誤解、もどかしさの言語学』小野純一」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。

まとめ
- 読解力とは!?――人の知性の根源です。
- 5つのスタンスを大切に!?――心構えが変われば、活動が変わり、思考の枠組みを充実化させます。
- 問いを持ち続けることとは!?――柔軟に考え続ける、クリティカルな視点を保持することです。
