あなた自身!?『ビジネスを育てる 新版 いつの時代も変わらない起業と経営の本質』ポール・ホーケン

ビジネスを育てる 新版 いつの時代も変わらない起業と経営の本質
  • どのように事業をゼロイチで立ち上げていくのが良いでしょうか!?
  • 実は、ビジネスをどのように捉えるのかがキーです。
  • なぜなら、ビジネスとは見方によっては全人格を賭けたアートであるとも言えるのです。
  • 本書は、今も愛される名著ポール・ホーケン著『Growing a Business』の日本版です。
  • 本書を通じて、ビジネスの見立てを改めることを促します。
ポール・ホーケン,青木耕平,阪本啓一
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ビジネスは、人間のために生まれた?

ビジネスを育てる』は、ポール・ホーケンが描いた起業と経営の本質に迫る名著であり、サステナビリティや小規模ビジネスの意義に光を当てた1冊です。

著者ポール・ホーケンのご紹介から始めてみましょう。

ポール・ホーケンは、アメリカを代表する環境活動家、実業家、作家であり、持続可能なビジネスの思想家として世界的に知られています。1946年生まれ。若い頃から社会正義と環境保護に強い関心を持ち、1960年代には公民権運動に関わる活動にも従事しました。

その後、自然食品の流通企業「エレヴェーションズ」を創業し、当時としては画期的なオーガニックビジネスを実践。この実業家としての経験と思想をもとに、持続可能な経済や倫理的ビジネスについて多数の著作を執筆してきました。

彼の思想に一貫しているのは、「ビジネスは破壊者ではなく、再生者になれる」という信念。

規模の大小を問わず、志ある起業や経営を通じて、社会や自然との調和を取り戻すことができるというメッセージは、時代を超えて多くの起業家・経営者たちにインスピレーションを与え続けています。

時を経ても人間の基本的で根源的な欲求は変わることがないでしょう。

  • 意義ある生活を送りたい。
  • 意味のある仕事をしたい。
  • 幸せを感じ、それを持続させたい。
  • 自分の子どもにもそうした環境を提供したい。
  • ・・・

また同時に、普遍的に感じることとしては、人と人のふれあいの瞬間において、最高の時間を過ごすことができるということです。

顔の見えない大企業から買い物をしても何の感情も生まれません。心配りができ、親切で、社会に対して関心を持ちながら、より良い世界を築こうと努力している人々。彼らから買うときこそが、至福のときと言ってよいでしょう。

今回ご紹介する1冊は、上記のような人の求めるものの真実が詰まっています。

それは著者であるポールが自ら事業を立ち上げながら、一つ一つ実感をもって確認してきた過程に基づいており、裏打ちされたものです。

1960年代:社会活動と事業の萌芽
ポール・ホーケンは大学時代、公民権運動に参加し、アラバマ州セルマでキング牧師とともに活動した経験を持ちます。この時期に、社会と経済の変革における市民の役割を強く意識するようになりました。初期の関心はビジネスというより「社会の中でいかに生きるか」にありました。

1970年代:自然食品ビジネスへの挑戦(Erewhon Trading Company)
ホーケンはアメリカ西海岸で、自然食品を扱う卸会社「Erewhon Trading Company(エレホン・トレーディング・カンパニー)」を設立。自然農法に基づいた食品を、農家から都市部の消費者へと届けるサプライチェーンを構築しました。この事業は、当時はまだ黎明期だったオーガニック市場において、先駆的な役割を果たします。

1980年代:Small is Beautifulなビジネス論の提唱(『ビジネスを育てる』)
事業経営の傍らで執筆活動を開始し、1987年に出版された『Growing a Business(ビジネスを育てる)』は、拡大志向のアメリカ的ビジネス観に一石を投じました。彼は、ビジネスは「大きくする」ものではなく、「育てる」ものだと説き、個人の情熱と価値観を反映した起業のあり方を提唱しました。この思想は、1980年代後半の起業ブームの中で、持続可能性や地域性を重視する流れを生み出しました。

1990年代:企業と環境の共生を模索(『ナチュラル・キャピタリズム』)
アマリー&ハンター・ロビンズと共著で『Natural Capitalism』を出版。ここでは「自然資本(natural capital)」という概念を導入し、環境と経済を対立させるのではなく、統合的に捉える新たな経営モデルを提唱します。グリーン経営の先駆けとして、欧米の企業経営者・政策立案者にも大きな影響を与えました。

2010年代:気候変動に対するアクションへ(Project Drawdown)
環境NPO「Project Drawdown(プロジェクト・ドローダウン)」を設立し、気候危機を反転させる100の解決策を定量的に示す報告書を発表。この取り組みでは、再生可能エネルギーや森林再生といった技術的解決策だけでなく、教育・女性の権利・食生活の見直しといった文化的要因まで包括的に扱っています。

ポールの人生の旅路は、まさに、人はなぜビジネスをするのか?ということに対する答えを探し続けるようなものでした。社会活動の中で、いかに生きるかを考え、ビジネスへの挑戦の中で、人と人のつながり、ものごとの連鎖について知り、経済成長の中で巨大企業の時代においては、小さな身の丈のビジネスを「育てる」思想を説いてきました。

ビジネスを「育てる」というメタファーを含んだ言葉と、彼の人への眼差しがシンクロします。

良いビジネスは、育つ?

「育てる」について3つの概念からなると言います。

  • 自分の周囲の世界へ関心を持つ
  • 人から学ぶ
  • 自分を変える

これはまさに、人の成長のことであり、そして、その成長にビジネスがシンクロしてついてくるという発想によるものであるととらえられるでしょう。

つまり、ビジネスとは、自分という人格の成長に伴って、育っていくものに等しいのです。

ビジネスの骨格や力学について考えたい。

この言葉の通り、本書『ビジネスを育てる』の中では、繰り返し、ビジネスと人を見立てるとても印象深いキーワードが語られています。

ビジネスの成功は、ひとえにあなた本人にかかっている。あなたが世界に二人いないように、あなたのビジネスもかけがえのない唯一絶対のものなのだ。「ビジネスをする」ということは、お金儲けを指すのではない。あなたが、ほかの誰でもない、あなた自身になるための道なのである。

私たちがビジネスを通じて学べることはたくさんあります。ヒト・モノ・カネの流れやそれを介した社会の仕組み、そして私たちがどんな価値を信じるのか?という着眼点や価値観などです。

でもポールは、そこから一歩踏み込んで、そうした世界を認知する自分自身の存在へと眼差しを振り向けます。

自分自身がいかにあるのかを、考えるのにビジネスは、非常に役に立つ。

それは自分と社会の関わりのことから見出されることであり、そして、自分自身のこれまでの歩みとこれからの視野を全て含むものであるからです。

損益は損益計算書に任せればよろしい。大切なのは、損益にかかわらず、何事かを生み出す泉となる数限りない活動である。

活動を作っていくことがビジネスであり、必ずしも計画やコンセプトを見極めていることだけが、ビジネスになるのではないという事実を強調してくれているようでもあります。

また、売上や利益は結果として積み重ねられていくものであるという、目的と手段を間違えないようにさせてくれる言葉としても上記を受け取ることもできるでしょう。

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ビジネスは、アートである!?

ビジネスを進めていく時、それは、もしかすると“遊び”としての一面をなすかもしれません。

子どもが新しいものごとを見たり、聞いたり、体験する中で、「なぜ?」という問いを自然と発するように、起業家も世の中の当たり前や常識について、「なぜ?」「なぜだめなの(Why not?)」を息を吐くようになげかけます。

良いビジネスは面白い問題をはらんでいる。悪いビジネスの問題はつまらない。

そして良い問題というのは、良い商品を結果的に求めていくというのです。

その結果、地域に寄与する道筋が見えたり、顧客が反対にビジネスを応援してくれたり、ビジネスを支えてくれる人々がたくさん集まってくるものになります。

なぜ?──そう問いかけることを、私たちはいつからやめてしまったのでしょうか。

大人になるにつれて、社会の仕組みや経済の常識を“前提”として受け入れてしまいがちです。「成長とは右肩上がりである」とか、「資本を集めてスケールさせることが起業の成功だ」といった具合に。しかし、本当にそうなのでしょうか?

子どものように、いまの世界に素朴な疑問を投げかけてみると、ビジネスに潜む「本質」が立ち上がってきます。それは単なる稼ぎの手段ではなく、自分自身の価値観や人生のテーマを社会と接続するための表現行為なのではないか――。

その“なぜ”を手放さずにいることこそが、自分とビジネスをシンクロさせる鍵なのだと、ポール・ホーケンは教えてくれます。

ビジネスは増殖のアートである。

この“増殖”という言葉に込められているのは、数値的な拡大ではなく、意味や関係性が豊かに広がっていくイメージです。自然界においても、小さな種が土に根を張り、水を吸い、やがて大きな森を形成していくように、ビジネスもまた、自らの理念と環境との対話の中で、少しずつかたちを育てていくものなのかもしれません。

実際に、彼はビジネスは規模ではないと明言します。

本当に大切なのは、「なぜ」に応える起点であり、自らの人格を賭して挑戦する終わりのない成長の物語が本質なのだと彼は教えてくれているようです。

だからこそ、仮に小さく、乏しく、始めたとしても、最終的にはスケールすことだって可能であり、多くの企業やビジネスは、そのようにして結果的に社会の中に組み込まれていっている過程にほかなりません。

ビジネスは身体知であり、実務に身を浸しながら学び、思考するべきである

こんなにもワクワクする分野を、人は自らのために生み出したのですね。

まとめ

  • ビジネスは、人間のために生まれた?――人の根源的な欲求を満たすものです。
  • 良いビジネスは、育つ?――よい問題意識を持つ起業家の人格とともに育っていくものです。
  • ビジネスは、アートである!?――それは自分自身であり、自分のあり様を育てるものです。
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