【自分を陥れるのは、自分自身!?】なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか|ジョナサン・マレシック

なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか
  • 過重労働の一方で、仕事にやりがいをもとめていたりしませんか!?
  • 実は、その仕事への見立てが私たちを陥れています。
  • なぜなら、待っているのは、人生全てを仕事にしてしまうスパイラルだからです。
  • 本書は、バーンアウト(燃え尽き症候群)に関する1冊です。
  • 本書を通じて、自身の働き方に気づくための視点を得られるでしょう。
ジョナサン・マレシック,吉嶺英美
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バーンアウトとは!?

バーンアウトとは、二本の竿がそれぞれ別方向に倒れていく竹馬に乗っている状態とよく似ている。

3章 バーンアウト・スペクトラム

1本の竿は、仕事の理想、そして、もう1本の竿は、仕事の現実です。運が良ければ、2本の竿は近い距離で垂直に立っていますが、バランスを崩すと、互いの竿が離れていき、私たちの身を引き裂くように働きます。

理想が高まれば高まるほどに、この引き裂く力は増大します。なぜなら、竿の高さ(長さ)が増えるからです。ハードワークで時間が経過していくうちに、身体に過労がたまり、両方、もしくはいずれかの竿を手放すことになります。

結局そのことで、身体に不調をきたしますし、もちろん精神的にもネガティブな影響があるでしょう。

バーンアウトが起こると!?

仕事の理想と現実が乖離し始めた時に、私たちは4つの反応をします。

まずひとつめは、2本の竿に切引き裂かれそうになっても、なお必死に両方の竿を握りしめるという反応です。作業負担が多い、十分な支援がない、精神的負担がかなり多い、などなど、現実が理想からどんどん離れていっても、私たちは、「強い意志」で自分の理想にしがみつきます。

なぜなら、その「理想」が私たちが生きるすべだと思っているのと同時に、目的であるとも認識してしまっているからです。その目的でもあり、手段でもある生きるための理想を手放すということは、自分自身を否定することに繋がり、そうした状態をなんとしても避けるため、無理を承知で、手放すことを避けます。

結果的に、消耗感が高まり、無理をしすぎることになります。

そして2つ目。続いて、理想を打ち捨て、妥協した現実に流れる反応です。ここまでくると、結構重症です。私たちは同僚や顧客を「人間」として観ることができなくなります。これを脱人格化といいます。

そうでなくても、自分の仕事の社会的氏名を果たすのを諦めて、単に報酬のことだけを考えるようにもなるでしょう。

さらに3つ目。現実を見ない、あるいは現実に抗いながら、理想を維持するという反応です。これもそれなりに重症で、仕事が自分の期待と一致しないと、私たちは失望や怒りを覚えます。心身にネガティブな状態になることは言うまでもありません。

最終的に4つ目の反応。理想と現実の両方を手放すという反応です。人生において最低限のことしかできない、まさにバーンアウト(燃え尽き症候群)という状態に陥り、再起を果たすのには、何らかのリハビリ(手段や期間)が必要になります。

そもそもの問題点は、仕事に「過剰な理想」を掲げることにあります。理想は時に自分自身のモチベーションになりとても大切なのですが、誰もが過剰に高い目標を掲げることで、全身全霊取り組まざるを得なくなる状態になり、そして一人心労がたまり苦労しているというのが現代社会の寂しい現実でしょう。頑張れば頑張るほど、仕事から離れられなくなり、さらに頑張ってしまうスパイラルに陥る・・・。

一生懸命働けば良い人生を送れるという理想があるからだ。

5章 仕事の聖人と仕事の殉教者 私たちの理想の問題点
ジョナサン・マレシック,吉嶺英美
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なぜ、バーンアウトは起こるのか!?

私たちは頑張れば報われると信じる社会を生きているがあまり、その思想に自分を委ねがちです。

社会は、次のようにささやきます。良い人生とは、物質的に恵まれているということだけでなく、社会的尊厳、道徳的人格、そして精神的目的に恵まれた人生です。それを手に入れるためには、一生懸命に努力して働くことが良いです。と・・・。

たしかに、良い人生の定義は間違っていないかもしれません。でも、それらが労働だけによってもたらされるかのように捉えられてしまうことに、一番の問題点があります。人生というシェアの中で、労働が占める割合はそこまで高くないのが、本来的ではないでしょうか。

働けば幸せになれるという「約束」はほぼまやかしなのです。哲学者プラトンが「高貴な嘘」とこれらを呼びました。社会の基本的な仕組みを正当化するように、社会が勝手に作った共通認識に溺れることはありません。「高貴な嘘」は私たちを勤勉に働くことがより良いことだと信じこませます。たとえ、上司や資本家のために働いているだけでも、自分は最高善を行っていると思わせるのです。

こうしているうちに2本の竿は徐々に離れていきます・・・。

仕事は成功をもたらしてくれるはずと期待するが、じつはその機体自体が私たちをバーンアウトに追い込んでいく。

5章 仕事の聖人と仕事の殉教者 私たちの理想の問題点

「高貴な嘘」は、仕事は、「尊厳」、「人格」、「目的」だ!とうそぶきます。これは社会が近代において徐々に育ててきた共通認識であるため、かつ、この認識のために資本主義がよりよく駆動しているため、なかなか払拭することができません。唯一の方法はプラトンが提示するように、その「高貴な嘘」を一人ひとりが信じないようにすることなのですが、そうした超俯瞰的な視点を全員が持つことは、難しいことでもあります。

バーンアウトをしない体質に自らを育てるためには、まず俯瞰的な視点が大切です。私たちが生きるこの世界や社会はどんな仕組みになっているのか、その結果、私たちがどんなインサイトを持つことが奨励されているのか、そうした視点を持ちながら、人生を考え、仕事と適切な関わり方をしていくことが、最善です。

ドイツの社会学者、政治学者であるマックス・ヴェーバーは、資本主義を「巨大な秩序界」であると説きました。あくまで褒め言葉として。資本主義は包括的な経済的、道徳的秩序であり、人間が作った最も素晴らしいものであるとしました。

でも、問題もあります。その秩序の中にいる私たちは、その規範が当たり前すぎて、まるで空気のように意識的にならなくては感じることができないのです。資本主義の秩序のどこに参加しようとしても、資本主義の秩序は私たちに「選択」を強いてきます。

資本主義の倫理観を採用するか、それを受け入れずに貧困と軽蔑を受け入れるかの選択を迫るのだ。

5章 仕事の聖人と仕事の殉教者 私たちの理想の問題点

「良い人生」の新しいモデルを自ら構築することです。働くことで自分の価値を認識しろ!と私たちを煽る「高貴な嘘」よりもっと深いところに土台を作るのです。

私たちがまず見直すべきは、労働とは尊厳の源である!という大前提ではないでしょうか。

資本主義からの距離のとり方については、こちらの1冊「【資本主義をハックせよ!?】ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す|山口周」も大変刺激的です。繰り返し拝読したい1冊です。

まとめ

  • バーンアウトとは!?――仕事への理想と現実に引き裂かれる現象です。
  • バーンアウトが起こると!?――人は自分自身を否定し、人生が機能不全になります。
  • なぜ、バーンアウトは起こるのか!?――仕事=人生である不文律があるからです。
ジョナサン・マレシック,吉嶺英美
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