【人生のゴールデンタイムを活かせ!?】幼児教育の経済学|ジェームズ・J・ヘックマン,古草秀子

幼児教育の経済学
  • 教育に対する投資をどのように捉えるべきでしょうか!?
  • 実は、認知領域だけではなく、数値化できないスキルセットへの効果もあわせて見るべきです。
  • なぜなら、その両方が人生を豊かにするためには不可欠だからです。
  • 本書は、ノーベル経済学賞受賞者であるヘックマン教授の幼児教育に対するアプローチをまとめた1冊です。
  • 本書を通じて、幼児教育の重要性とその内容についてヒントを得ることができます。
ジェームズ・J・ヘックマン,古草秀子
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人生のゴールデンタイム!?

人生で成功するかどうかは、数値化できる認知的スキルだけによりません。非認知的な要素も欠かせないのです。

非認知的要素とは、次のような能力があげられています。

  • 肉体的・精神的健康
  • 根気強さ
  • 注意深さ
  • 意欲
  • 自信
  • などなど

これらは、社会的・情動的気質ともとらえられるでしょう。IQや学力検査などしか私たちは尺度を持たないのですが、実は、それだけに寄らないスキルUPの重要性についても実は、気づいています。例えば、大人の世界では、コミュ力がすごく大切なスキルとして取り扱われます。新卒採用のときにも、多くの企業が、「コミュニケーション能力」を最も重要な素質として掲げます。でも、そのコミュニケーション能力はどのようにして培われていくのでしょうか?

じつは、こうした非認知能力の向上には、幼児期の経験や体験がとても重要であるとの主旨が本書の主題となっています。

認知的スキルも社会的・情動的スキルも幼少期に発達し、その発達は家庭環境に左右される。

パート1 子どもたちに公平なチャンスを与える

大切なのは、「生活の質」です。むしろ、親の収入とか、学歴とか、両親が揃っているかとか、そうした要素は二の次です。こうした家庭環境は世代を超えて蓄積されていく要素であるという点も見逃せません。世代は繰り返していきます。

幼少期の「生活の質」を向上させることを社会的な政策として実現することによって、公共の問題を解決する糸口とすることも可能なのです。少ない投資により、依存症患者を減少させたり、自殺者を減らせたりするのであれば、対処療法的なアプローチよりも理にかなっています。

つまり、「恵まれない家庭」に生まれた子どもに幼い時期から社会が手を差し伸べることによって、はっきりした永続的な効果をもたらすことが研究によって、証明されているということです。

社会政策としての可能性!?

遺伝子が全てを決めるという前提が、覆されようとしています。人間としての特徴が発揮される根拠として、たしかに遺伝的要素も多分に大きいのですが、それよりも増して重要であると捉えられているのが、幼少期の体験です。

幼少期の教育を上手に実行することは、大きな利益をもたらす可能性がある。

パート1 子どもたちに公平なチャンスを与える

それより遅れて、成人後に介入をした場合と比べると、実は圧倒的に幼少期への介入のほうが「経済的効果」が期待できます。なぜなら、幼少期の体験を人は、持ち越していくからです。スキルがスキルをもたらし、能力が将来の能力を育てていきます。幼少期に認知力や社会性や情動の各方面の能力を幅広く身につけることは、その後の学習をより効率的にして、それによって学習することがより簡単になるということです。そしてこれらの基礎的なスキルセットは継続的な学習効果をもたらします。

基礎学習が、その後の応用学習にも効果を発揮することは、多くの分野でも見られていることです。例えば、会社の仕組みを多面的に知識として知っていれば、その後の仕事においても学習効果が高まるのと同じです。政治・経済、社会、技術、財務、人事など横断的な基礎知識は、複雑な会社というシステムを理解し、介入するための視点を養うために必要な視点となります。

社会政策は、幼少期に行うべきです。

貧困に対応し社会的流動性を促進するために、所得の再分配を求める声は多い。だが、最新の研究は、再配分はある時点で確実に社会の不公平感を減じるものの、それ自体が長期的な社会的流動性や社会的包容力を向上させはしないと主張している。

パート1 子どもたちに公平なチャンスを与える

経済効率や労働力の生産性を高めるうえで、単純な再配分よりもはるかに効果的なのが、幼児期の介入なのです。家族の大切さを尊重し、文化的感受性を発揮し、社会の多様性を認識しながら、子育ての質や幼少期の環境を高めることによって高い効果を得ることができます。

ヘックマンによれば、幼少期の介入は効果的なだけでなく、公平かつ公正である。そのコストは、なにもしないよりもはるかに低く、幼少期を過ぎてからあまり効果的でない介入をするよりも低い。

パート1 子どもたちに公平なチャンスを与える

特に就学前教育のアプローチがとても重要です。算数や国語の早期教育ではありません。あくまで非認知能力を高める教育を施すことです。

1.就学前教育がその後の人生に大きな影響を与えることが判明しています。
2.就学前教育で重要なのは、IQに代表されるような認知能力だけでなく、非認知能力の向上です。

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理想の教育訓練の内容は!?

ただし、教育訓練の効果を正確に計測することは、難題です。

教育を受けた人と受けなかった人を単純に比較するだけでは、その効果を証明することが難しいのです。というのも、人々の能力が好みが多様であるという前提があります。教育を受けた人は、教育を受けることが自分にとって好ましいから受けているのに対して、教育を受けなかった人は、自分にとって好ましくないか、好ましかったけれども、経済環境が悪くで受けられなかった人たちであると言えます。教育に対する適合・不適合を見ていくだけでも、繊細な人の個性という問題に行き着くことになり、一概に、全てに教育を施すことの正当性から、躓いてしまいます。

ただ、既往研究によっては、無作為割当を行い、その後の追跡調査まで含めて有益な示唆を提供してくれるものもあります。

たとえば、米国で行われたペリー就学前プロジェクト「アベセダリアンプロジェクト」がそうです。ペリー就学前プロジェクトは、1962年から1967年にミシガン州イプシランティで、低所得でアフリカ系の58世帯の子どもを対象に実施されました。就学前の幼児に対して、午前中に毎日2時間半ずつ教室での授業を受けさせて、さらに週に1度は家庭を訪問して90分の指導を行ったものです。指導内容は子どもの年齢と能力に応じて調整されて、非認知的特質を育てることに重点を起き、子どもの自発性を大切にする活動を中心としました。

カリキュラムは参加型学習に重点を置いていました。子どもたちは自分の活動を計画、実行、そして振り返ることによって学習体験の一部として参加しました。この実践的なアプローチは、子どもたちが幼少期に得た知識やスキルの理解と保持を深めることを目指していました。(出典

教師は子どもが「自分で考えた遊び」を実践し、毎日復習するように促したといいます。復習は集団で行い、子どもたちに重要な社会的スキルを教えました。就学前教育は30週間続けられて、その後、これを受けた集団とそうでない集団を40歳まで追跡調査しました。

また、「アベセダリアンプロジェクト」は1972年から1977年に行われてた研究です。恵まれない子ども111人を対象に実施され、実験開始の対象者の平均年齢は4歳程度でした。プログラムは、年間を通じて行われて子どもが8歳になるまで、介入が継続されました。その後、子どもは21歳まで継続して調査されて、30歳時点での追跡調査が2012年はじめに実施されました。

このプロジェクトは「ペリー就学前プロジェクト」よりも徹底して行われました。1日中の介入のほか、子どもの学習進捗に応じて、家庭学習のカリキュラムをカスタマイズして教員が作成しました。家庭学習を指導する教師は親と学校の教師との連絡役をつとめ、2週間に1度双方から話を聞き、橋渡し役をつとめました。それだけにとどまらず、親が仕事を見つけることをサポートしたり、社会福祉サービスについて情報提供したり、子どもの送り迎えまで行いながら、伴走支援を続けました。結果、親の子育て能力も格段に向上したプロジェクトとなりました。

いずれのプロジェクトでも、学習を提供されたグループのほうが、より良い結果をもたらしました。IQについては当初は優位な差がありましたが、その効果は次第に薄れていったといいます。

一方で、非認知能力の向上については、優位な差が見られました。

また、14歳時点で学力検査(IQ検査)をしたところ、プログラムを受けた集団のほうが、成績が良く、より多くを学ぶ体質をえていたことも報告されています。短期的にはIQの向上に寄与しなかったとはいえ、中長期的に見ていくと、実はIQを高める基礎能力として、非認知能力が貢献したとも考えられるかも知れません。

いずれのプログラムでも追跡調査の結果、「ペリー就学前プロジェクト」40歳・「アベセダリアンプロジェクト」30歳時点において、次のような結果がもたらされました。

  • 学力検査の結果が良かった。
  • 学歴が高かった。
  • 特別支援教育の対象者が少なかった。
  • 収入が多かった。
  • 持ち家率が高かった。
  • 生活保護受給率が低かった。
  • 逮捕者率が低かった。

ペリー就学前プロジェクトの利益(費用1ドルあたりの年間利益)の率は6%から10%と見積もられる(第二次世界大戦後から2008年までの株式の配当5.8%よりも多い)。この見積もりは、このところ考慮されるようになった心と体の健康がもたらす経済的利益を含んでいないので、控えめな数字である。

パート1 子どもたちに公平なチャンスを与える

今後、展開していきたい就学前のプログラムへの示唆をまとめると次のようになります。

  • 家庭訪問も含めて、子育て環境の向上を支援するプログラムであること。(両親の教育スキルUP)
  • 両親が支援に値するかどうかではなく、子どもを支援する目的で行われること。
  • 子どもの自発性を感化させるようなプログラム内容を検討すること。

これらの要素を検討しながら、社会実装可能な手法の検討が引き続きされていくことが望ましいでしょう。

まとめ

  • 人生のゴールデンタイム!?――就学前のチャンスを逃さないようにしましょう。
  • 社会政策としての可能性!?――就学前のプログラム提供は、よりよい社会を目指していくうえで、費用対効果が高いです。
  • 理想の教育訓練の内容は!?――子どもの自発性、自主性を尊重しましょう。
ジェームズ・J・ヘックマン,古草秀子
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