- ものごとを「よく考える」とは、どういうことでしょうか!?
- 実は、ものごとの「裏側」を考えることがポイントかもしれません。
- なぜなら、結果ではなく原因が大切だからです。
- 本書は、よりよく考えるためのものごとの本質の見つけ方を説いた1冊です。
- 本書を通じて、考えることの解像度を上げることができます。
本質とはなにか!?
よく考えようとか、もっと深く考えたほうがいいんじゃないかと、仕事や生活で言われることや、言ってしまうことってあるでしょう。
でも、「よく」や「深く」考えることって、いったいどういうことでしょうか。何が不足しているのでしょうか。私たちは、漠然と「よく」や「深く」について知っているようですが、具体的には知らないようでもあります。
変化の激しい時代において、抜本的に思考を変えることができない限り、大きな成長が望めない時代になりました。情報化社会の中で、情報が溢れ、逆にものごとの本当の姿が見えづらくなっています。そんな時代にあって、ものごとのもっとも大切な構成や仕組みを捉え、そこから働きかける取り組みや活動が求められるようになっています。
この点をより良く理解することで、日常生活や仕事において、よりよい思考を行い、よりよい成果をもたらすことが可能になります。
「よく」や「深く」の原点となるのが、「本質」です。
本質とは、問題や減少の裏側にひそむ、それらを引き起こしている真因である。
より本質が見えにくく、より本質から考えることが求められる現代社会
本書の中では、本質をもうすこし具体的に次のように定義します。
「ものごとの本来の性質や姿。それなしには、そのものが存在し得ない性質・要素」。
あるものごとがそうであるために、最低限持っていなければならない、非常に大切なものを指します。
でもこれでは本質の解像度が上がりません。平井孝志さんは、さらに一歩踏み込んで、「本質 = モデル × ダイナミズム」と説きます。
モデルとは!?
モデルとは、その現象を生み出す構造、つまり、構成要素や、それらの相互の関係性のことだ。
本書における「本質」の定義
まず、モデルとは、要素とその関係のことを指します。余計な枝葉末節を削ぎ落とした、抽象的な1枚の図です。ループ図とも呼ばれるものです。これはシステムダイナミクスの方法を踏襲します。世の中のものごとは、全て関係の中で成り立っています。私たちの会社が商売を成り立たせられているのも、地球が存在できるのも、人間の感情だって、すべては、何かと何かの間で起こっている1つの現象であると捉えられます。
モデルはその現象を俯瞰した視点でとらえます。かつ、関係性を見出す点において、要素を一つだけ取り扱うよりもより本質に近づけるという利点があります。
全体観を得ることについては、同じ平井孝志さんのこちらの投稿「【思考の限界を突破せよ!?】武器としての図で考える習慣:「抽象化思考」のレッスン|平井孝志」もぜひあわせてご覧ください。図で考えることとモデルを捉えることはリンクします。さらに、図で考えることについて、ループ図も登場します。
2つの関係性を使い分けよう
モデルを検討するためには、関係を取り扱いますが、とくに、2つの関係、つまり、因果関係と相関関係の違いについて留意する必要があります。
- 因果関係とは、2つのことがらの間に、本当に原因と結果の理屈が存在していることです。
- 相関関係とは、2つのことがらの間に関係があるように見えても、原因と結果の因果がないものです。
たとえば、因果関係は、努力する人→英語のテストの成績/努力する人→営業の成績などがあげられるでしょう。しかし、英語のテストの成績と営業の成績は、因果関係ではなく、相関関係でとらえるひつようがあります。
この2つの視点を間違えると、要素の関係を取り違い、間違った判断を下してしまうおそれがあります。
5つの要素にも着目しよう
モデルの要素を見つけていくときには、次にあげる5つの要素に着目することも大切です。
1)インプット元
2)アウトプット先
3)競争関係
4)協調関係
5)影響者
仕事の成果を捉えることがとてもよいヒントになります。インプット元は、自分の時間や持っているスキルなどです。さらにそのおおもとをたどれば、自分自身の健康や、これまでの努力の蓄積なども、インプット元と言っても良いでしょう。
アウトプット先は、モデルから出てくる成果です。たとえば、顧客に対するサービスや、上司に対する報告などです。競争関係はインプットやアウトプットを競い合う相手であり、狭く考えれば、会社の同僚や広く考えれば同業他社の存在などが上げられるでしょう。
協調関係は、補完関係やシナジー効果を生み出せる相手のことです。たとえば、上司や部下、あるいは支援部門や協力会社などがあげられます。
影響者は間接的にモデルに影響をもたらす存在です。社長や人事部長などがそれにあたります。変化を加速させたり、モデルの前提を変えてしまう存在です。
レバレッジ・ポイントを見つけよう
モデルに働きかけるためには、「レバレッジ・ポイント」を見つける必要があります。レバレッジ・ポイントとは、大きな変化を生み出すちいさな「くさび」のようなものです。
たとえば、忙しくて恋人に会う時間が少なく、喧嘩ばかりの状況を考えてみましょう。この場合2人の関係という「モデル」を取り扱うことになります。キーポイントは、恋人の不満レベルを定期的に低下させる何かのアクションを組み込むことが、解決の1手になります。恋人の趣味が映画であれば、「毎月1回は映画に行く」ようにするとかそういうことです。この映画が、互いにとって共通の趣味であればなおさらですね。
「毎月1回は映画に行く」=「共通の趣味の活動をする」というアクションが、「レバレッジ・ポイント」に作用するのです。
レバレッジ・ポイントを探すためには、ループ図の中で、「ストックし続けていること」を見つけてあげると、ヒントになることがあります。上記の例の場合は、「恋人の不満レベル」でした、これが蓄積し続けると2人の関係という「モデル」が崩壊するリスクがあるのです。
「ストック」を継続的に低下させることが可能な「ループ」を組み込むことが、リスク回避を可能にします。
- 地球温暖化に対して、二酸化炭素の蓄積量と、それを現象させるアクション。
- たまり続けるお風呂のお湯と、バスタブの栓。 などなど。
こうした関係性にフォーカスすることが、本質思考の一端を支えるのです。
ダイナミズムとは!?
本質思考のもう一つのポイントであるのが、ダイナミズムです。これは、時間軸の考え方を入れて、モデルがどのような振る舞いをするのかをつぶさに観察することで見いだすことができます。
問題とその答えは、決して時間的・空間的に隣接しているとは限らない。そう思ったほうが良い。
クリステンセン教授の示唆
時間軸を持つことで、モデルの中でのレバレッジ・ポイントを見出し、より効果的なアクションを取ることができます。
リーダーとしてどう振る舞うか大切だが、リーダーが何を目指すのかのほうが、もっと大事だということに気付くはずだ。
満を持して、行動に移す
たとえば、よりよいリーダーであるためには、何が必要かという視点で、検討してみましょう。
リーダーとは、フォロワーがいて、挑戦的で野心的なものごとにみなを導くような存在です。自分や他者がいかにリーダーであるかを考える時、私たちはその人の能力やスキル、蓄積された経験にまずフォーカスしてしまいがちです。
ただ、本当に大切なのは、その人と他者との関係にあることを忘れてはいけません。これが「モデル」を考えるということでした。人と人や人と組織の関係だけではなく、その人が目指しているビジョンの存在と、そのビジョンのために日々どのような活動として表出しているかに着目することも大切ということになります。
そして、その活動は、時系列で積み重なっていくものになります。ときに、仕事の成果として、あるいは、チームのモチベーションとして、もしかすると、マネジメント手法として、見出されることもあるでしょう。
つまり、単によりよいリーダーといっても、関係性や時間軸を用いて考えることで、本質的なあり方と必要な思考、言動の必要性に思い至ることが可能になります。
リーダー論については、ぜひこちらの1冊「【5つのポイントにフォーカスせよ!?】リーダーの仮面 ーー 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法|安藤広大」もご参照ください。「モデル」と「ダイナミズム」視点で拝読いただくとより、深いつながりを見いだすことができるかもしれません。
結局、問題解決のためには、モデルを変え、ダイナミズムを変えるしかない。
モデルを変えることができれば問題は解決する
現象だけを捉えても、問題は解決しません。根本と全体を捉えて、有効なアクションを検討するべきなのです。表面的な手当をしたところで、事態はさらに悪化の一途をたどることでしょう。
本質について、「モデル」と「ダイナミズム」をもって、深く考え続け、行動を導き出していきましょう。
まとめ
- 本質とはなにか!?――ものごとの背景と仕組みを知り、働きかけることです。
- モデルとは!?――ものごとを要素に分けて、その関係を知ることです。
- ダイナミズムとは!?――時間軸を用いて、モデルをさらに深く理解することです。