【弱さを、強さに!?】ユダヤ人とユダヤ教|市川裕

ユダヤ人とユダヤ教
  • これからの変化の時代を拓く経営戦略のために活かせる視点はどこにあるでしょうか!?
  • 実は、ユダヤの商人を知ることにヒントがあるかもしれません。
  • なぜなら、彼らこそ自らを客観的に分析し、生き抜くすべを考え尽くしたカルチャーを持つからです。
  • 本書は、ユダヤの文化の人を俯瞰する1冊です。
  • 本書を通じて、変化の時代を生きる視点を得ることができます。
市川裕
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ユダヤ人の自己認識とは!?

ユダヤ人は「捕囚(ガルート)」と「離散(ディアスポラ)」という捉え方で、自分たちの境遇を両義的なものとして把握する。

序章 ユダヤ人とは誰か

世界各地に分かれて生きざるをえなかった、ユダヤ人にとって、「捕囚」と「離散」は常に胸のなかにある想いとなっています。一見ネガティブな思想では有るのですが、これを糧に、かれらは連帯意識を強めています。

弱さを積極的に認めていくと、強さになるということかもしれません。そう考えてみるとこの1冊「【弱さが、コミュニケーションのヒント!?】〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション|岡田美智男」が脳裏をよぎります。

何も強いだけが、利得ではないということを知る視点になります。逆説的に捉えた時、なにか現状を打破するような力をもたらすこともあるのかもしれません。

ユダヤ人は、「捕囚」と「離散」という理解をすることで、土地との結びつきを喪失してもなお、共に行き続けられるユダヤ独自の文化を創造することができました。

ユダヤの人びとは自らの弱さを自覚したことで強くなった。

はじめに

離散生活による苦労とは!?

捕囚に込められた祖国への郷愁や欠乏感と、離散に込められた開放感と自由さ、その不安定さ。

序章 ユダヤ人とは誰か

私たち日本人には理解し難いものかもしれませんが、疑似体験するには、もしかしたら小松左京さんの不朽の名作「日本沈没」がベストかも。

ユダヤ人の離散生活は、とても過酷なものでした。

  • 異教徒の支配者とどのように契約を結ぶか。
  • 迫害を受け移住を強いられた土地で仕事をいかに立て直すか。
  • 自分のためだけでなく、家族のため、共同体のためにどう振る舞うべきか。

こうした難題に立ち向かうため、彼らが心の支えにしたのが「ハラハー(ユダヤ啓示法)」の行動規範です。

具体的には、経済活動に用いる行いで言えば、職業の選択、蓄財の方法、資産活用法、利子取得の当否、適性な利子と不当な利子の識別などが上げられます。こうした行動規範が名言化されていたことがポイントです。

不確実な時代において、あらためてパーパスが注目されています。パーパスは、当社独自の存在価値をしめすものですが、その上で、行動規範やミッション、ビジョン、バリューの併記も求められます。

変化の時代を柔軟に乗りこなしていくには、暗黙知の言語化が必要なのかもしれないと、ユダヤのカルチャーと照らして感じます。

パーパスについては、こちらの1冊「【MVV理解の解像度上げられる!?】理念経営2.0 ── 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ|佐宗邦威」も合わせてご覧ください!大変おすすめです。

市川裕
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「常識」をうがつマインドセットとは!?

それまで、ヨーロッパ社会は宗教観によって、利子の取得を禁じていました。ユダヤ教も同様に利子を認めていませんでした。

西欧キリスト教社会がこの倫理的な縛りを脱して経済活動に邁進するよりもはるか以前に、ユダヤ人はトーラーの禁令に抵触せずに利子取得を正当化する方法を考えだしたのである。

第1節 ユダヤ人の経済活動

しかし、ユダヤ人は、自らの常識とされていた利子取得の禁じ手を、解釈によって打破することに成功しました。

もともと「ユダヤの人は、貧しいものへの無利子の貸付は、神の意志に従う偉大な行為だ」と、解釈していました。無利子でお金を貸せば、貧しい人は、自力で生計を立てるためのチャンスを得ることになります。ところが、中世になるとユダヤの人々の多くが、商取引に従事するようになります。交易商や行商人として活躍します。リスクの大きな遠隔地との貿易は、多くの資金を必要とするため、必然的に借金の必要性もましていきます。

利子の解釈の必要性に迫られる中、ユダヤの人々は、新たな視点に立ちました。

それが、債権者と債務者が共同で商いをすることにおいて、取引で生じる利益と損失を双方が負担し、債務者は労働の報酬を債権者の利益の中から受け取ることができる、としたのです。こうして、利子を得ることに新しい解釈をし、債務者=往々にして相対的に貧しい人の立場を守り、神の意志に反することのない、取引を可能にしました。

そして、ビジネスの発展には不可欠なものというニュアンスとして利子が語られるのは非常に興味深いです。利子(金利)については、こちらの1冊「【金利市場は、3京円!?】教養としての「金利」|田渕直也」もぜひご覧ください。

こうして商取引の民となったユダヤの人ですが、20世紀になると、アメリカでのビジネスを拡大していきます。ユダヤ人の伝統的なビジネスとなっていた、宝石・貴金属、毛皮、玩具、繊維業、あるいは、情報通信業、新聞などのメディア産業、小売業、不動産業、そして、金融ビジネスです。

かれらは、貧困を理想化することをせず、かといって、質素倹約をないがしろにすることもせず、勤勉で、教育熱心、そして、選民思想と周辺的人間という自覚をもって、つねに努力をし、支え合い、工夫をしながら自身のビジネスを拡大させていきました。

ユダヤ人が経済的に優位に立つことができるカルチャーを俯瞰してみると以下のようなポイントが見えてくると思います。

1.独自の教育への価値観があります:ユダヤのカルチャーでは、古くから教育が非常に重視されています。タルムード(モーセが伝えたもう一つの律法とされる「口伝律法」を収めた文書群)やトーラー(ユダヤ教の聖書(タナハ)における最初の「モーセ五書」のこと)

2.強固なコミュニティがあります:ユダヤは、「捕囚(ガルート)」と「離散(ディアスポラ)」という自己認識を反力として、強い結束のもと、相互サポートを行います。また、マイノリティの意識も、結果として、強固なコミュニティとなります。

3.絶えずアプデする宗教的価値観と職業があります:中世キリスト教徒が利子をえることは禁止されていましたが、ユダヤは規律を新たに「解釈」し、銀行業や金融関連の事業を請け負えるようにしました。

4.グリッド(粘り強さ)があります:長い歴史の中、試練や困難に直面しながらも、ユダヤ人はこれを乗り越えてきました。この経験は、ユダヤの粘り強さを育みました。

これらのことから、企業の経営やそのビジョン策定も含めた舵取りにどのようなスタンスとスキルセットがポイントになるかを、見つめてみたいと思います。

いくつかポイントはあると思いますが、例えば3つに集約してみると次のようになるかもしれません。

  • 教育と継続的な学びを奨励する:現代のビジネス環境は非常に急速に変化しており、その変化に対応するためには絶えず学び続けることが必要です。社員一人ひとりが新しい知識やスキルを獲得することで、企業全体としての競争力が高まります。
  • 多様性を受け入れ、活用する:グローバル化が進む中、多様な背景や文化、価値観を持つ人々との協力が不可欠です。多様性を受け入れ、それを活用することで、より幅広い視点やアイディアが生まれ、革新的な解決策やビジネスチャンスが生まれる可能性が高まります。
  • 持続的な価値創出を追求:短期的な利益追求だけでなく、中長期的なビジョンや価値を重視することで、企業の持続的な成長やブランドの信頼性を確立することができます。

まとめ

  • ユダヤ人の自己認識とは!?――弱さを認めるからこその、強さを得ました。
  • 離散生活による苦労とは!?――常に土地土地の有力者と契約を意識しながら、自らの生活とアイデンティティを守ることが必要でした。
  • 「常識」をうがつマインドセットとは!?――新たな解釈をもって、現状打破に努めました。
市川裕
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