【生き残るのは、誰か!?】進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」|太刀川英輔

進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」
  • この世界で、生き残っていくのには、何が必要でしょうか!?
  • 実は、「狂人性」と「秀才性」の2つをあわせもつものかも。
  • なぜなら、その2つが生き残りのための「進化」を促すからです。
  • 本書は、デザイナー太刀川英輔さんによるデザインと進化にかかわるエッセンスの1冊です。
  • 本書を通じて、変化の時代の生き残りに必要な視点を得ることができます。
太刀川英輔
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「進化」とは何か!?

進化は、次のような単純明快なステップで起きます。

1)変異によるエラー:生物は、遺伝するときに個体の変異を繰り返す
2)自然選択と適応:自然のふるいによって、適応性の高い個体が残りやすい
3)形態の進化:世代を繰り返すと、細部まで適応した形態に行き着く
4)種の分化:住む場所や生存戦略の違いが発生すると、種が分化していく

自然界では、この「変異×適応」の仕組みがつねに働いている。ではこの進化論の考え方を、私たちの創造にあてはめてみるとどうなるか。

第1章 進化と思考の構造

ここで、著者である太刀川英輔さんは、「創造」と「進化」をリンクするものが、「言語」であると説きます。

進化とは、言語によって発現した「疑似進化」の能力である。言語の歴史は5万年。石器時代を乗り越えた頃の人類の歴史と重なります。そして、このころから、道具を使い始めます。身体性を拡張するための道具は、ある種の進化に近いものを感じさせます。

DNAと言語の構造はよく似ています。また、言語にも例え話や誇張やイントネーションのような拡張の性質があります。

「創造」には言語が必要で、「進化」にはDNAが必要だった――。

これらがエラーと適応を繰り返して、存在し続ける・・これが進化であるし、人間が生物的進化とあわせ持ち得た「創造」という拡張だといいます。

何が、結果的に「進化」となるのか!?

進化は2つのプログラムの結果導かれます。

つまり「ランダムに動く不規則性(狂人性=変異の思考)」と
「周囲の食物に対する知覚(秀才性=適応の思考)」の2つのプログラムにおける最小の組み合わせとして説明できる。

第1章 進化と思考の構造

変異的なランダムさと適応的な知覚が伴えば、それが単なる(科学的な)反応にもかかわらず、知性的な構造が出現します。自然界では、この「変異×適応」の仕組みがつねに働いています。

ここで過去の投稿「【幸運は引き寄せられる!?】その幸運は偶然ではないんです!――夢の仕事をつかむ心の練習問題|J・D・クランボルツ,A・S・レヴィン」を思い出します。

「計画的偶発性」により、じつは、幸運は引き寄せられるというクランボルツさんの理論です。

この、「計画的偶発性」を起こすための行動特性が、進化のとくに「狂人性」につながります。

<計画的偶発性を起こす行動特性>

  1. 好奇心(Curiosity):新しいことに興味を持ち続ける 
  2. 持続性(Persistence):失敗してもあきらめずに努力する 
  3. 楽観性(Optimism):何事もポジティブに考える 
  4. 柔軟性(Flexibility):こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとる 
  5. 冒険心(Risk Taking):結果がわからなくても挑戦する 

これまでの学校教育や家庭教育の中で、多くの人は適応性をすでに持ち得ているのかもしれません。大切なのは、そこに可能性を与え続ける「狂人性」いいかえれば、計画的偶発性を起こす行動特性の注入なのかもしれません。

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狂人・・もっとストレートに言えば、バカになるパターン(発想のパターン)を掲げるならば、進化の系譜に習い次のようになります。

1)変量――極端な量を想像してみよう。
2)擬態――欲しい状況を真似てみよう。
3)欠失――標準装備を減らしてみよう。
4)増殖――常識よりも増やしてみよう。
5)転移――新しい場所を探してみよう。
6)交換――違う物に入れ替えてみよう。
7)分離――別々の要素に分けてみよう。
8)逆転――真逆の状況を考えてみよう。
9)融合――意外な物と組み合わせよう。

「創造」・・つまり疑似進化のための道具としての言葉です。これらを運用しながら、狂人性を身につける視点を得ることができます。

ヒトを理解するには!?

ヒトの進化を知ることは、私たち自身を理解し、ものごとをすすめるに当たり重要なファクターになります。

  • 二〇億年前から「お腹が空く」――真核生物になって以降の生物は、ミトコンドリアで養分をエネルギーに変えた。
  • 一二億年前から「モテたい」――有性生殖を獲得して以来の生物は、異性と交配して子孫を残すようになった。
  • 五億年前から「見え方を気にする」――眼が誕生して以来、魅力や危険などを視覚でコミュニケーションするようになった。
  • 三億九〇〇〇万年前から「硬いものも食べたい」――顎が発達し、硬いものも食べる対象になった。
  • 二億二五〇〇万年前から「子を大切に育てたい」――哺乳類になった後は、親密な親子関係による育児が生存のひとつの前提になった。

私たちの歴史を紐解くと、お金や経済の概念がいかに新しいのか、そして、不安定なものかということを理解することができるかもしれません。根源的な欲求はどこにあるのか、探してみても面白いのかもしれませんね。

なぜ働くのかという問いを主題に、ヒトの在り方について説いた1冊に関する投稿「【生きることへの解像度を上げるには!?】仕事の思想|田坂広志」もぜひご覧ください。

まずは狂おう。常識を疑って、現実を塗り替える変異の可能性を考えよう。

そして愛情をもって、時間と空間に宿る適応のなかの願いを引き受けよう。

それを繰り返し、創造の螺旋を登り、生き残るコンセプトに磨き上げよう。

コンセプトに宿る祈りを共有する仲間を見つけて、領域を超えて繋がろう。

その先に希望ある物語を描き、未来を具現化させ、世界に衝撃を与えよう。

第4章 コンセプト

まとめ

  • 「進化」とは何か!?――挑戦と適応です。
  • 何が、結果的に「進化」となるのか!?――まず、挑戦することに狂うことです。
  • ヒトを理解するには!?――私たちとは何者かを考えることもヒントになります。
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