【差別化も、ブランドも、競争優位になり得ない!?】経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営|中神康議

経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営
  • ビジネスで長期的な競争優位を築くには、何が必要でしょうか。
  • 実は、「差別化」も「ブランド」も、有効な手立てとは言いにくいかも・・
  • なぜなら、これらを構築するには莫大な資本投下が必要だからです。
  • 本書は、自身も経営コンサルとしてご活躍し、その後投資家としてさまざまな企業を支援する中神康議さんによる経営の本質を追求する1冊です。
  • 今回の投稿を通じて、いかに競争優位を構築するか、新しい視点を得ることができるでしょう。

本書は、経営者・従業員・株主がトレードオフではなく、トレードオン、つまりみなで豊かになる方策を示した本質的な経営書の1つです。内容が多岐にわたり、いずれの論点もとても大切だと思いました。ぜひ複数回にわたり投稿を作ってみようと思います。今回は、前回「【あなたのビジネスの事業性はすでに決まっている!?】経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営|中神康議」に続き、3回目の投稿です。今回は、「複利の経営」のためにどのように継続的に超過利潤を出し続けるのかについて考えてみましょう。

いかに競争優位(障壁)を築くのか!?2つの誤解とは!?

経営者の役割は、数々の経営資源、ヒト・モノ・カネや情報を調達して、インプット以上のアウトプットを獲得することです。多くの従業員の方々を雇用して、気持ちよく働いていただきながら、そして原材料を調達して付加価値を厚く加えるなかで、お客さんの満足度を高めていく行為とも言えます。

成果は、「超過利潤」という形で図られます。

超過利潤 = 資本生産性 - 資本コスト

「超過利潤」を出し初めて、経営者は仕事をしたと言える

継続的に超過利潤を出し続けるには、競合が利益を奪取しようと攻めてきても、一定守れるだけの障壁(競争優位)が必要となります。

この競争優位って、何でしょうか。

「差別化」?「ブランド」?をあげる場合も少なくないかと思います。たしかに、差別化も、ブランドも、競合が真似できないものでもあります。しかし、じつは、これらの競争優位は、莫大な資本投下の結果なりたっており、中長期的にみて作戦として効果的かというとそこまででもないというのが、中神康議さんが引用する米国コロンビア大学ブルース・グリーンウォルド教授の見立てです。

仮に競争相手より差別化できて高い価値を設定できたとしても、その裏にはたくさんの費用や投資、つまり「当貸本」がかかっているはずです。問題はその投下資本に対する「利回り」は十分に出せているのか、ということです。

「競争優位」のよくある誤解1――「差別化」など障壁にはならない

ブランドも同じことが言えます。

「投下資本に対してどれだけ利益を生んだか」を意識する「利回りの経営」からものを見る人は、

1)ブランドを作るためには相当の投下資本が必要で、
2)過去に相当の量で投下されてきた資本資本は、(会計上)現在のPL上からは見えなくなっている、
3)しかもブランドがお客さんに強く指示され、高い「利回り」を出す確率はそれほど高くない

と、見ます。

大きくなりがちな累積投下資本は、現在のPLが示すブランド利益だけを見ている人からは、見えないという落とし穴もあります。

「ブランド価値」と「ブランドの経済的価値」は異なるものだと認識するのが良いでしょう。「ブランド価値」とは顧客が、一定以上他の商品よりも高く支払うものであり、「ブランドの経済的価値」とは、投下資本に対する利回りです。

競争優位(障壁)を築くには!?

実は、競争優位は3つしかありません。

1)供給面でコスト優位に立てていますか?
2)需要面で顧客を囲い込めていますか?
3)その囲い込みと規模(1と2)を組み合わせられていますか?

この3つの問いに明快に答えられるかどうかが、唯一のポイントです。

供給面の障壁の目的は、競合には真似のできないような低コスト構造を作り込むことです。
一方で、
需要面の障壁の目的は、顧客は本当はイヤなのになぜかつい囲い込まれてしまう状態を作ることです。

供給面の障壁は、低原価(ただし、資源の独占は長続きしない)と、独占的な技術(内部開発した技術でないと障壁にならない)に分けられ、需要面の障壁は、習慣化(なぜか同じものを使い続けてしまう)、スイッチングコスト(他製品への切り替えが負担)、サーチコスト(ほかを探すのが面倒)に分けられます。

それ以外は障壁とは認めない、「利回り」を生み出すものではないのだ、というのが約20年間コンサルティングの現場で数多くの戦略を策定し、その後15年間は投資家として数多くの戦略を判定する側に回った、私なりの理解です。

「真の障壁」は3種類しかない

最強の障壁は、「規模の経済(低原価、独占的技術)と、(習慣化、スイッチングコスト、サーチコストといった)顧客の囲い込みの組み合わせ」という表現に集約されます。

大切な視点は、絶対評価で自社を見ないことです。競合との相対評価が重要だということ。また、顧客の囲い込みもセットで考える必要があるということを忘れなようにしましょう。

理想は、「小さな池の大きな魚」です。

大きな市場に打って出て血で血を洗う死闘を繰り広げている会社よりも、小さな池で悠々と泳いでいる魚のほうが、「みなで豊かになる経営」に、はるかに近い姿なのです。

理想は「小さな池の大きな魚」

戦略とは、障壁を作ること!?

戦略とは、障壁を築くことである。

戦略とは、障壁を築くことである

「戦略」とは、障壁によって超過利潤レベルの利回りを獲得し、障壁によってその利回りを長きにわたって防御する構想と捉えられます。

コツコツと築いてきた製品やプロセスのバリューチェーンをいったん脇においておき、客観視できるかどうかがポイントです。「いったいそれはどのような障壁になっているのかな?」と自らに問いかける姿勢・思考が必要です。

毎日関わる事業を「利回り創出」マシーンとして見たときに、不足することがないかどうか、点検していくことが、経営者に求められる視点です。

まとめ

  • いかに競争優位(障壁)を築くのか!?2つの誤解とは!?――差別化とブランドは、相当な投下資本がないと構築できないため、真に利回りに効果的ではないという見方があります。
  • 競争優位(障壁)を築くには!?――2つの視点「コスト優位」「顧客の囲い込み」とその組み合わせを意識しましょう。
  • 戦略とは、障壁を作ること!?――障壁によって超過利潤レベルの利回りを獲得し、障壁によってその利回りを長きにわたって防御する構想です。
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