【人類が命題とできうるパーパスとはなにか!?】「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>|フレッド・ライクヘルド,ダーシー・ダーネル,モーリーン・バーンズ,大越 一樹,髙木 啓晃

「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>
  • 人は何のために活動をするのでしょうか。もっと言えば、人生は何のためにあるのでしょうか。
  • その論点を考えることは、経営に直結します。
  • なぜなら、人生も経営も、よりよい社会を創造していくために存在しているからです。
  • 本書は、NPSに関する最新の研究本でありながら、生き方を一つのベクトルで規定する、実に素晴らしい1冊です。
  • 本書を通じて、これからの社会を生きる指針のヒントと勇気を得られるでしょう。
フレッド・ライクヘルド,ダーシー・ダーネル,モーリーン・バーンズ,大越 一樹,髙木 啓晃
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NPS経営企業 vs ビジョナリー・カンパニー!?

本書は、NPSとは「愛」であると説いている1冊です。「愛」というと「なんだかおおごと」のようですが、本質に変わりありません。どう、本質か、ということですが、「愛」とは人が生きる上で、経営をする上で、あるいはコミュニティを作り、共に生きる上でのエネルギーなのです。本書は、そういった意味では、単なるビジネス本の領域を超えて、ある種の宗教性をもち、現代人を導くようなそんな、バイブルのような存在だと思います。

NPS経営をする企業と、ビジョナリー・カンパニーのその後を、本書の中では比べています。ビジョナリー・カンパニーとは、かの名著『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で説かれた飛躍を遂げる条件を兼ね備えた企業のことです。

どのような条件かは、以下に記します。

  • 飛躍を導いた経営者は、派手さやカリスマ性とは縁遠い地味なしかも謙虚な人物だった。その一方で勝利への核心を持ち続ける不屈の意思を備えており、カエサルやパットン将軍というよりは、リンカーンやソクラテスに似た思索する経営者であった。
  • 飛躍を導いた経営者は、最初に優秀な人材を選び、その後に経営目標を定める。目標にあわせた人材を選ぶのではない。
  • 飛躍を導いた経営者は、自社が世界一になれる部分はどこか、経済的原動力は何か、そして情熱を持って取り組めるものは何かを深く考え、必要とあればそれまでの中核事業を切り捨てる判断さえ下す。
  • 劇的な改革や痛みを伴う大リストラに取り組む経営者は、ほぼ例外なく継続した飛躍を達成できない。飛躍を導いた経営者は、結果的に劇的な転換にみえる改革を、社内に規律を重視した文化を築きながら、じっくりと時間をかけて実行する。

正しい人々を正しいバスに乗せ、世界で自分が最も得意な分野に注力し、「はずみ車」を回す戦略を実行し、「社運をかけた大胆な目標(BHAG)」を追求し、「第5レベルのリーダー」になれ、という方針を掲げ、これは世界のMBAの基礎となっています。*「はずみ車」・・押し続けることで少しずつ回転が早くなり、やがて回転がスムーズになって企業は飛躍的に成長できるという主張。

しかし、ビジョナリー・カンパニーの累積総株主利益率(TSR)は、NPS経営企業のそれよりも劣っている結果となっています。ビジョナリー・カンパニーは、アメリカ上場企業の0.4倍、NPS経営企業は5.1倍です。

何が決定的に異なるのでしょうか。それが偉大なパーパス=「愛」にあると、著者であるフレッド・ライクヘルドさんらは、結論付けます。

私の結論は、読者のみなさんにはおわかりだろう。どんな企業も、偉大なパーパスを持たなければ偉大になれない。これに尽きる。

教訓

ちなみに、なぜビジョナリー・カンパニーが、浮上しなかったのかについては、次の投稿でレビューさせていただきたいと思います。ここには、あまりに無抵抗にならざるを得ない、現代の金融資本主義の影が見え隠れする、スリリングな見解があります。

ネット・プロモーター(顧客資本主義)宣言とは!?

これからは、「顧客資本主義」の時代であると、フレッド・ライクヘルドさんらは、言います。

人々が充実した、素晴らしい生活を遅れれば、世の中は良くなる。

第9章 謙虚であれ――ネット・プロモーター3.0と、その先へ

起点にあるのは、この考え方です。パーパスの根源的な命題には、より良い社会の追求が最大公約数的に存在するはずだ、という視点で、「顧客資本主義」をとらえてみましょう。

すると、不思議なことに、企業あるいはブランドと個人の境が溶けていく感覚に陥ります。

だが、個人的な推奨にはもっと深い意味がある。本質的には、これは友人や家族の生活をより良くするための「愛の行為」なのだ。

推奨の力

そして、法人も個人もない、その先に見つけられるのは、「愛」によってつながる、一人ひとりの人間です。そこには、人間しかなく、互いの利害関係や所属などの情報は、所与ではなく、結果として見出すことが可能となります。

少し長くなりますが、本書の中の最大のハイライトとおもいますので、引用させていただきます。

人々が充実した、素晴らしい生活を送れれば、世の中は良くなる。偉大な企業はその支援を行う存在であり、偉大なリーダーはそうしたコミュニティを構築し、維持する。すなわち、単に満足のいくサービスを提供するだけでなく、創造性にあふれた、思いやりのある、心のこもったサービスを通じて顧客に喜びを与え、顧客の生活を豊かにするサービスを提供する。その結果として、チームメンバー自身も意義と目的のある生活を送れるよう、彼らの背中を押す。

偉大なコミュニティを形作るのは人間関係であり、その基礎となるのは「自分の愛する人にしてもらいたいように他の人にしてあげなさい」、もっと純粋な言い方をすれば「己の如く、汝の隣人を愛せよ」という原則である。

この黄金律は、人間関係における最高水準の基準を確立する。企業がコミュニティのメンバー全員が従うべき方針や手順、文化、規則を作成し、黄金律に則った正しい行動を取れるようになると、ロイヤルティという言葉に値する人間関係の基盤ができあがる。企業が愛のある対応で顧客をもてなすことで、顧客ロイヤルティが向上する。それは、顧客が再び来店したり、友人たちを連れてきたり、より良い関係を築こうと貴重なフィードバックを提供したりといった行為に現れる。こうして、愛がロイヤルティを生み、それが持続的で利益ある成長の原動力となって、会社、チーム、チームメンバー一人ひとりに栄光への道を照らし出す。黄金律の基準を最も忠実に順守するコミュニティは、このシステムによって経済的繁栄を享受するのである。

第9章 謙虚であれ――ネット・プロモーター3.0と、その先へ

推奨(Promote)という言葉を日本人が聞くと、どうしても、差し出がましいことのように捉えられてしまうと思います。

でも、日本にだって相手のことを想う文化があると思います。たとえば、お歳暮やお中元などの贈り物の文化。これは、相手の無病息災や縁を祈って、継続して贈るものです。そして、その贈り物には、相手の生活がより良くなるものを選ぶはずです。

そうしてみると、贈与を中心とした切れない縁や、つながりのようなものを測りうる指標が、NPSであるともとらえられるのではないでしょうか。

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NPSとEGR!?

また、著者らは、今回EGRという新しい指標を見つけることができました。これは、1人の顧客が継続的に購入してくれる金額+紹介した友人らが購入してくれる金額を合算したものです。「プロモーター獲得成長率(Earned Growth Rate)」です。

これは既存顧客が再び来店したり、友人を連れてきたりして発生する収益の伸びを計測するものだ(なお、本書ではこのように顧客の推奨または紹介で顧客を獲得することを「プロモーター獲得成長」と表記する)。

「プロモーター獲得成長率」の発見

NPSの経済的効果を推し量ることが可能となります。ただし、課題もあります。この指標を数値化するには、会計基準をそれに最適化する必要があります。これを、著者らは「顧客会計」という印象的な言葉を使って表現します。

私たちが、本質的に「顧客資本主義」を掲げ、これを実践するには、いかにそれを図るのかから、検討しなくてはいけないのです。

また、次回の投稿でもレビューを続けてみます。よろしくお願いいたします。

「愛」については、こちらもおすすめです!「【私たちが生きる意味とは?】愛するということ|エーリッヒ・フロム」。私たちは、孤独の克服を目指しているという見解が大変ユニークで、新しい視点をいただけます。「愛」の本質を考えてみましょう。

まとめ

  • NPS経営企業 vs ビジョナリー・カンパニー!?――偉大なパーパスを有する企業でないと偉大にはなれないのです。
  • ネット・プロモーター(顧客資本主義)宣言とは!?――「愛」を中心に据え、社会や生活向上を目的とした経営の考えかたです。
  • NPSとEGR!?――「顧客会計」を導入することで、結果としての利益創造を正しく計測することができます。
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