- 努力しているのに結果が出ない人と、チャンスを次々と掴む人の違いは何だろう?
- 実は、両者を分けているのは「準備の質」なんです。
- なぜなら、運とは偶然やってくるものではなく、特定の準備をした人だけが掴めるものだから。
- 本書は、ID野球の提唱者・野村克也氏が、データ分析の先にある「運を引き寄せる力」の正体を明かした一冊です。
- 本書を通じて、準備とは知識やスキルを蓄えることではなく、目に見えない流れを感じ取る「感性」を磨くことだと気づかされます。
野村克也氏は、プロ野球史上屈指の名捕手であり、名監督です。
現役時代は南海ホークスで三冠王に輝き、戦後初の捕手として2000本安打を達成しました。
引退後は、ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を務め、特にヤクルトでは4度のリーグ優勝、3度の日本一に導いています。
「ID野球」という言葉で知られる通り、データを駆使した緻密な戦略で知られていますが、本書では数字では測れない「運」や「流れ」という目に見えない要素について語っています。
長年の野球人生で培った、人を見る目、状況を読む力、そして運を味方につける哲学が凝縮された内容になっています。
「正しい努力」だけが運を呼ぶ
努力すれば報われる――そう信じて頑張っているのに、なぜか結果が出ない。
そんな経験は誰にでもあるはずです。
野村さんは、この疑問に対して明確な答えを示しています。
それは「正しい努力」と「正しくない努力」があるということ。
同じように努力しているように見えても、結果が分かれるのは、努力の方向性が違うからなんです。
では「正しい努力」とは何か。
野村さんは、それを「理由をもって戦う」ことだと言います。
どの世界にも「同じような努力をしているのに、なぜかいい結果が出る人と、いい結果が出ない人がいるのはどうしてだろう」ということがあるはずだ。野球にもそういう例がたくさんある。その理由をよく検証してみると、「正しい努力かどうか」が結果を分けていることが多い。つまり、努力にも「正しい努力」と「正しくない努力」があって、正しい努力こそが、いい結果を生む。
多くの人は、目の前の作業をこなすことに必死になります。
技術を磨く、知識を増やす、時間を費やす。
でも野村さんが言う「正しい努力」は、それだけではありません。
「なぜこの練習をするのか」「この状況で求められているのは何か」「相手はどう動くか」――そうした理由や根拠を常に考えながら動くこと。
それが正しい努力の本質なんです。
野村さんが現役時代、鶴岡監督の下で野球をしたことで、プロとして必要な力を身につけたエピソードは示唆に深い内容です。
「教えないコーチが名コーチ」メジャーリーグには、そういう格言がある。なんでもかんでも手とり足とり教えても、選手の身につかない。自分で答えを見つけられる選手にするためには、あれこれと口にせず、自分で考えさせる必要がある。さきほど鶴岡監督は、「名コーチ」だった。私は長年、鶴岡監督の下で野球をしたことによって、プロとして必要な力を自分で身につけようと努力することができた。
鶴岡監督は「教えないコーチ」でした。
答えを与えるのではなく、選手自身に考えさせる。
野村さんは、この環境の中で「考える野球」を標榜し、「理をもって戦う」姿勢を確立していったんです。
準備というと、私たちはつい「何をするか」に焦点を当てがちです。
でも本当に大切なのは「なぜそれをするのか」という理由を持つこと。
理由を持たない努力は、ただの作業の繰り返しになってしまいます。
そして野村さんは、こうも言っています。
そういう運の根拠に気づき、原因を見極めることで、自ら運を呼び込むことができたとわかっていれば、そのプロセスを繰り返せば、また同じように運が味方して勝つということを再現できるだろうがないか。
運を呼ぶプロセスは再現できる。
それは運が偶然ではなく、ある種の法則性を持っているからです。
理由を考え、状況を見極め、そこから最適な行動を選ぶ。
この思考プロセスを繰り返すことで、運は自然とやってくるようになるんです。
「正しい努力」とは、目的なく頑張ることではありません。
状況を理解し、相手を見て、理由を持って動くこと。
そうした努力だけが、運を引き寄せる力になります。
目に見えない「流れ」を感じる力
準備の本質は、スキルや知識の蓄積だけではありません。
野村さんが重視するのは「感じる力」――つまり感性です。
これは数値化できない、目に見えない能力ですが、一流と二流を分ける決定的な違いになります。
野村さんは「感性」について、こう語っています。
純感な人は一生、流れをつかめない 感性とは、感じる力であり、大きく分けて感じ取れる人と何も感じ取れない人がいる。同じ場面に出くわしても、ちゃんと気づく人と何も気づかない人がいる。
同じ状況に置かれても、何かを感じ取れる人と、何も気づかない人がいる。
この違いが、運を掴める人と掴めない人を分けるんです。
野球の試合では「流れ」という言葉がよく使われます。
チームに勢いがある、相手にチャンスが巡ってきている――そうした目に見えない空気の変化。
これを感じ取れるかどうかが、勝負の分かれ目になります。
流れと運は「無形の力」 流れとは、目に見えないものだ。運もまた、目に見えないものだ。流れも運も、形として目に見えなくても、勝負の行方を左右してしまうほどの力がある。
流れは「無形の力」です。
データには表れないけれど、確実に勝負を左右する。
この無形の力を感じ取れる人だけが、適切なタイミングで動くことができます。
では、感性はどうすれば磨かれるのか。
野村さんは「まじめにやっていれば、見てくれる人は、ちゃんと見てくれるものなんだな」と語っています。
「まじめにやっていれば、見てくれる人は、ちゃんと見てくれるものなんだな。ありがたいことだ」 私は素直にそう感謝した 人間とは、人間と向き合って、その存在価値が決まる。
真摯に取り組んでいれば、誰かが必ず見ている。
そして、その評価が次のチャンスを運んでくる。
これは、感性が磨かれた人だけが気づける「運のメカニズム」なんです。
感性を持つ人は、小さな変化を見逃しません。
相手の表情、チームの空気、自分の体調――あらゆる情報から「今、何が起きているか」を察知します。
逆に鈍感な人は、どれだけ準備しても、チャンスが目の前に来ていることに気づけません。
野村さんは、こうも言っています。
感じる力がある人には、考える力も身につく。考える力は変化に対応できる力になる。どんな状況にも対応できる選手が感じる力を持っていれば、それがチームを成長させる力になる。
感じる力は、考える力に変わります。
そして考える力は、変化に対応する力になる。
感性とは、単なる直感ではなく、状況を読み解き、最適な判断を下すための土台なんです。
準備とは、知識を詰め込むことではありません。
目の前で起きている変化に気づき、その意味を読み解く感性を磨くこと。
それが、運を引き寄せる真の準備です。
運を呼ぶのは「人間観」
最後に、野村さんが語る運の本質は「人間観」に行き着きます。
どれだけスキルがあっても、どれだけ感性が鋭くても、人としての在り方が間違っていれば、運は巡ってきません。
野村さんは、こう語っています。
しっかりした「人生観」が運を招く 人生の流れや運というのは、実は、その人自身が選んだり支えたりしていることがたくさんある。人生のどこにいるのか。私は自分の人生を振り返るときにそう強く感じる。
運は、その人の人生観から生まれる。
自分がどういう人間でありたいか、何のために生きるのか――そうした根本的な問いが、運を左右するんです。
野村さんは、現役時代から引退後まで、一貫して「人のために動く」ことを大切にしてきました。
私は現役時代の後期、「それにも負けない勝競者になる」と決めてからは、自分がインタビューに答えるときには「さすが、プロ」と思われるコメントをするように心がけた。担当記者と雑談をするときでも、プロらしい話をしようと意識していた。
自分のためではなく、人のために――その姿勢が、周囲の評価を生み、次のチャンスを運んできます。
そして野村さんが最も重視するのが「人間教育」です。
「人の間と書いて人間と読む。人と人の間で生きていく。それが人間だ。人間はけっして自分一人だけでは生きていけない。人間である以上、人から嫌われるのではなく、人のために生きることを考えなければいけないんだ」
人は一人では生きていけない。
人のために動き、人から信頼される――そうした関係性の中でこそ、運は巡ってくるんです。
野村さんが指導者として成功したのも、この人間観が根底にあったから。
選手を技術で育てるだけでなく、人間として成長させることを最優先にした結果、チームに運が味方するようになりました。
周りの評価が運を広げる
この言葉が示すように、運とは孤立した個人には訪れません。
周囲から「この人なら」と思われる信頼、「この人と一緒に」と望まれる人間性――そうした評価が、目に見えない形で運を運んでくるんです。
さらに野村さんは、運と人格の関係をこう説明しています。
「運命は変えられるか? 運は自分で切り開けるものなのか? 私の答えはYESだ。それは、「人格が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」 私の好きな言葉である。
人格が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
そして人格が変われば、運命が変わる。
これは、運が自分自身の在り方から生まれることを示しています。
準備の最終到達点は、技術でも知識でもなく「人間性」なんです。
自分がどう生きるか、人にどう接するか、何を大切にするか――そうした日々の選択が積み重なって、運を引き寄せる力になります。
野村さんが教えてくれるのは、運を掴むための小手先のテクニックではありません。
人として、どう在るべきかという根本的な問いです。
その問いに真摯に向き合った人だけが、本当の意味で運を味方につけることができるんです。
運については、こちらの1冊「運は今もここにある!?『「運のいい人」の科学 強運をつかむ最高の習慣』ニック・トレントン」もぜひご覧ください。

まとめ
- 「正しい努力」だけが運を呼ぶ――努力には「正しい努力」と「正しくない努力」があり、理由を持って動く人だけが運を引き寄せることができる。準備とは作業をこなすことではなく、状況を理解し相手を見て最適な行動を選ぶ思考プロセスを磨くことです。
- 目に見えない「流れ」を感じる力――一流と二流を分けるのは感性であり、目に見えない変化を察知する力。感じる力が考える力に変わり、それが状況に応じた判断を可能にする。準備とは知識の蓄積ではなく、感性を研ぎ澄ますことです。
- 運を呼ぶのは「人間観」――運の本質は人としての在り方にあり、人のために動き信頼される人間性が運を引き寄せる。人格が習慣を変え、習慣が人格を変え、人格が運命を変える。準備の最終到達点は、自分がどう生きるかという根本的な問いに向き合うことです。
