- 人口減少時代、何が起こるでしょうか。
- 実は、秋田県を見つめるとヒントが見つかるかも。
- なぜなら、都道府県の中でもトップクラスで少子高齢化が進んでいるから。
- 本書は、日本の未来を感じるための1冊です。
- 本書を通じて、これからの社会のあり方について思いを馳せる機会を得られます。

人口減少の未来とは!?
秋田県のイメージ、どんなものがあるでしょうか!?果物?お米?新幹線?それともなまはげでしょうか?
実は、秋田は、今、人口減少に一番苦しんでいると言っても過言ではない都道府県なのです。
秋田県は人口減少率の高さで全国一。
順位 | 都道府県 | 高齢化率(65歳以上) | 合計特殊出生率 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1位 | 秋田県 | 39.1% | 1.32 | 高齢化率全国1位、出生率全国38位 |
2位 | 高知県 | 36.3% | 1.48 | 高齢化率全国2位、出生率全国20位 |
3位 | 徳島県 | 35.4% | 1.45 | 高齢化率全国3位、出生率全国24位 |
4位 | 山口県 | 35.4% | 1.50 | 高齢化率全国4位、出生率全国14位 |
5位 | 青森県 | 35.2% | 1.33 | 高齢化率全国5位、出生率全国36位 |
6位 | 山形県 | 35.2% | 1.41 | 高齢化率全国6位、出生率全国30位 |
7位 | 岩手県 | 35.0% | 1.33 | 高齢化率全国7位、出生率全国37位 |
8位 | 島根県 | 34.9% | 1.69 | 高齢化率全国8位、出生率全国2位 |
9位 | 長崎県 | 34.3% | 1.64 | 高齢化率全国9位、出生率全国4位 |
10位 | 大分県 | 34.2% | 1.57 | 高齢化率全国10位、出生率全国10位 |
若い人たちの多くは、より条件のよい仕事や結婚相手を求めて県外に出てしまって、そのまま地元に残る親や、祖父母の世代が主に、県民の生活を支えているという構造です。
多くの企業で、事業の後継者がいなかったり、今後、事業承継をしようとしてもその見通しすら立たないというところも少なくありません。
秋田では、後継者不在率が2023年に70.0%に達し、全国の都道府県の中で2番目に高かった。
こうした状態にあって、事業承継をなんとか前倒しで、進めないと、多くの企業が廃業し、地域の産業を支える基盤が失われる状況になりつつあります。
また、公共交通機関の老朽化や、運営者の高齢化も待ったなしです。バスやタクシーなどは、各地で人手不足が年々深刻化しているし、業界では、地元の高校生を卒業後もなんとか引き止めて、担い手に成ってもらおうと必死です。
また、自衛隊や県警も同じような状況で、若手の減少傾向が極めて顕著です。
頻繁に若い世代のリクルートに励んでいる状況で、「わざわざ関係者が自宅まで足を運んできて、勧誘される」というケースも少なくないそうです。
全国的に少子高齢化の傾向が続いていますが、秋田では、特に若い世代の県外への流出に待ったがかかっていません。
年齢別の人口移動状況をみてみると15~24歳の若年層の転出が突出しており、東京圏や仙台方面を中心とした大学などへの進学や就職がひとつのきっかけとなっているようです。
いったん県外で結婚や就職をすると、戻ってくることが難しい状況にあるものと推察しています。
人口減少が当面続くことは避けられず、労働力不足やそれに伴う県内生産の低下のほか、県内消費の減退、家族の高齢化進行による地域コミュニティ機能の低下など、さらなる減少が、人口減少をさらに招くスパイラルを成してしまうのです。
シルバー民主主義を超えて!?
実際に、秋田県は、東京よりも20年程度構造が進んでしまっている状況であると推察されます。
二〇年の国勢調査によると、全国平均や東京都では最多の世代人口は団塊ジュニアを含む四〇代だが、「継続的な若年層の流出の歴史から、秋田では六〇代人口が最多の世代人口で、東京より二〇年人口構造が高齢化しています」と指摘した。つまり秋田の人の価値観は、東京の人より二〇年古い、あるいは異なってしまっている可能性がある、ということだ。
こうした状況の中で、政治的な課題も出てきています。
とうのも、多数決制の中では、60代以上の意見が最優先される構造なので、いわゆる「シルバー民主主義」と言われるような状況が広がっています。
シルバー民主主義とは、高齢者の人口が増え、かつ投票率も高いため、政治が高齢者寄りの政策に偏りがちになる現象です。日本では特に地方において、高齢者が多数派を占める地域社会が広がっています。
秋田県や、上位ラインキングで上位の高知県、徳島県などの県は、高齢化率が35%~40%と極めて高く、選挙など民主的な意思決定の場では高齢層の意見が圧倒的に優勢になりやすい環境です。
これにより、若年層の生活向上や未来志向の投資(例:子育て支援、スタートアップ支援、インフラの長期整備など)が後回しにされるリスクがあります。
これらの状況によって、どうしても以下のような問題が紐づいて浮上してしまう可能性があります。
1.公共サービスのバランス崩壊
→ 医療・福祉など高齢者向け支出が増える一方で、教育・保育・若者支援は優先度が下がる。
2.地域経済の停滞
→ 高齢層の消費は生活必需品中心であり、経済のダイナミズムが低下する傾向。
3.構造改革の停滞
→ 既得権益の保持や現状維持志向が強まるため、
都市部と地方の格差拡大や、イノベーション推進の遅れが生まれやすい。
4.世代間の不公平感
→ 将来世代が背負う負担(財政赤字・社会保障費増)が増大し、若者の政治的無力感を強める。

情報発信も重要!?
もちろん秋田県でも、さまざまな施策が展開されて、今後の社会基盤維持・向上のために、多くの方がご尽力されているところです。
1. 移住・定住促進(Aターン支援)
秋田県では、県外からの移住・定住を促進するため、「Aターン就職」支援を行っています。
これは、秋田県出身者や秋田県にゆかりのある人々が、県内に戻って就職・定住することを支援する取り組みです。具体的には、就職相談や求人情報の提供、移住支援金の支給などが行われています。
2. 子育て支援の充実
秋田県では、子育て環境の充実を図るため、以下のような施策を実施しています。
- 保育料の軽減・無償化:保育料の軽減や無償化を進め、子育て世帯の経済的負担を軽減しています。
- 医療費助成の拡大:子どもの医療費助成を拡大し、安心して子育てができる環境を整備しています。
- 放課後児童クラブの整備:共働き世帯の増加に対応し、放課後児童クラブの整備を進めています。
- 子育て世代包括支援センターの設置:妊娠・出産・子育てに関する相談や支援を一体的に行うセンターを設置しています。
これらの施策により、子育て世帯が安心して子どもを育てられる環境づくりが進められています。
3. 結婚支援の強化
秋田県では、結婚を希望する人々を支援するため、「あきた結婚支援センター」を設置しています。このセンターでは、結婚を希望する独身男女の出会いの場を提供し、成婚に向けた支援を行っています。
また、結婚支援イベントの開催や、結婚に関する情報提供も行われています。
4. 地域コミュニティの活性化
人口減少と高齢化が進む中で、地域コミュニティの機能低下が懸念されています。秋田県では、地域の支え合い体制の整備や、多様な主体の連携を促進し、地域社会の自立・活性化を図っています。具体的には、地域住民が主体となって地域課題の解決に取り組む「地域力創造戦略」を推進しています。
また、これらの施策展開と当時に望まれるのが、情報発信に関する課題です。
本書『ルポ 人が減る社会で起こること 秋田「少子高齢課題県」はいま』の著者である、工藤哲さんは、地方取材の発信自体が縮小・減少していることを指摘します。
工藤哲さんは、ジャーナリストとして秋田を長年取材されてきた方です。そうした中で、昨今のジャーナリズムの変化を説きます。
新聞発行部数の減少や組織の効率化に応じて、地方の報道に携わる人々が年々減少するに伴って、地方での出来事を取材発信する量も減ってきているのです。
その結果、それぞれの地方で起きていることが以前よりも他の地域に伝わりづらくなり、全国的な問題提起の機会が減少している現状を懸念する声もある。
秋田の課題は、必ず日本が直面する課題でもあると言われています。よって、今のうちから、秋田という未来をひとりでも多くの人が知り、どのように対策を行っていくべきなのかを検討してみることが、重要なのかもしれません。
まとめ
- 人口減少の未来とは!?――秋田を見つめることで、解像度を上げることができそうです。
- シルバー民主主義を超えて!?――多数決の課題を超えつつ、未来を創造していく必要があります。
- 情報発信も重要!?――課題をひとりでも多くの人が考えるきっかけを作ることも大切です。
