- なぜ私たちは、日々の選択に悩み、他人と自分を比べて苦しむのでしょうか?
- 実は、その苦しみの多くは「すべてを自分でコントロールしなければならない」という思い込みから生まれています。
- なぜなら、私たちは教育や社会システムを通じて、個人の努力と責任を過度に重視する価値観を植え付けられてきたからです。
- 本書は、そんな現代人が抱える根深い問題に対して、まったく新しい視点を提供してくれます。
- 本書を通じて、自分の人生が大きな循環の中にあることを受け入れ、比較や競争から自由になり、今この瞬間を大切にする生き方を学ぶことができるのです。
小林正観さんは、心学研究家として数多くの著書を残し、講演活動を通じて多くの人々に「心の在り方」について伝え続けた方です。
正観さんの教えの根底にあるのは、私たちが普段当たり前だと思っていることへの感謝と、物事をありのままに受け入れる姿勢でした。彼は「比べない、競わない、争わない」という3つの基本姿勢を提唱し、現代社会で生きる私たちに新しい視点を提供してくれました。
特に印象深いのは、正観さん自身が実践者だったということです。理論だけではなく、日常生活の中で実際にこれらの考え方を体現し、その結果として得られた気づきや洞察を、温かくユーモアを交えて伝えてくれる方でした。
人生はすべて自分が書いたシナリオ
この本を読んで最も深く印象に残ったのは、「人生は自分が書いたシナリオ通りに進んでいる」という考え方です。
「あなたがそうするのは自分が生まれる前に、両親を選び、環境を選び、今の自分の性格を選んだその延長線上に、勉強して志望の大学に入るというルートをもう既にプログラムしてきているからなんです」
この視点に立つと、日々の選択や迷いに対する見方が根本的に変わってきます。
たとえば転職で悩んでいるとき、「どちらが正解なのか」と必死に考えるのではなく、「どちらを選んでも、それは自分が既に決めていた道なんだ」と思えるようになります。
これは決して運命論や諦めを意味するわけではありません。むしろ、どんな選択をしても「間違い」はないという安心感を与えてくれる考え方なんです。
私たちはつい、人生の分岐点で「正しい選択をしなければ」というプレッシャーを感じがちです。でも正観さんの視点では、そもそも「間違った選択」というものが存在しない。すべては自分が体験したくて選んだ道だということになります。
この考え方を受け入れると、人生がずっと楽になります。選択に迷ったときも、「どちらを選んでも、きっと意味がある体験ができる」と思えるようになるんです。
「比べること」からの解放
正観さんが一貫して伝えているのは、他人との比較が不幸の根源だということです。
「『比べること』『競うこと』『争うこと』『戦うこと』を、私たちは”教育”の名のもとで教え込まれてきました。『比べること』『競うこと』をやめるだけで『幸せ』になる人はたくさんいます」
この言葉を読んだとき、ハッとしました。確かに私たちは子どもの頃から、テストの点数で比較され、運動会で順位をつけられ、受験で競争することを教えられてきました。
そしてそれは大人になっても続いています。
年収、役職、住んでいる場所、結婚相手、子どもの成績……比較する材料は無限にあります。
でも正観さんは言います。
「もともと宇宙には『成功・失敗』も『勝ち・負け』も存在しません。『成功』の概念が存在しないのだから、『成功哲学』というものもないでしょう」
この視点は本当に革命的だと思います。成功や失敗という概念自体が、比較から生まれた幻想だということなんです。
実際に比較をやめてみると分かりますが、心がとても軽くなります。
隣の人が昇進しても、友人が結婚しても、「その人にはその人の道がある。私には私の道がある」と思えるようになります。
比較をやめることは、自分の人生を自分のペースで歩むということでもあります。他人の人生を羨むのではなく、自分の人生を大切にするということなんです。
「念を入れて生きる」という生き方と「頑張らない」智慧
この本でもう1つ印象的だったのは、「念を入れて生きる」という考え方です。
「それは、『念を入れて生きる』ということです。『念』という文字を分解すると、『今』の『心』と書いてあります。『今』の『心』とは、今、目の前にいる人を大事にし、今、目の前のことを大事にすること、それだけです」
「念」という漢字の成り立ちから、こんなにも深い意味を読み取る正観さんの洞察力には驚かされます。
「なぜならば『念』という言葉には、未来という概念はまったく入っていません。『念』というのは、ただ『今』だけなんです。〈今の心〉としか書いてませんね」
私たちはつい未来のことを心配したり、過去のことを後悔したりしがちです。でも正観さんは、本当に大切なのは「今この瞬間」だけだと教えてくれます。
そして、この「今を大切にする」生き方は、「頑張らない」という智慧とも深く結びついています。
「長女は、頑張らないんです。ただ、取られたら取られたままで、次に自分は『何を持って来ようか』と考えるだけ。取られたことについて、不機嫌になってもいない。ニコニコして遊んでいるだけなのです」
この言葉は本当に目からウロコでした。私たちは「頑張ること」が美徳だと教えられてきました。でも正観さんは、頑張らずに自然体でいることの価値を教えてくれます。
「無敵というのは、敵を全部なぎ倒したら無敵なのか……いいえ、”敵が無い”ことが無敵なのです」
これは単なる精神論ではありません。実際に「今、目の前にいる人を大切にする」「今、目の前にあることに集中する」「頑張りすぎずに自然体でいる」ということを実践してみると、人生の質が格段に上がることが実感できます。
たとえば家族と食事をしているとき、スマホを見ずに会話に集中する。仕事で思うようにいかないことがあっても、「取られたら取られたまま」の心境で次の手を考える。そんな小さな実践の積み重ねが、充実した人生を作っていくんです。
小林正観さんの『人に優しく、自分に甘く』は、現代社会で生きる私たちに必要な視点の転換を教えてくれる一冊です。
人生はすべて自分が選んだシナリオだという考え方は、選択への不安を和らげてくれます。でもそれ以上に重要なのは、自分の人生が大きな循環の中にあるという世界観を意識的に受け入れることです。
比較することをやめることで、本当の意味での自分らしさを見つけることができます。これは単なる心がけではなく、教育や社会システムによって植え付けられた価値観から意識的に自由になることを意味します。
そして今この瞬間を大切にし、頑張りすぎないことで、毎日を豊かに過ごすことができるようになります。
この本の最大の価値は、目には見えない世界観があることの前提に立つことで、自分をより正しく、より素直に認識する道筋を示してくれることです。現代社会では、こうした見えない循環や流れを信じることは軽視されがちですが、だからこそ意識的に受け入れることが必要なんです。
正観さんの教えは、特別な修行や訓練を必要としません。
日常生活の中で、少しずつ実践していけるものばかりです。ただし、それは意識的な選択を伴います。
読み終わった後、きっと肩の力が抜けて、もっと楽に生きていいんだということを実感できるはずです。人生に疲れを感じている人、他人との比較に悩んでいる人、将来への不安を抱えている人にとって、この本は心の支えとなってくれることでしょう。
そして何より、この本は私たちに「見えない世界を信じる勇気」を与えてくれます。その勇気こそが、本当の意味で自由に生きるための第一歩なのかもしれません。
自分に優しくすることについては、こちらの1冊「心を“孤立させない”には!?『自分にやさしくする生き方』伊藤絵美」もぜひご覧ください。

まとめ
- 人生はすべて自分が書いたシナリオ――生まれる前のことを想定してみると、新しい角度で人生を見つめることが可能になります。
- 「比べること」からの解放――自分にブレずにものごとを見つめていくには、比べない、自分を持つということが重要です。
- 「念を入れて生きる」という生き方と「頑張らない」智慧――自然体に生きるということ、頑張らないということが重要です。
