- どうしたら安心して、自分に集中することができるでしょうか。
- 実は、まず、自分を大切にしてみるということが、案外重要かも。
- なぜなら、自分は意識しないと見えないからです。
- 本書は、自分に優しくするという生き方に関するヒントです。
- 本書を通じて、自分自身に対するイメージや意識を改めることができます。

私たちは、自分に厳しい?
私たちは、想像以上に自分自身に対して、厳しすぎるかもしれません。
著者・伊藤絵美さんは、公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士として、クライアントのお一人お一人と対話をする経験から、あまりに苦しんでいる人は、「自分自身に対して厳しい」ということを共通して見出されたと言います。
苦しむ人は次のような口癖を同じように語るそうです。
- 自分はだめだ。
- 自分を信じられない。
- 自分が嫌い。
- 自分が何をやってもうまくいかない。
- 自分には価値がない。
「自分に甘すぎる」というレッテルを貼ることで、ますます自分に厳しくしているとしか言いようがありません。
そんな方々でも、自分自身に対するマインドセットをチューニングするだけで、「自分にやさしく」することができるようになると言います。
その結果、自分のほんとうの姿を認めて、無理のない人生を送っていくための行動をすることができるようになります。
なぜに、このように自分自身に厳しくなってしまうのか。
それは、社会のメッセージが大きな要因になっているでしょう。
- 自分を磨かないといけない。
- 自分を高めて、貢献領域を増やしていかないといけない。
- より勉強して、よりよい環境を作らないといけない。
- などなど
これらのことは、とても重要なマインドセットです。
でも、これらは、内発的に見出されるのであって、他者(社会)によって焚き付けられるものではありません。
自分に厳しいことをよしとする社会があって、その社会から「自分に厳しくあれ」というメッセージを受けて育って、そういう社会で暮らしているのですから、私たちが自分に対して厳しいのはある意味当然のことです。
キーは、これに気づき、この状態からいち早く抜けることです。
生きることはストレス!?
心の根っこを見つめることで、自分が何に縛られているのかを知ることが重要です。
これを、「スキーマ療法」と言います。「スキーマ」とは、根っこのことです。ネガティブに自分を縛っている根っこからの解放を目指す、アプローチです。
このアプローチで大切にするのは、「内なるチャイルド」と呼ばれる、私たちのなかに、誰もが、確実に持っている、子どもの側面です。
子どもみたいに無邪気に、本音で、心から何かを思っている人格を認めることで、その人格に蓋をするのではなく、どうしたらうまく付き合っていけるのかを考えることができるようになります。
自分の本当の声を聞くことが重要であるということですね。
自分の本当の声を聞いて、その声に従って生きることによって、「自分自身を信じる気持ち」を高めていくことができるようになります。
その結果生み出されるのが、「セルフ・コンパッション」です。
セルフ・コンパッションを日本語で平たく言えば、「自分への思いやり」ということになります。
生きるということは、ストレスの中でそれに対処していくことの連続です。
生きるということは、絶えず変化する外的な環境の中で、バイオレベルで自分自身を維持しなくてはいけませんし、あるいは、社会的には、絶えず変化を受け入れながら、成長していくことも必要でしょう。
ただでさえストレスがかかるものです。
まず、重要なのは、そのストレスの存在に気づくことです。
小さいからと言って無視するのではなく、そのストレッサーを言語化してみたり、あるいは、メモに取ってみたりして、自覚してみるのです。
すると「外在化」の効果により、「頭や心や身体の内側の情報を外に出す」ことになり、自分自身で、取り扱うことができるようになります。
この外在化は、心理学的に非常に望ましい行為です。
自分が何によって苦しんでいるのか、自分の「内なる声」を聞くのに邪魔をしている外的な変化や圧力は何かを知ることで、それと向き合うことができるようになるからです。

孤立させない!?
ストレスに気づいたり、その過程で、自分の本当の声、つまり「内なるチャイルド」の声に気づいたときには、まず自分を褒めてあげることです。
- よく気づけた!
- そうなんだ、そういう反応をしてしまっていたんだ!
- そういうふうに考えが見えてきたのはすごい!
みたいな感じで、まず、自分自身を褒めてあげる。
すると、自分に対する向き合い方が変わってきます。ひたすらに厳しくするのではなく、自分の本音を大切にしながら、その心の反応を助長させていくことができるようになるのです。
1)ストレスに気づく。
2)セルフモニタリングを経て、自分に客観的になる。
3)それに気づくことができた自分を褒める。
この繰り返しをしていくことで、自分にやさしい自分を作っていく基礎が固まっていきます。
「自分にやさしい生き方」の第一歩は、自分のストレスに気づきを向けるセルフモニタリング、そしてそれを書き出す「外部化」であることをと理解いただき、実際にやってみてください。そしてそれができた自分を褒めてください。
とても具体的にセルフモニタリングのイメージを一緒に育んでみましょう。
例えば、朝外に出て寒かったとします。「あ、外が寒いな!これってストレッサーだ!」と気づいてみる。
あるいは、「あ、信号が赤になっちゃった!急いでいるのに、これってストレッサーだ!」と思ってみる。
こうした小さなストレスに気づいて、気付いた自分を褒めてあげるのです。
そして徐々に気づく対象を広げていくことも検討してみましょう。
ストレス以外もセルフモニタリングしてみよう。
外を歩いている時、爽やかな風が吹いたら、「ああ、さわやかな風だなぁ、きもちがいいなぁ」とか、
久しぶりに甘いものを食べて、「自分が大好きなケーキを食べて、うっとりしているなぁ」とか。
そういう自分が何を感じて、何を思ったのかをよく把握していくと、自分自身に客観的なマインドセットをさらに育てていくことができるようになるのです。
こうしてセルフモニタリングを経て、自分自身との対話をすることができるようになります。
それは、「内なるチャイルド」との対話です。
そこでは、「内なるチャイルド」をあるがままを認め、ハグしてあげるような対話になります。
そういう気持ちが出てくるのは当然だと思うし、よくわかるよ。そういう気持ちを私に教えてくれてありがとう。
そんな心持ちを大切に、自分の本音を取り上げてあげましょう。
イギリスで二〇一八年に「孤独担当大臣」が新設されたことが世界的に話題になりました。それは、孤独がさまざまな健康問題や社会問題を生み出し、人びとや社会の幸福を蝕んでいるという研究結果に基づき、孤独は国を挙げて取り組むべき社会問題である、という問題意識によって新設されました。日本でも、二〇二一年に「孤独・孤立対策担当大臣」が新たに設けられました(二〇二四年に廃止となりましたが、内閣府はその後も「孤独・孤立対策推進室」を設けて対策を続けています)。世界中で、孤独や孤立は放置してはならない社会問題であるとの認識が広まりつつあります。
1970年代以降のさまざまな研究から、ソーシャルサポートが少ないことが(つまり孤立していることが)、心身の健康面(うつ病、血圧、結核、アルコール依存症、低出生体重など)に大きな影響を与えることが見出されていると言います。
これはメタファーなのかもしれないのですが、でも確かなこと、それは孤立こそ、人にとっての最強のストレッサーなのではないか、ということです。
心を一人ぼっちにするのが、実は最強のストレスなんですね。
心を大切に、寄り添ってあげる。そして、自分の心はまず自分自身が寄り添うことをまず大切にすることを忘れずに生きたいものです。
セルフモニタリング、セルフコンパッション、そうした習慣を進めていく中で、自分一人ではないということに気づいてみることも大切です。
みんな、ストレスに晒されて、それでも生きているのです。
さらに言ってしまえば、生きて、老いて、病んで、死ぬこと。この世に人間として生まれてしまったこと。すべてが「共通の人間性」なのです。
この視点に経つとき、私たちは自分にも、他者にも、同じように優しくして、そして、互いにケアをしながら、よりよい状況を作っていけることができるようになるのではないでしょうか。
苦しいときこそ、あるいは、楽しいときにも、「この苦しみや楽しさというのは人類共通のもので、自分だけのものじゃない、だから、人とともにあることが重要なのかもしれない」ということを思ってみたほうが、その場のマインドフルネスを立ち上げていくためには、健全なのだと思います。
マインドフルネスを考えてみるには、こちらの1冊「自分を知るには!?『マインドフルネスこそ最強のクスリ』山下あきこ」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。

まとめ
- 私たちは、自分に厳しい?――厳しすぎると、当たり前ですが、きついです。
- 生きることはストレス!?――つきもののストレスをないことにしないことです。
- 孤立させない!?――心を孤立させないことこそが、とても重要です。
