私たちがもつ本当の力とは何なのか!?『一生の仕事が見つかるディズニーの教え』大住力

私たちがもつ本当の力とは何なのか!?『一生の仕事が見つかるディズニーの教え』大住力
  • どうしたら、自分が自分として力強く生きることができるでしょうか。
  • 実は、自分の中にある生きる力を見つめ、そして、退化せぬよう引き出し続けることかもしれません。
  • なぜなら、これは、使わないと衰えていく力だから。
  • 本書は、そんな人が本来持ちうる「底力(ソコリキ)」に関する1冊です。
  • 本書を通じて、どのような関係性の中から、そのソコリキが見出されるのかを知り、今後の人生を前に進めていくヒントを得ます。

支援ではなく、応援!?

大住力(おおすみ・ちから)さんは、大学卒業後、株式会社オリエンタルランドに入社。約20年にわたり、人材教育や東京ディズニーシー、イクスピアリといったプロジェクトの立ち上げ・運営・マネジメントに携わってきました。2010年に退職後は、難病の子どもとその家族を支援する公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」を設立し、代表として活動。米国「ギブキッズザワールド」の日本唯一の運営団体としても知られています。

また、大手企業や中小企業、学校・病院などを対象に、ディズニーメソッドを活用したマネジメント・ホスピタリティ研修を展開。刑務所での矯正教育にも取り組むなど、多様なフィールドで「人が本来持つ力=ソコリキ」を引き出す活動を行っています。2018年からは、日野原重明氏の「いのちの授業」を継承し、全国の小学校での命の教育にも力を注いでいます。

そんな大住さんの代表的著者がこちらの1冊『一生の仕事が見つかるディズニーの教え』です。本書は、大住さんが体感されたディズニーの魅力を超えて、どのような経緯で、独立し、そしてソーシャルアクティビストに向かって行ったのか、事細かに描かれています。

それはまるで、理想に向かって突き進む姿でもあり、あるいは、もがきながらも、新しいことを開拓して光とされている挑戦の記録のようでもあります。

本書を通じて、大住さんと大住さんが立ち上げられた団体、そして、そこに参加される人々の関係性を知り、そして、私たちが何をもって生きていると言えるのか、そして、そもそも生きる力とは何かについて、気づくヒントをたくさんいただくことができます。

大住さんの活動をまず俯瞰してみましょう。
──営利と非営利、それぞれのフィールドで「人の可能性」を拓く

【営利活動】

人と組織の“ソコリキ”を引き出す支援者として

現在、大住さんは、企業・医療機関・教育機関など多様な組織に対して、人材育成やホスピタリティ、マネジメントに関する研修・講演・コンサルティングを展開しています。その中心にあるのが「ソコリキ(底力)」というキーワード。

これは、人が本来もっている内なる力に名前を与え、関係性や環境の中で引き出していくという考え方です。

単なるノウハウ提供にとどまらず、「人と組織の可能性」に丁寧に向き合い、対話を通じて現場に変化をもたらしていくスタイルが評価されています。

【非営利活動】

「大丈夫、ひとりじゃない」と実感できる社会のために

一方で、非営利の分野では、公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」の代表として活動しています。
この団体は、難病の子どもとその家族が笑顔になれる体験を届けるために、アメリカの「ギブキッズザワールド」と連携し、夢の時間を日本でも実現することを目指しています。

ただ「楽しみ」を提供するのではなく、家族が共に希望を持てるような「物語の時間」をつくることに重きが置かれています。
活動の根底には、ディズニー時代に培った“心に残る体験”の力が流れています。

また、日野原重明氏の「いのちの授業」の志を継ぎ、小学校での命の教育にも取り組み続けています。

営利・非営利という区分を超えて共通しているのは、
人の価値を信じること、そしてそれを引き出す関係性をつくること。

大住力さんの現在の活動は、まさにその一点に集中しています。

そして、何より注目すべきは──
これらの営利・非営利の活動が、単に“両立”されているのではなく、相乗効果を生みながら循環しているという点です。

たとえば、営利領域で展開している「ソコリキ」研修や講演は、組織や個人の内側にある可能性を引き出す手法として、多くの企業や教育機関から支持を得ています。この営利活動から得られる収益やネットワークが、公益社団法人の非営利活動──つまり、難病の子どもと家族に「夢の時間」を届ける取り組みの持続可能性を支えているのです。

日本においては、米国のような寄付文化や税制上の優遇制度がまだ十分に整っているとは言えません。アメリカではNPOを支える社会的土台が広く存在し、寄付やボランティアを通じた非営利支援が自然な行為として根づいています。しかし、日本ではその構造が弱いため、「志」だけでは非営利活動が継続できない現実があります。

この課題に対して、大住さんが示しているのは──
営利と非営利の分断を超えて、それぞれのリソースと学びを“編み直す”という戦略的なスタイルです。

営利の場で蓄積された信頼・知見・収益を、非営利の現場で真に支援を必要とする人々のために活かす。そして非営利の現場で得られた“本質的な人間の力”への実感が、営利の活動にもフィードバックされていく。この往還の構造が、大住さんの活動の根底にはあります。

それは言い換えれば、「人の力を信じる」という一点を軸に、
異なる領域を“つなぐこと”によってイノベーションを起こすという、新しい社会的アプローチでもあります。

単なるCSRでも、ビジネスでも、福祉活動でもない。
営利×非営利のハイブリッドが生む、継続可能な「人間中心の仕組み」

その構想力と実践力こそが、大住力さんの真骨頂だと言えるのではないでしょうか。

僕は、「支援」なんてできないと思っている。

こうした営利と非営利の活動が、矛盾なく共鳴し、相乗効果を生んでいるのは、
大住さん自身が「支援とは何か?」を深く見つめ直してきた人だからにほかなりません。

画像にあるように、大住さんはこう語っています。

「僕は、“支援”なんてできないと思っている。病気を治すことはできないし、生活を支えてあげることもできない。できるのはせいぜい、『応援』だ」

支援するのではなく、「そばにいること」「ともに感じ、言葉をかけること」──そこに本質があるのだと、明確に捉えています。

だからこそ彼は、病気の子どもに「君はひとりじゃないよ」と伝え、家族には「みんながついてますよ」と声をかける。それは人としての対等な立場からのまなざしです。

ここに、大住さんの立ち位置がはっきりと表れています。
つまり──
大住さんは、「支援者」ではなく、限りなく「応援者」なのです。

相手を“助ける”のではなく、相手の内なる力を信じて、“寄り添い、信じ、共に進む”という姿勢。
その在り方が、営利でも非営利でも、自然体で一貫しているからこそ、活動が分断されることなく、むしろお互いを補い合いながら、力を強めているのです。

また、別の箇所ではこう述べられています。

「自分だけの『役割』を見つけ、行動に移すための第一歩を踏み出すことができたら、僕らもいいことの一つなのではある」

ここにも、相手の主体性を信じる応援者の視点が通底しています。
誰かを“変える”のではなく、自らが動き出す“きっかけ”をそっと差し出すような立ち位置。
まさに、変化の伴走者とも言える姿です。

だからこそ、大住さんの複数の活動は“方法論”ではなく、関係性の哲学として結びつき、
そして今も、多くの人の“ソコリキ”を静かに引き出し続けているのだと思います。

ソコリキとは!?

ディズニーには「Duty(義務)」と「Mission(使命)」という2つの概念があります。
Dutyは職務上の責任を果たすこと。

一方、Missionは“自分は何のためにここにいるのか”という、人間としての意味づけに関わる問いです。

大住さんが問いかけ続けているのは、まさに後者──Mission=役割です。
それは役職や立場ではなく、「あなたがこの世界にいる意味は何か?」という問い。

そして、重要なのはこのMissionが誰にでもあるということ。

たとえ難病を抱えた子どもであっても、その子がいること自体に、かけがえのない「意味」がある。これは揺るがない事実です。

「病気と闘う子どもと、それを支える家族。彼らには、当たり前だが、自分たちの役割がある」
「“難病の子ども”というだけで、すごくかわいそうな存在、とみなそうとする人がいる。……でも、それは大きな間違いだ」

難病の子どもたちは、“かわいそうな存在”ではなく、
「本当に大切なもの」に気づかせてくれる、社会にとって意味ある存在

実際に彼らとふれあうことで、大人たちもまた、自分の役割や使命に気づかされる。
誰かの「ソコリキ」を引き出す存在であると同時に、すでに誰かの力になっているのです。

この考え方こそ、大住さんが営利・非営利を問わず、一貫して大切にしている世界観です。
人にはみな、何かの役割=ミッションがある。
だからこそ、「誰もが力を持っている」と信じて応援できる。

それはまさに、ディズニーで培った「Mission思考」が、
人間社会の本質にまで拡張された形なのかもしれません。

使命を持って生きること。

それは特別な人だけに与えられたものではなく、
どんな状況にあっても、自分の中に宿る役割を見つけ、果たしていくこと。

そしてその先にこそ、本当の意味での「希望」がある──
大住力さんの歩みは、そう語りかけてくるようです。

私は、この考え方に触れて、想います。

それは、一人ひとりがもっと貪欲に、「自分の意味」を感じ、考え、捉えてもいいのではないかということ。

なぜ今ここにいるのか、存在するのか、何ができるのか。
それは、特別な仕事や肩書を持っている人にだけ与えられる問いではありません。

むしろ、日常の中で「ふと手を差し伸べたくなる瞬間」や、「誰かの笑顔を見て嬉しくなる感情」のなかに、
その人だけの役割=ミッションがすでに表れているのかもしれません。

たとえ何者でもなく感じるときでさえ、
誰かのそばにいること、ただ話を聞くこと、気づきを共有すること。
それ自体が誰かの“力”になっている。
それを見過ごさず、自分の中にある意味をすくい上げる視点が大切なのだと思います。

だからこそ、本書に描かれる「一生の仕事」とは、
ある特定の職業や成果のことではなく、
自分にしか担えない“誰かのための存在理由”を見出していく営みなのではないでしょうか。

役割は与えられるものではなく、見つけ、形づくっていくもの。
それに気づいた人から、人生は少しずつ変わっていく。

役割は更新し続けられる!?

大住さんは、これまでの人生の中で、幾度となく「自分の非力さ」を痛感してきたと言います。

病気を治すことはできない。
生活を根本的に支えることもできない。
それでも、そばにいること、声をかけること、寄り添うことはできる──。

引用の中でも、彼はこう語っています。

「僕が覚悟できたのは、自分の『非力さ』に気づいたからだ」

非力さに向き合うことで、人は傲らず、他者の力に気づく目を持てる
そしてその目で見るからこそ、自分の“役割”もまた、関係性のなかで編み直されていく

仕事は、「お客さまに作られるものだ」
「自分たちはゲストに育てられ、成長させてもらっていたのだ」──

この言葉は、働くことの意味を根本から見つめ直す問いかけでもあります。
誰かの役に立っているようで、実は自分が育てられている。
人と人の間にこそ、“ほんとうの力”が宿る。

だからこそ、ディズニーランドという空間には「フェイストゥフェイスのコミュニケーション」を絶やさないという哲学があり、大住さんはその延長線上に、難病の子どもや家族との応援的関係を重ねているのです。

人は、本気の姿に感動する。
そして本気は、非力さを知るところから始まる。

その姿勢に学ぶことは、
どんな肩書きよりも深く、自らの「一生の仕事」を問い直す手がかりになるのではないでしょうか。

結局のところ──
非力に気づくことが、新しい自分に生まれ変わる最初の一歩なのだと思います。

自分は万能ではない。
誰かを救う力も、すべてを解決する力も持ち合わせていない。
その事実を素直に受け入れられるとき、人はようやく他者とフラットにつながることができるのではないでしょうか。

そこには上下も優劣もなく、「ともに在る」関係性がある。
お互いの言葉に耳を傾け、目線を合わせ、呼吸をそろえながら進む。

そのような関係性のなかでこそ、
人は“ソコリキ”──自分の底に眠る力と、相手の中にある可能性に出会っていくのです。

「一生の仕事」とは、何か特別な能力を発揮することではなく、
非力な自分を抱えたまま、他者と響き合い、支え合いながら、
ともに意味をつくっていく営みなのかもしれません。

本書は、そのことを教えてくれる、静かで力強い1冊です。

まとめ

  • 支援ではなく、応援!?――自らの「非力」を知るからこそ、フラットな応援者として懸命に生き、そしてそのことで他者とつながることができます。
  • ソコリキとは!?――「本当に大切なもの」を見極め、知り、感じ、他者と共にそれを向上できる関係にあり、そのことがよりよい社会を創る力になるものです。
  • 役割は更新し続けられる!?――他者とのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの中で、「本当に大切なこと」に触れ続けることが、新しい自分との出会いになります。
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