- 変化の時代を乗りこなしていくためには、どのような観点が必要でしょうか。
- 実は、自らがそれ以上に変化をしていくことかもしれません。
- なぜなら、成長とはそうした外の変化を取り込みながら、さらに自分が変わっていくことだからです。
- 本書は、そんな変化をしていくためのマインドセットを鍛えるための1冊です。
- 本書を通じて、最強の生存戦略を身につけるための視点を得ることができます。

変わることが前提?
実は、私たちの人生は、そんなに安定したものではないのです。
というのも、大人は、人生を揺るがすできごとを、平均すると36回も体験するそうです。これは、なんと「18ヶ月」に1回という頻度だそうです。
この数字には、“老い”というファクターが含まれていません。だから、老いによって、もたらされるクリティカルによる変化を加えれば、もっと頻繁に変化にさらされている存在であると言うことができるでしょう。
変化の時代と言われて久しいですが、そもそも私たち自身が絶え間ない変化を体験しながらも、それを乗り越えて、人生を形作っている生き物であるのです。
わたしたちが思うほど、あるいは願うほど人生は安定しているわけではない――そう気づいた時に生まれる概念や恐れ、戸惑いは、誰もが経験することだったのだ。
人生は常に変動していて、浮き沈みを繰り返しています。
強くて長続きする一貫性ある人生のコンセプトを見出すためには、「強靭な柔軟性」が不可欠です。
安定を求めるということは、それは相当の不自然さを作ることになり、理にかなっていません。むしろ、変化をよりポジティブに歓迎して受け止めていくような、そんな柔軟性こそが、キースキルとなります。
“ぶれない柔軟性”を持つことを検討してみましょう。
変化ということには不安がつきものです。自分がまだ知らない自分になるのですから、それは当然です。
だからといって、何らかの外的要因によって、変わることを余儀なくされて、元に戻ろうとしてしまっては、そこに成長はありません。
ホメオスタシスと、アロスタシスという2つの概念があります。
ホメオスタシスというのは、「秩序→無秩序→秩序」というサイクルを繰り返していくということで、アロスタシスというのは、「秩序→無秩序→再秩序」という変遷をたどります。
まさに、同じところに戻るか、同じところかと思いきや、成長した(同じところ)’に、ステップを進めるかという違いをこの2つの概念に触れることで、よく理解をすることができるのです。
変化の過程を経て安定するには、少なくとも自分自身もある程度変化する必要がある、ということだ。
幸せで健康で高いパフォーマンスを維持している個人や組織というのは、なんどもこの変化のパターンを経験します。
自分自身を何度も再構築することで、強くて持久性のあるアイデンティティへと絶え間なくアップデートしていくことができるようになるためです。
人はもともと順応できる?
脳も環境に適応することができる機能をもともと持っています。
例えば、デジタル環境にさらされている人は、読書に集中しようとしても困難なことがあるでしょう。絶え間なく送られてくる通知や、すっかり習慣になっているSNSの閲覧習慣はとても強力に、読書からあなたの意識をそらそうとしてきます。
でも、読み続けていくと、その内容に引き込まれるように、脳の配線が変わって適応して、読書に集中できるようになるのです。
この現象を“神経発生”もしくは、“神経可塑性”と呼びます。
私たちは、変化をして成長ないし、進化を獲得できるようにできているのです。
- 秩序→無秩序→秩序の再構築
- 安定している(Xの状態)→混沌として不確実な状態に陥る(Yの状態)→新しい状態で安定を取り戻す(Zの状態)
- 統合→分離→再統合
- 方向性が定まっている→方向性がわからなくなる→再び方向性を定める
- 凍結→変革→再凍結
- 調和→不調和→修復
これが人間の通常の状態なのです。
そもそも変化を嫌うバイアスのせいで、安定こそが理想だと思っている私たちにとって、こうした基本的な機能は驚くべきものではないでしょうか。
変化を前提とした身体を私たちはすでに持っているのですから。
例えば、そうした身体特性を活かしていくために、次のような考え方をすることはできないでしょうか。
「大きな一本道」を想定して、人生を進んでいると捉えていくと、そこから“外れて”しまった感覚はとても大きく感じられます。王道というやつです。
でも、実際には、無数の絶え間なく枝分かれしている「小道の連続」であるとして捉えた場合、私たちの日常は、絶え間ない変化の連続であると素直に捉えて受け入れやすい見立てをすることができるでしょう。
わたしたちは変化を経ると強くなって成長することや、行動によって変化を切り抜けられることがわかっている。そしてそのような能力を開発したり、実践したりできるという。
変化をありのままに取り入れて、それを無条件に受け入れるところから始めてみるようにしましょう。
忘れないでほしい、人生は変化だということを。変化を恐れることは、いろいろな意味で人生を恐れることだ。
現実を直視することで、人は変わり続けていくことができるようになるはずです。人は、絶えず移り変わる中に、美しさやかけがえのなさを投影することができます。

変化を取り入れて充実させよう?
世の中にあるものは、はかないからこそ、価値が認められるのです。
限られた時間の中で、かつ、変化を絶えずしているということを認めるということは、この人生をよりよく生ききる心構えにつながることを示唆します。
私たちの脳は、勝手に予測シナリオを構築します。そして、そのシナリオからぶれていく時、変化として不安定を感じて、ネガティブな気持ちを生み出しがちです。
事実として、次の方程式を念頭においておくことでしょう。
苦しみ=痛み×抵抗
つまり、ありのままを受け入れて柔軟性をもって対応することができれば、人は苦しみから抜け出すことができるようになります。
柔軟でブレないマインドセットのためには、次の2つを意識してみることです。
1.拒否と抵抗という負荷を手放すこと。
2.人生は困難なものだと、はじめから予測してみること。
このスタンスを貫くことができれば、制御不可能なものごとに対して、本気で悩むことから解放されることになります。
執着すると、人は問題を抱えます。
強いアイデンティティを持つこと自体は問題にはなりませんが、仕事や人に対してそれを押し付けようとして、あまりに過剰にこだわりすぎると、苦しみとなって帰ってきてしまいます。
だから、役に立つときは、そうした考えや概念を大切にしてもよいのですが、自分を苦しめる執着としてこだわりが暴走するのであれば、潔く役立たないものとして、手放してしまうことが吉です。
“個体群生態学”という考えがあります。
個体群生態学――長く繁栄する組織に共通すること。
これは、特定の産業に注目して、長期的に組織がどう誕生してどのように消滅するのかを説いたものです。
この理論により、次の3つの原則がまとめられました。
1つ目は、組織構造が硬直的であればあるほど、その組織は混乱期に淘汰される可能性が高くなること。
2つ目は、組織の短期的な強みが長期的には弱みになりやすいこと。つまり、組織が特定の特質や目標に固執しすぎると、環境が変化した時に、その特質や目標が邪魔になるということだ。
3つ目は、外的な変化が大きければ大きいほど、その産業に根づいた組織はすべて消滅するか、前の形態をとどめないほど大きく変化するかのいずれかになること。
これは、非常に示唆深い論点であると思います。
いかに柔軟性というスキルセットが個人にとっても、組織にとっても欠かせないものか、想像を容易にしてくれます。
次回の投稿においても、こちらの1冊『Master of Change 変わりつづける人――最新研究が実証する最強の生存戦略』を引き続きレビューさせていただきながら、ポジティブに変化を柔軟に捉えることができる特性を身につけるヒントを深く得ていきたいと思います。
特に次回の投稿では、脳の“ワクワク”機能がどのように変化を乗りこなすために重要かを知ります。
変化については、こちらの1冊「【真の「成長」とは!?】トランジション ――人生の転機を活かすために|ウィリアム・ブリッジズ」もぜひご覧ください。

まとめ
- 変わることが前提?――人生とは変化の連続です。その前提を忘れずに!
- 人はもともと順応できる?――実は、順応する能力に長けているのが人です。
- 変化を取り入れて充実させよう?――「成長」という変化にこそ価値を感じましょう。
