【裏道を、自分の王道に!?】裏道を行け ディストピア世界をHACKする|橘玲

裏道を行け ディストピア世界をHACKする
  • 生きづらい社会の中で、どうしたら、自分を保ちながら、社会との接点を持ち続けることができるでしょうか。
  • 実は、「HACKする」という作法が大切かも。
  • なぜなら、仕組みは変えることができませんが、自分を変えることはできるからです。
  • 本書は、社会全体の構造と問題を知り、上手に関わるための1冊です。
  • 本書を通じて、ウラをかく、新しいスタンスを見出すことができるでしょう。

HACKの必要性とは!?

今私たちは、大きな変化の過渡期に遭遇しています。

世界はいま、知識社会化、グローバル化、リベラル化という三位一体の巨大な潮流のなかにある。

プロローグ――ふつうの奴らの上を行け

急激な変化に翻弄されて、人生の「攻略」が難しくなっているのが現代です。

知識社会の高度化によって、仕事に要求される知的スペック(学歴・資格・知能など)が、上がっています。ハードルが高くなればなるほど、当然それを超える者の数も減っていくことになります。

また、リベラル化で実現した生きづらい社会という現実もあります。リベラル化というのはそもそも「自分らしく自由に生きたい」という価値観のことです。戦後、物的、精神的に豊かになる世界のなかで1960年代アメリカのヒッピーと呼ばれるスタイルを皮切りに、潮流として広がりました。

リベラルな社会では、「私も自由にいきる」から、「あなたも自由に生きてね」という権利を共有することが、暗黙的に認められます。この自由によりあらゆる差別は、許容されなくなり、マイノリティの権利も認められることになります。素晴らしいこともありますが、負の側面も忘れてはなりません。

誰もが「自分らしく」生きる、つまり自分個人を優先する社会となるため、共同体がどんどん崩壊していきます。地域の交流会や、町内会、そうした中間共同体は、解体し、一人ひとりがバラバラになる世界観が見えてきます。生きることはすなわち「自己責任」であり、ドロップアウトしてしまう人に対する、ケアは政府だけの役割になります。

世界の格差も広がっています。日本においても、所得格差の問題が指摘されています。普通の人が低所得化していく中で、一部の富裕層と呼ばれる人に富が集中する構造になっています。

格差社会においては、漫然と常識に従いルールを守っているだけでは、下層から抜け出すことはできません。だからこそ仕組みを知り、その仕組みを活用し、這い上がるための「HACKする」こと=裏道が必要なのです。

BOBOSに見習え!?

ひとつのヒントはフリーエージェントという働き方にありそうです。フリーエージェント(freelancer)は、自営業者として特定の企業に雇用されずに仕事をする働き方を指します。最近、米国ではこのフリーエージェントという働き方が増加しています。

背景

  1. テクノロジーの進化: インターネットとデジタルツールの普及により、リモートワークが容易になり、個人が自分のスキルをオンラインプラットフォームで提供することが可能になりました。
  2. 労働市場の変化: 労働市場の柔軟性が求められるようになり、企業はプロジェクトごとに専門家を短期間で雇用するケースが増えています。
  3. キャリア志向の変化: 多くの人々が自分の時間や働き方をコントロールしたいと考えるようになり、自由な働き方を求めるようになっています。

特徴

  1. 柔軟性: フリーエージェントは自分のスケジュールを自由に決めることができ、場所にとらわれずに仕事ができます。
  2. 多様なプロジェクト: さまざまな業界やプロジェクトで仕事をする機会があり、自分のスキルを広げることができます。
  3. 収入の変動: 安定した収入がないこともありますが、自分の努力次第で収入を増やすことも可能です。
  4. 自己管理: 自己管理能力が求められ、営業活動や経理業務も自分で行う必要があります。

フリーエージェントとして働くことは、自由と柔軟性を享受する一方で、自律性や経営能力も必要とされる働き方です。このため、自分のスキルや興味に合った仕事を見つけ、自分のペースで働きたいと考える人々にとって魅力的な選択肢となっています。

BOBOS(ボボス)というトライブが登場しています。これは、「ブルジョア(Bourgeois)」と「ボヘミアン(Bohemians)」を組み合わせた造語で、ゼロ年代以降に登場したニューリッチ(新富裕層)のことを指します。典型的なBOBOSは、夫婦ともに高学歴で、リベラルな都市か、その郊外に住む専門職(スペシャリスト)で、経済的に恵まれているのですが、しかし、華美な暮らしを軽蔑し、最先端のハイテクに囲まれながら自然で素朴なものに最高の価値を見出す暮らしをしています。

正装してミシュランの星付きレストランで食事をするよりも、近所の洒落たビストロで、気のおけない仲間とカジュアルなパーティを楽しむような人たちです。

BOBOSの働き方は、まさにフリーエージェントです。自分の裁量で働きながら、人間関係を主体的に選択して生きることができます。その代わり大切なのは、自分のスキルセットとマインドセットの絶え間ない磨き込みです。

これまで勃興してきたミニマリストやFIREの運動が、フリーエージェント化したBOBOSに統合されていく流れが、米国では起こっています。

いわ「FI(経済的に独立した)ミニマリズム」で、これが21世紀の人生設計の主流になっていくのではないだろうか。

PART5 世界をHACKせよ

一人ひとりが、評判形成をすることを視点に、例えば、SNSなどで積極的に情報発信をしながら、ギブなライフスタイルを推進することで、多くの人がBOBOS的アプローチの最初の一歩を踏み出すことが可能です。会社のような組織に必ずしも所属しなかったとしても仕事が十分にできうる社会の中で、自らの舵取りのセンスがこれまでの世界観よりも相対的に重要性を増してきます。

自らを俯瞰せよ!?

政党の選挙基盤が地域の商店主や自営業者、中小企業経営者であることは事実です。そのことで、考えなくてはならないのが、「労働者」たるサラリーマン(サラリーパーソン)のポジションです。サラリーマンは大企業等に一定程度守られていると言われており、確かに安定的な労働環境をえているようにも思えます。

しかし、相対的に弱者であるとされる地域商店や自営業者は、政策的に圧倒的に有利なポジションを取れることも事実なのです。コロナ禍における政府の支援策を見れば、こうした格差というのは明らかでした。実際に小さな商店が守られなくてはならないという考え方もありながら、一部には補助金・助成金頼りのゾンビ化している企業も多くあります。

ただ、こうした仕組みを嘆くことに解決の視点を見出すことは困難です。過去の歴史的経緯を見ていくと、革命を起こそうとして失敗していった人がなんと多いことか。まず仕組みを全部かえるという取り組みを始める前に、その仕組をよく理解したうえで、「HACKする」というスキルを磨くことです。

そんな社会を生き延びていくためには、唯々諾々と常識(お上の要請)に従うのではなく、自分に有利なルールでゲームをプレイしなければならないし、そうでなければあっという間に「下級国民」い落ちてしまう。

あとがき

「HACKする」という考え方を実践に移すにはどうしたらいいのか?を考えてみることも大切かも知れません。

山口周さんが、資本主義をハックするという文脈で、こちらの1冊「【資本主義をハックせよ!?】ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す|山口周」を書かれています。ぜひご拝読下さい。

まとめ

  • HACKの必要性とは!?――何もしなくては、搾取されるだけです。
  • BOBOSに見習え!?――「FI(経済的に独立)したミニマリスト」的生き方を下敷きにしてみても良いかも知れません。
  • 自らを俯瞰せよ!?――仕組みを変えるのではなく、自らを変えて仕組みをHACKするという選択を取ってみるのもいいかも。
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