【社会のために企業は存在できるか?】経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略|マイケル・E・ポーター

経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略
  • 経済価値と社会的価値は両立可能でしょうか!?
  • 実は、「共通価値」をキーワードに考えるのが理想かも。
  • なぜなら「共通価値」とは、社会全体の価値を考えるアプローチだから。
  • 本書は、企業活動の本質を考える1冊です。
  • 本書を通じて、事業の本質について考えるヒントを得られます。
マイケル・E・ポーター
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「共通価値」とはなにか!?

事業活動が、社会問題、環境問題、経済問題の元凶であると認識され始めています。「持続可能な経済」や「ESG」などと言われて、企業の事業活動と社会の循環、持続可能性がテーマに上がることが増えてきました。いかにして、事業活動と社会価値の接続を試みればいいでしょうか!?

この論点にヒントをもたらすのが「共通価値」です。

これは、社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。

「共通価値」とは何か

共通価値は、CSR(企業の社会的責任)でもなければ、フィランソロピー(社会貢献活動)でも、持続可能性でもありません。

これは、経済的に成功させるための新しい方法論のことです。ですから、企業活動の周辺ではなく、中心に位置づけられるべきものです。

現在直面している喫緊の社会課題に対して、慈善事業的に取り組むのではなく、それを事業の解決課題として取り組むのが、「共通価値」のアプローチです。

「共通価値」がもたらすものとは!?

「共通価値」は企業が事業を営む地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら、みずからの競争力を高める方針となり得ます。

「共通価値」はこれまで敵対関係にあった、企業と社会の一体化を試みます。人間の営みそれ自体を、社会がよりよくなるアプローチとして進化させます。

企業の活動は、これまでの時代において、必要悪ととらえられていました。環境汚染など社会が負担させられる費用が発生するため、この外部性を企業に内部化させるために、政府はこれに税金・規制・罰則を課していきました。

結果、企業は、外部性を企業戦略から除外して考えるクセがついていたと言っても良いかもしれません。社会問題の解決は、政府やNGO(非政府組織)におまかせ、がそのスタンスでした。

でも、いまや、それでは、社会が成り立たないことを誰もが知っています。また、社会の問題、その本質に取り組む企業に賛同が集まるようにもなっています。

たとえば次のようなパーパスを掲げる企業があります。

  • テスラ——世界の持続可能エネルギーへのシフトを加速すること
  • グーグル——世界の情報を整理してだれもが便利に利用できるようにすること
  • パタゴニア——私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。

詳しくは、こちらの投稿「【MVV理解の解像度上げられる!?】理念経営2.0 ── 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ|佐宗邦威」をご覧ください。

共通価値の概念は、従来の経済的ニーズだけでなく、社会的ニーズによって市場は定義されるという前提に立っている。

トレード・オフを超えて

なので、たとえばエネルギーや原材料の無駄、大事故、教育の不備を補う再教育の必要性など、企業に「内部費用」が生じるのは、社会の害悪や弱点が原因であるという認識をします。

また、考え方によっては、これらの問題に取り組むことが企業の内部コストにだけなるとも限りません。企業は、新しい技術あるいは業務手法の探索によってイノベーションを生み出す可能性を持つことが可能だからです。

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3つのアプローチとは!?

共通価値を創造する方法は3つあるが、それぞれは互いに強化する。

共通価値の創造を実行に移す

3つのアプローチを見ていきましょう。

1)製品と市場を見直す

「私たちの製品は、顧客の役に立つのか」、「顧客の顧客に役に立つのか」そんな視点で、見つめ直していく必要があるでしょう。例えば、食品メーカーは、消費を刺激するために味や量を重視してきましたが、「身体によい栄養」という視点で、製品を開発することも可能でしょう。

2)バリューチェーンの生産性を再定義する

ネスレの稼ぎ頭のひとつのネスプレッソ事業は、2000年以来なんと30%もの成長を続けています。ネスプレッソは先端マシンが注目されがちですが、実は社会性のある新しい調達を実践しています。特殊なプレミアム・コーヒーを調達するためにアフリカや中南米の貧困家庭や零細農家の支援から行っているのです。

3)地域社会にクラスターを形成する

自己完結できる企業など存在しません。いかなる企業も、その成功は、支援企業やインフラにさゆうされます。生産性やイノベーションは特定分野の企業や関連企業、サプライヤー、サービス・プロバイダー、ロジ等が地理的に集積した地域、つまり「クラスター」に大きく影響されます。クラスター内においては、企業だけでなく、学術組織、業界団体や規格団体なども存在し、互いに支え合います。

上述のネスレも、クラスターの形成に取り組んでいます。コーヒーの栽培地に、農業、技術、金融、ロジ関連の企業やプロジェクトを立ち上げています。

まとめ

  • 「共通価値」とはなにか!?――社会と企業の融合を目指す概念です。
  • 「共通価値」がもたらすものとは!?――社会課題に立ち向かう勇気です。
  • 3つのアプローチとは!?――製品と市場、バリューチェーンの生産性、クラスターを見極めましょう。
マイケル・E・ポーター
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