- 中小企業の経営において、重要なことはなんでしょうか。
- 実は、社長の視野視点かもしれません。
- なぜなら、それがかけると、全体が不整合に陥ります。
- 本書は、“やってはいけない”論点から、中小企業のあるべき経営を描き出す1冊です。
- 本書を通じて、社長という機能を改めて検討する視点を得ます。

内外バランスを見極めよ!?
大坂靖彦(おおさか・やすひこ)さんは、現場を知り尽くした“実践派”の経営指導者です。
株式会社ケーズホールディングスの元常務取締役として、従業員わずか3名・年商7,000万円の家業を、800名・年商339億円の企業へと育て上げた立志伝中の人物でもあります。
その過程では、大手ナショナルショップから地方密着の家電チェーンへと提携先を変えながら、「弱者の戦略」で生き残る道を模索し、つねに“先を読む力”で時代に対応してきました。
2010年にすべての経営実務をリタイア後は、「大坂塾」を立ち上げ、次世代の中小企業経営者に自身の全ノウハウを伝える活動に注力。これまでに約1,000名が学び、多くの経営者が実践の成果を上げています。
その他にも、若者向けの人生戦略教育「若者未来塾」や、小中学生対象の「ドリームシッププログラム」など、次世代育成にも力を注いでいます。
こうした現場経験と指導実績の蓄積があるからこそ、本書に書かれている「やってはいけない経営」の数々には、単なる理論ではない“リアルな重み”が感じられるのです。
会社を経営するうえで、いちばん怖いのは、実は「見えているつもりになっていること」なのかもしれません。
自社と社外をどう見ているか?について、まず検討が必要です。
まず、自社とは何か――
それは、どんなリソース(人・モノ・金・時間・情報)を持ち、どんな商いで社会とつながっているのか。
その商いは永続可能なのか?いまの戦略は、どこへ向かっているのか?調整が必要なら、どこをどう動かすべきなのか?
こうした問いを、経営者自身が絶えず自問し続けることが求められます。
一方、社外とは何か――
それは、自社が身を置く“環境”です。景気の波、技術の進化、顧客の変化、法律の改正、競合の動き…。
こうした社外の変化に、いち早く気づき、柔軟に対応できるかどうかが、企業の命運を分けるのです。
この「内を見る力」と「外を察する力」。
この2つの視点を磨かずに経営することこそが、実は“最大のリスク”なのかもしれません。
例えば、ヒット商品を作ろうと思うことは、時と場合、あるいはその中身によるところが大きいものです。重要なのは、自社のリソースや商いの本質を考えた上でのヒット商品であるかということ。
そうでなくて、社会の動きだけに流されて、過剰な設備投資を強いられるようなヒット商品は、その後中長期的にみて、自社のためにならない可能性があることも多々あります。
売上を最大化するために、社内体制をヒット商品の製造・販売に最適化し、社内リソースを集中させてしまうこと。そんな体制にしてしまえば、いずれヒット商品の寿命が尽きたときには、すべてが逆回転します。
ビジネスモデルを成立させている要因をしっかり本質まで把握して、現在の顧客との関係や取引先との関係性を見つめ、社内外のリソースとの間のバランスを作り出していくことが、経営においては重要な取り組みになります。
長い視点で常にものごとを見つめるには!?
同じように「いい情報」を聞いてもすぐに飛びついてはいけないという意識も重要です。
世の中には、うまくいった事例や流行の手法、SNSで話題のビジネスノウハウがあふれています。けれども、それらはあくまで“他社の戦略”であり、“他社の文脈”で成功した話に過ぎません。
自社のリソースやステージ、そして置かれた環境が異なるにもかかわらず、「あの会社がやっているから」「あの人が言っているから」と、よさそうな情報に安易に飛びついてしまえば、かえって経営を歪めてしまうこともあります。
だからこそ、自社の本質を正しく見極める“内省”と、社外環境を読み解く“洞察”がセットで求められるのです。
経営とは、答えのない世界における意思決定の連続。情報よりも、まずは「自社の足元を見る目」が必要なのです。
仮に、ブルーオーシャンと呼ばれる市場を察知して、それに対して進出を検討する時にも、その市場がいつまで続くのか、そして、自社のリソースで本当に継続的な有意を創り出すことができるのか?吟味が絶対的に必要だということです。
時間軸をどのように持つか?ということも経営においては重要な視点になります。
つまり、以下の本質にどれだけ触れられるかということを意識するべきです。
目先の対応は経営の本質を歪ませる
目の前の売上、今期の数字、直近の課題――経営をしていると、つい「目先の対応」に意識が集中してしまいがちです。もちろん、それらも大切です。しかし、目先の対応だけで経営判断を重ねてしまえば、やがて“経営の本質”そのものが歪んでしまうのです。
短期的には利益が出ていても、中長期で見れば組織が疲弊していたり、ブランドが毀損されていたり、持続可能な構造が失われていたり――そういった“見えにくい崩壊”が静かに進んでいるケースも少なくありません。
だからこそ、経営とは「今」と「未来」のバランスを取るアート」とも言えるのです。
一時の業績のぶれに右往左往することなく、足元での業務改善を、PDCAサイクルを回しながら地道に続けることで、当初計画の達成を目指すべきです。
ちなみにPDCAを確実に回すという視点においては、こちらの1冊「PDCA実際に回してる?継続できてる?『超鬼速PDCA』冨田和成」もとても刺激的です。ぜひご覧ください。

自分のことや自社のことって、なかなか俯瞰して見つめにくいものなのですが、いかにそれに意識を向けて、改善点を見出し、対応できるかを常に検討し続けるということが、経営の欠かせない機能なのです。

経営に正解と終わりはない!?
会社が永続するのは、それは社会からその機能が認められるからです。
つまり、自社が社会の中で“どんな役割を果たしているのか”が問われ続けているということです。
その中で、仕入先や販売先との関係性をどう築いているか――これは、経営における最重要論点のひとつです。
「安く仕入れて、高く売る」ことが利益の原理だと考え、つい“買いたたき”をしてしまう。あるいは、売上を伸ばすために“過度な値引き”を繰り返してしまう。
こうした行為は、目先の利益にはつながるかもしれませんが、長期的には関係性を壊し、自社の存在価値を削る結果になりかねません。
仕入先との関係を粗末にすれば、やがて“良い商品”も“良い条件”も遠ざかります。
販売先に対して安易な値引きを繰り返せば、価格でしか勝負できない体質となり、ブランドや信頼を失ってしまいます。
経営を長期間持続させるためには常に「三方良し」でなければならない
本当に大切なのは、「適正な取引」と「相互利益」を前提にした関係性の構築です。
信頼で結ばれたパートナーと共に成長する企業こそが、社会から認められ、選ばれ、そして永続するのです。
このように考えると、経営とは――ステークホルダーとの利害・利益の調整を絶えず行っていく営みだと言えるのではないでしょうか。
顧客、仕入先、社員、金融機関、地域社会――どの関係にも、それぞれの「立場」と「期待」が存在します。
そのひとつひとつに対して、丁寧に耳を傾け、衝突を恐れずに調整し、時に譲り、時に踏み込む――その連続こそが、経営の本質的な仕事であるように思います。
たとえば、仕入先から見れば「誠実に取引してくれるか」が問われ、社員から見れば「安心して働ける場か」が問われる。
金融機関からは「将来にわたって返済できる見通しがあるか」、地域社会からは「存在がプラスになっているか」が常に問われています。
それらの問いに、正面から向き合い、折り合いをつけながら前に進める力――
それが、社長の「胆力」であり、「経営力」なのではないでしょうか。
経営者が描かなければならないのは10年後、20年後の会社の姿
そこには、単なる成長目標ではなく、自社が社会にとってどんな機能を持ち続け、どんな役割を果たしていくのかという、存在意義そのものが問われています。
たとえ起業して会社を大きく育てたとしても、それはゴールではありません。むしろそこからが、本当の経営のはじまりです。
自社のリソース――人、資金、仕組み、価値――はどのように変化しているのか?
そして、自社を取り巻く社会環境――顧客の価値観、法制度、テクノロジー、競争環境――はどう移り変わっていくのか?
その変化を機敏に察知し、何度でも見直し、調整し、方向を定めていく。
経営とは、終わりのない検討の連続であり、常に自らに問いを投げかけ続ける仕事なのです。
実は、世間一般で語られている経営の「常識」や「良いこと」は、よくよく考えて導入をしなければ、自社を痛めつける施策やノウハウになりかねないという事実があります。
「社員第一主義が大事だ」「SNSを活用すべきだ」「M&Aでスケールアップを図れ」――どれも一見もっともらしく聞こえるかもしれませんが、それが“自社にとって”本当に必要かどうかは、また別の問題なのです。
本書『中小企業のやってはいけない危険な経営』は、そうした“よくある正しさ”を鵜呑みにすることのリスクに警鐘を鳴らします。
そして、実際に会社を成長させ、リタイア後も多くの経営者を指導してきた著者・大坂靖彦さんのリアルな体験談とともに、「やってはいけない」落とし穴のパターンを、的確かつわかりやすく示してくれます。
「何をすべきか」ではなく、「何をしてはならないか」。
この視点を持つことが、経営者としての成熟を促し、自社を守り、未来を拓くのです。
まとめ
- 内外バランスを見極めよ!?――取引という関係性に、会社の本性が現れます。
- 長い視点で常にものごとを見つめるには!?――本当に大切なことを見極めることが重要です。
- 経営に正解と終わりはない!?――常にここにある活動が、すなわち経営となります。
