- どうしたらひらめきの力を活かし、伸ばすことができるでしょうか。
- 実は、心がなにか“大きなもの”と交流することを信じられるかにあります。
- なぜなら、世の中の大きな法則、つまり、「摂理」は、必ずあるからです。
- 本書は、人を個として捉えるのではなく、全体の中の一部として見つめる1冊です。
- 本書を通じて、自分を俯瞰して、自分の潜在的な力を引き出すヒントを得ます。
直感力とはなにか!?
船井幸雄さん(ふない ゆきお、1933年1月10日-2014年1月19日)は、日本の著名な経営コンサルタントでした。株式会社船井総合研究所(現・船井総研ホールディングス)の創業者・代表取締役会長であり、船井総研グループの創始者として知られています。
1956年に京都大学農学部の農林経済学科を卒業し、日本マネジメント協会を経て、1970年に日本マーケティングセンターを設立しました。1985年に船井総合研究所に社名変更し、1988年には経営コンサルタント業界で初となる株式上場を果たしました。
そんな船井さんが残した1冊から、今回はこちら『「直感力」の研究』を取り上げさせていただきたいと思います。
直感力、つまり「ひらめき」の力を活用することができれば、もっともっと豊かな発想のもとで、新しいことやよりよいことを見出し、そしてものごとを前に進めていくことができるようになります。
この直感とは、次のように定義されます。
直感を、一切の五感・思考を通さず、心が直接何かを認知することと定義しています。
つまりこれは、“直接知ること”なのです。直感には、限界がなく、あらゆる分野のあらゆる情報を、直接知り、自ら活用することができるようになります。
なぜそのようなことができるようになるのか、それは、世の中の構造と基本的なルールを見つめてみれば明らかであると船井さんは言います。
1)世の中の構造は単純で、相似形になっている。宇宙も原子も同じような構造を持ち、入れ子のように作用する。
2)世の中の構造は、生命を持つ「生命体」を主体として作られている。
3)世の中には究極的には2つのものしかなく、1つは、生命のもとである「生命素」であり、他のひとつは、「宇宙エネルギー」と呼ばれるものである。
4)「生命素」は絶対の存在であり、それはエネルギー存在ではなく、波動も持たないし、物質にもならない。しかし、「宇宙エネルギー」と特別に結びつき「生命体」を構成する。
5)「宇宙エネルギー」は、あらゆるところに充満している。これは波動を持っており、物質にもエネルギーにもなる。
6)生命体は「意識」と「意志」を持っている。進化した高度な生命体は、知的意識や知的意志を持っている。この知的な意識や意志を「知的な思い」というと「『知的な思い』は、条件さえ叶えられれば、実現する」といえる。これが創造の理であり、世の中を創り動かしている基本的なルールである。
7)「知的な思い」を実現するための条件は、世の中全体の生命発展に寄与すること、世の中の秩序を崩さないこと、「思い」を抱いた当事者が「イメージ化でき、実現の確信を持っているものであること」である。
8)人間は高度な生命体だが、人間より高度な生命体が「神」であり、もっとも高度な生命体が「創造主」と考えられる。
9)世の中は「創造主」も生成発展するように、いうならば、すべての生命体はもとより、世の中全体がより生成発展する仕組みになっている。
10)われわれの本質は、いわゆる「生命素を持った生命体」は進化し、やがて「神」になり、「創造主」と一体化する。
このような思想によってものごとを切り取ります。
私が特にフォーカスしたいと思ったのが、7番目の「知的な思い」の実現についてです。これは昨今言われるような“パーパス”経営や、サステナビリティの根幹にも響く言葉であると思いました。
α:世の中全体の生命発展に寄与する
β:世の中の秩序を崩さない
γ:「思い」を抱いた当事者が「イメージ化でき、実現の確信を持っているものであること」
これらを満たしていることで、ものごとは自然の摂理に沿うことになり、そのままうまく回っていくことができるという視点を学ぶことができます。
そして、こうした自然と一体化して自分を捉えてみるということが、“直感”、つまり、大きなものから直接何かを得るという発想に近づくことができるものであると知ります。
3つの知性を実行せよ!?
根本にある「創造主」のイマジネーションは、次のようなものであったと推察します。
①自分も含めて、すべてが生成発展する仕組みをつくろう。そのために、自分の分身である生命体をつくろう。
②秩序が維持される仕組みにしよう。そのため、すべて生起したことは、必然、必要でベストになるようにしよう。稀に、秩序が破壊されるようなことがある時だけは干渉しなければならないが、ともかく全くといってよいくらい干渉しなくとも秩序が維持でき、すべてのものの生成発展がスムースにできるような仕組みをつくろう。
③原理・原則は単純でパターン化しておくべきだが、自分(「創造主」)も、その他の存在物もお互いに楽しむために、できるだけ多種多様な存在をつくり、生成発展できるようにしよう。
④世の中を変化させ、生成発展させる手法として「思いは実現する」というルールをつくろう。この「思い」は、その念の強さと、実現することを期待する場の環境条件によって、実現という結果と、そのプロセスに差の出るようにしよう
これらのルールは、いまも世の中全体を取り巻いており、誰かの特定の意志ということではなく、この世界全体の仕組みとして機能しているものであって、だから、誰も無視できないし、それに逆らえば、衰退するし、反対にそれに順応し、さらに適応していくことができれば、栄えるという、明快なモデルであるというのが、船井さんが語られていることです。
とくに②における「秩序」が維持される仕組みでこの世の中が構成されているというのが、多くのヒントをわたしたちに提供してくれます。
物理法則でも、人々の願いや思いであっても、宇宙エネルギーであっても、それらは、特定の秩序の結果見えているものだと創造するならば、その多くが、円循環を伴うものであったり、あるいは、波のかたちで観測されるものであったり、あるいは、特定の引き合いを前提としているということなどから、一貫性ある仕組みの中にあるということを、想像させてくれます。
創造主は、全ての存在にとって「プラス」になる可能性をつきつめました。
われわれ人間の本質(魂)は、創造主の分身であり、創造主から分かれて独立して長年たつはずです。
長年たつ、わたしたちですが、それでも魂はその大いなるものとの接続を持っています。なおかつ、この仕組みの中で生まれ育まれることによって、私たち自身が、発展・発達の仕組みを含有しているとも言えるでしょう。
だから、学びを続けていけば、やがては、素晴らしい意識と意志とエネルギーの存在へと向かうことができる・・・いや、上述の通りの仕組み自体が正しいのであれば、いますでにここでもそうしたエネルギーがみなぎる存在ではないか、とさえ思ってしまうところがあります。
人間には、3つの知覚と認識能力があると言います。
1)インテリジェンス(INTELLIGENCE=知識)能力
2)インテレクト(INTELLECTUAL=知恵)能力
3)インテュイション(INTUITION=直感)能力
インテリジェンス能力というのは、知り、記憶するということ、そしてそれらを引き出す能力のことです。
そして、インテレクト能力とは、応用力と捉えられるものです。この中には、クリエイティブの根源になる力もあれば、ものごとを類推する力も含まれます。教えられないこと、知らないこと、あやふやなことにも答えを出す能力であると捉えてよいです。
そして、インテュイション能力とは、本書のテーマでもある直感力のことです。
これは、上述の通り船井さんによれば、「一切の思考を通さず、心が自らの超意識を通して直接何かを認知すること」であるとして定義されています。
意識を集中することにより考えなくとも瞬間的に正しい答えが導き出せるというのが、直感力です。
この論点について、船井さんは、法華経との接点を見出します。
法華経において、お釈迦様は、このように説きました。
どんな人も、みんな菩薩道に入ることができる
これはすなわち、人間であれば、だれもが悟りを開けることを示唆します。
悟りとは、つまり悩みが解決されるということ、大いなるなにかと一体化することで、私たちが本来持つ素直な力を引き出してそれに満たされている状態であると解釈することもできるかもしれません。
そしてそのためには、お釈迦様は、「心を空にすると直感が得られ、真実のデータが観られる」と説きました。
色即是空、空即是色。
つまり心が空になり、そして自在になることによって、本来的な力が見出されるということです。
そしてこの悟り(直感力)への道へ行くためには、六波羅蜜を実行することであるとしました。
この六波羅蜜というのは、仏教における6つの重要な修行の道、つまり「完成された実践」を意味します。これらは悟りへの道を進む際の基本的な実践とされています。
六波羅蜜とは具体的に以下の6つです。
- 布施(ふせ)– 与えること、寛大さ、慈善
- 持戒(じかい)– 道徳的な戒律を守ること
- 忍辱(にんにく)– 忍耐、耐性、寛容
- 精進(しょうじん)– 勤勉さ、努力、熱意
- 禅定(ぜんじょう)– 瞑想、集中、精神の安定
- 智慧(ちえ)– 洞察、真の知恵
これらの「波羅蜜」という言葉はサンスクリット語の「パーラミター」に由来し、「彼岸に達する」または「完成」という意味を持ちます。これらの実践を通じて、煩悩を克服し、悟りへの道を進むとされています。
特に大乗仏教では、菩薩がこれらの六波羅蜜を実践することによって自らの悟りを目指すだけでなく、すべての衆生の救済にも貢献するとされています。
この六波羅蜜と船井さんが説く、「インテレクト能力を高め、創造主の分身である人間が、持っているインテュイション能力に目覚めること」についての説明と符合するところが多いと言います。
布施(あげる)+持戒(まもる)+忍辱(人の嫌がることを進んでやる)+精進(誠心誠意やる)ことが、すなわち、人間性を高めるとともにインテリジェンス能力を向上させることにつながります。
そして、さらに禅定(右脳を活性化させる)ことが、インテレクト能力の向上へとつながり、
さらには、般若(自分に潜在する知恵に気づく)ことが、インテュイション能力の存在への気付きになります。
徐々に人間性を高めていくということ(誰も最初から、パーフェクトに十分に備わっているものではないということ)が、実はとても大切なことなのかもしれません。
自然の摂理に従おう!?
何より重要なことは、「良心」と「天地自然の理」に従って生きることです。
「良心」に従うということは、常に「良心」が奨めることをするということ、してはならないということを、しないことに尽きます。
例えば、農家は、体のことを考えて、農作物をつくるとか、医者は、患者にとって不要なくすりを処方しないということを守るとか、そういうことです。
こうした「良心」は自分の心の声としてこだまするものです。その声に耳を傾け、しっかりと受け止めながら、自分の言動を作り出していくことが重要です。
また、自然の摂理に従うということも「良心」の考え方を助長させていくものになります。自分の中に自然と現れる「良心」の心を大切にすることは、それがすなわち自然に生きるということにつながっていきます。
こうした生き方は、また、次のような視点を大切にしても見出すことができるでしょう。
1)愛情を高めていくこと。
2)知性を高めること。
3)我欲をなくすこと。
4)反自然な考えや行為をしないということ。
良心をもとに、意志の力を見つめてみましょう。
私もそうだと思うのは、創造主や人間など、知的意識のあるものが“こんなものを創りたい”と思うと、何かの力が働いて、秩序の維持と秩序形成機能が稼働し、自然と思ったものになってしまうということです。
つまり、正しい行いのもと、正しい思想を持って、ただ、「想う」こと。これを行っていくことで、私たちは周囲とともに、よりよい活動を作って、それを享受することができるようになるということにほかなりません。
まとめ
- 直感力とはなにか!?――心が直接、理解し、ものごとを実現していくスパイラルへと導く力です。
- 3つの知性を実行せよ!?――知識、知恵、直感力を順番に、徐々に高めていくのです。
- 自然の摂理に従おう!?――素直な良心のもと、正しく想いを持てばそれは、すなわち実現なのです。