【HOW TO リスキル!?】リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考|小林祐児

リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考
  • どうしたら、組織としてリスキリングの機会を正しく提供できるでしょうか!?
  • 実は、現状の社会人の学びの解像度を上げると見えてくるものがあります。
  • なぜなら、能動と受動のはざまで学習をし続けている不思議なスタイルだから。
  • 本書は、リスキリングの本当の意味と役割を理解する1冊です。
  • 本書を通じて、リスキリングを組織に導入するためのヒントを得ることができます。
小林祐児
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昨日の投稿「【人的資本をいかに活かすか!?】リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考|小林祐児」に続き今回も本書のレビューを続けます。

組織的学習にするには!?

前回の投稿では、主体的なキャリア形成のトレンドも相まって、リスキリングがバズワード化していることと、実態は、個人のやる気にのみ依拠した学び直しであることが指摘されていました。

トレンドになるとうしている「自律的学び」や「個に合わせた学び」は、従業員の動機の高低に過剰に依存しています。

本書の大きな方針は、「個人のやる気」頼みのリスキリングをやめ、リスキリングのための動機づけを「仕組み化」することです。

第1章 「リスキリング」の流行とその課題

そもそも日本の社会人の現状の学びの解像度を上げてみると、個人のやる気にのみを頼りにする方法に限界があることがわかります。

社会人の学びは中動態!?

日本では、WILL=主体性の発揮がなくても、昇進レース、配属後の適応、目標管理といったプロセスを経て、「そこそこ能動的に」仕事ができてしまいます。

第2章 「学ばなさ」の根本を探る――「中動態的」キャリア論

こんなことありませんか!?

  • たまたま辞令を受けた異動で新しい出会いがあった。
  • やりたいことは会社に入ってから考えればいい。
  • MUST(やるべきこと)の中からWILL(やりたいこと)が見えてくる。

未経験のまま「就社」して、ジョブローテーションをしながら、自分の適職を見出していく、現在のスタイルは、上記のような機会を上手に提供していると言えるのかもしれません。

これを著者小林祐児さんは、國分功一郎さんの著書「中動態の世界 意志と責任の考古学」から引用し、中動態的キャリアと呼びます。

自分が主語ではないが、かといって完全に受け身でもない

第2章 「学ばなさ」の根本を探る――「中動態的」キャリア論

中動態的なキャリアは良いものとも、否定すべきものでもありません。問題視されるのは、この中動態的キャリアが変化し続ける環境と企業の人材マネジメントとの相性の悪さがあるからです。

次のような課題が現れます。

  • 学びへの意思も、学ばいことへの危機感も醸成されないこと
  • 主体的に専門性を蓄積する習慣がつかず、半端な専門性も時間の経過とともに陳腐化すること
  • 処遇が上がることによって、中高年になってからの成果と期待がアンマッチを起こすこと

これらのことを考えると、現在企業や組織が「従業員の主体性をもとにした学習」や「主体的キャリア形成」などをもとに、自律を「個の力と意志」にゆだねているのは、無理があるのかもしれません。

「中動態」的に意思を持たずして働いている従業員に対して、「個性の時代だ」「らしさの発揮だ」といくら煽っても仕方がありません。

第2章 「学ばなさ」の根本を探る――「中動態的」キャリア論

個人の学習が組織的にまで拡大しないことも問題視されるべきです。

組織的学習とは、
「個人の知識」
 ↓
「個人の行動」
 ↓
「組織の行動」
 ↓
「環境の変化}
 ↓
「個人の知識」(もどる=スパイラルへ)
という好循環の学習モデルです。

しかし、現場のチームとこれまでの慣習を大切にする日本の組織では、個人の学習が、新しさをもたらす時、それは、同僚の迷惑になって跳ね返ってくる可能性があります。たとえば、新しいツールを導入したら、仕事の負担が増えたり、あるいは、仕事がなくなったりと、そういった不協和音を嫌うことから、個人の学習が、組織に拡大することが阻害される可能性があります。

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中動態について、小林祐児さんの引用された部分をご紹介します。かなり興味深い内容です。ぜひ原典「中動態の世界 意志と責任の考古学」もご覧ください。

「お前は早く寝るか夜更かしするかを、自由に、自分の意志で、能動的に選択できる状況にあった。さて、お前は夜更かしすることを選択した。そのせいでいま、お前は授業中だというのに居眠りをしている。居眠りの責任はお前自身にある。お前は叱責されてしかるべきだ」というわけだ。
ここから分かるのは、人は能動的であったから責任を負わされるというよりも、責任あるものと見なしてよいと判断されたときに、能動的であったと解釈されるということである。意志を有していたから責任を負わされるのではない。責任を負わせてよいと判断された瞬間に、意志の概念が突如出現する。
「夜更かしのせいで授業中に居眠りをしているのだから、居眠りの責任を負わせてもよい」と判断された瞬間に、その人物は、夜更かしを自らの意志で能動的に選択したことにされる。つまり責任の概念は、自らの根拠として行為者の意志や能動性を引き合いに出すけれども、実はそれらとは何か別の判断に依拠しているということである。

組織的リスキリングに向けて!

3つの学びが本質的にリスキリングを支えます。

1)捨てる学びアンラーニング
これまでの仕事の関わる知識やスキル、考え方を捨て、新しいものに変わっていくこと

2)巻き込む学びソーシャルラーニング
他者を積極的に巻込みながらともに学んでいくこと

3)橋渡学びラーニングブリッジ
学んだ事柄同士や、学びと仕事を結びつけていくこと

アンラーニングをする上で、大切になるのが、「限界認知」です。

限界認知とは、「これまでの仕事のやり方を続けても、成果や影響力の発揮につながらない」という自身の仕事の限界を感じることです。

第4章 リスキリングを支える「3つの学び」

では、どんな限界が個人に「限界認知」として理解されるでしょうか!?それは次にあげる3つのような体験からです。

①「修羅場の経験」・・顧客との大きなトラブルや、事業・プロジェクトの徹底、大きな損失形状など、長い就業人生においてはストレスフルでネガティブなことがあるものです。

②「越境的業務」・・他組織との共同プロジェクト、副業・兼業、海外での勤務など、自分のホームの環境ではないアウェイの環境で働いた経験は、限界認知を促します。

③「新規企画・新規提案の業務」・・新規のプロジェクトの立ち上げや、新しいアイデアや事業を提案する作業においては、これまでのやり方の延長線上では通用しないことがほとんどです。

現在の「中途半端」な成功体験ではなく、新しい環境設定が学びをうながすきっかけになります。

また、「他者」との学びには、4つの機能があります。それは、「真似しあうこと」「教え合うこと」「作り合うこと」「高め合うこと」です。これらを期待して、個人での学習から仲間・チームでの学習を目指せるような仕組みを検討してみましょう。

  • 「真似しあうこと」・・模倣、真似、観察学習
  • 「教え合うこと」・・指導・教育、フィードバック、支援活動
  • 「作り合うこと」・・知識の創発、知識の共有、共同実践
  • 「高め合うこと」・・目標伝染、動機づけ、威光模倣

さらに、ラーニングブリッジという考え方も導入してみましょう。これは、「仕事の経験と学んだことを結びつける」ことや「得た知識を業務に役立てようとする」といった行動として現れれます。

ネットワーク同士をつなげることで価値が生まれます。

そうした異質なネットワークの間を「つなぐ」役割を果たす人や企業こそが最も利益を得るということを示したのが、アメリカの社会学者ロナルド・バートの「構造的空隙 Structural Holes」の理論です。二つのネットワークが互いに閉鎖的である時、それぞれで流通する情報は重複が少なく、別の質や量を持つことになります。

第4章 リスキリングを支える「3つの学び」

日本の組織は、同じメンバーで結束する閉じた繋がりを構築することが得意です。ただ、一方社外に飛び出して外の組織とつながることを苦手としています。弱い繋がりを持つ仕組みを作ることができるか、そうしたハブ的人材を見出すことができるかがラーニングブリッジの要となります。

まとめ

  • 組織的学習にするには!?――現状を見極め、仕組みを作ることです。
  • 社会人の学びは中動態!?――能動的とも、受動的とも言い難いスタンスです。
  • 組織的リスキリングに向けて!――3つの学びを連動させましょう。
小林祐児
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