【言語学習は、最強の学習スパイラルシステム!?】言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか|今井むつみ,秋田喜美

言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか
  • わたしたちがあやつる言語ってそもそも何でしょうか!?
  • 実は、オノマトペが言語の誕生と学習に関わっているかもしれません。
  • なぜなら、世の中のものを感覚的に音化したのが、オノマトペ、ひいては言葉になっていった可能性があるためです。
  • 本書は、私たちがあたりまえに使っている言葉を深ぼるヒントをくれる1冊です。
  • 本書を通じて、そもそもに迫る姿勢の面白さを感じることができます。
今井むつみ,秋田喜美
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オノマトペは特殊なことばのように見えて、実は言語の普遍的、本質的な特徴を持つ、いわば言語のミニワールドであり、「記号接地問題」を解決する鍵になるのではないか。

はじめに

そもそもオノマトペとは!?

オノマトペとは、次のように説明されます。

オノマトペとは、状態や感情、あるいは動物の鳴き声や物音を、模倣したものであり、その中には「擬音語」と「擬態語」がある。 「擬音語」とは、物音や動物の鳴き声など、人間の発声器官以外のものから出た音を、人間の音声で模倣したものである。 もう一つの「擬態語」の語彙(ごい)が豊富であることが、日本語の大きな特徴の一つである。

日本語再発見(1)オノマトペの不思議な世界

日常的な会話でもオノマトペを良く使っていることに気付くでしょう。

例えば、次のような言葉・・

  • ボールがコロコロと転がる
  • 社長の話はコロコロと変わる
  • 僕たちのチームはコロコロと負け続けた
  • コロコロとしたかわいい子犬
  • アマガエルがコロコロ鳴いている

オノマトペは言語のミニワールドである。一般的な言葉と同じように、語根に接辞がついて意味が変化する。絵本の中でオノマトペは豊富に使われる。絵本を読んだもらいながら、子どもは軸となる要素につく小さい要素があることに気づく。ことばは要素の組み合わせで構成さえされることに気づき、大きな塊から小さい要素を抽出してその意味を考える。

第4章 子どもの言語修得1――オノマトペ篇

子どもは絵本で多用されるオノマトペから、言語の意味だけではなく、文法的な意味を考える練習もしています。

子どもの言語習得とオノマトペとは!?

子どもは、オノマトペが大好きです。感覚的にわかりやすいのはもちろん、場面全体をもオノマトペで表現しとらえることも可能だからです。子どもは、オノマトペを通じて、声の強弱や発話の速さ、リズムなどに感情を込めやすいのです。

オノマトペに親しむことで子どもは言語のさまざまな性質を学ぶことができるのである。

第4章 子どもの言語修得1――オノマトペ篇

オノマトペを通じて、次のようなステップを踏みます。

1)オノマトペのリズムや音から、母語の音の特徴や音の並びに気づきます。
2)音と視覚情報の対応づけを感覚的に「感じる」ことによって、耳に入ってくる人が発する「音」が何かを「指す」ということに気づきます。
3)母語特有の音と意味の結びつきを感覚的に覚えます。
4)たくさんの要素がありすぎる場面では、オノマトペのアイコン性は単語が指し示す部分に注目するのを助け、その意味を見つけやすくします。

総じて、オノマトペは、子どもが目の前の情報を「切り出す」ための手助けをしてくれます。

これらを統合してまとめてみると、言語習得におけるオノマトペの役割は、子どもに言語の大局観を与えることと言えよう。

第4章 子どもの言語修得1――オノマトペ篇

オノマトペの音と意味のつながりは赤ちゃんでもわかります。それが赤ちゃんに自分がこれから学んでいく母語について、大人が発する声にいかなる意味があるのか、その音にはどういう特徴があるのか、などのざっくりした直感的な理解を与えてくれます。

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オノマトペと言語は深く繋がっている!?

実は、このオノマトペですが、私たちが普通に使っている言語(単語)に深く浸透している、もしくは、そのベースとなっている可能性も見受けられます。

たとえば、「たたく」「ふく」「すう」という動詞ですが、「タッタッ」「フー」「スー」という擬音語をもとに作られた語で、末尾の「く」は古語では動詞化するための接辞だったそうです。

さらに、動物の名前にもオノマトペ由来のものが散見されます。「カラ」と鳴く「カラス」。「ウグヒ」と鳴く「うぐいす」。「ホトトギ」と鳴く「ほととぎす」。また、「ヒヨヒヨ」鳴く「こ」だから「ひよこ」など。(「こ」はかわいいものにつける接辞です)

私たちが一般語と思っていることばの多くが、もともとは対象の模倣であるオノマトペに由来する可能性を示唆する。

第5章 言語の進化

言語の修得については、「丸暗記」ではないという仮説もあります。

1つの既知の情報を頼りに、他の言葉を推論することで、それを検証し、学習をすすめる自己学習能力が人にはそもそも備わっていると著者の今井むつみさん、秋田喜美さんは、言います。

乳幼児期から子どもは、知覚的な類似性を検出することができる。その「似ている」感覚を足がかりに、動詞の持つ抽象性を緩和し、動詞を学習する。さらに、動詞を学習することで、抽象的な関係性にも「似ている」と感じることができるようになるのだ。

第6章 子どもの言語習得2――アブダクション推論篇

言い換えれば、動詞を知らなくてもわかる知覚的な類似性を利用して、大人のように、抽象的な関係性を「似ている」と見なせるようになります。

要するに、高い学習能力を持っている学習システムでは、何かのきっかけでシステムが起動されると、知識が知識を生むというブートストラッピング・サイクルによって知識がどんどん増えていくのである。単に知識のボリューム(個別の要素知識)が増えるだけではない。新しく加わる要素知識は既存の知識に関係づけられ、知識システムの構成要素となる。同時に、新たな知識は既存の知識を質的にも変化させる。知識を整理する上で根幹となる「似ている」や「同じ」についての認識自体が変化するのである。

第6章 子どもの言語習得2――アブダクション推論篇

この、似ている感覚を重視しながら、推論を繰り返し自ら学習をしていくサイクルには大変興味深いものがあります。まるで、ひとつの単語(オノマトペ)が磁石のように働いて、自然に言語を習得するサイクル・システムを起動させる・・そうやって、太古の昔から紡いできた言葉の旅路を、子どもはあっという間に駆け上がってくるのですね。

つまり言語習得とは、推論によって知識を増やしながら、同時に「学習の仕方」自体も学習し、洗練させていく、自律的に成長し続けるプロセスなのである。

第6章 子どもの言語習得2――アブダクション推論篇

学習の仕方を自らが学習する最強のスパイラルがそこにはあります。

言語習得は「推論」の繰り返しだと本書は説きますが、そのシステムが、進化の系譜に触れました。ぜひこちらの投稿「【生き残るのは、誰か!?】進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」|太刀川英輔」もご覧ください。

本書の中で、太刀川英輔さんは「言語(ことば)」について大変興味深い示唆をしてくださっています。

ここで、著者である太刀川英輔さんは、「創造」と「進化」をリンクするものが、「言語」であると説きます。

進化とは、言語によって発現した「疑似進化」の能力である。言語の歴史は5万年。石器時代を乗り越えた頃の人類の歴史と重なります。そして、このころから、道具を使い始めます。身体性を拡張するための道具は、ある種の進化に近いものを感じさせます。

オノマトペのように言語は、世界を象徴し、模倣するように誕生しました。そんな言語は、人に「疑似進化」を与えているという相似に、不思議な一体感を感じます。

まとめ

  • そもそもオノマトペとは!?――擬音語や擬態語のことです。
  • 子どもの言語習得とオノマトペとは!?――オノマトペが子どもの言語修得を助けます。
  • オノマトペと言語は深く繋がっている!?――オノマトペ由来の言語が多く存在します。また、人間の言語習得とは、「推論」によって「学習の仕方」までもアップデートするシステムです。
今井むつみ,秋田喜美
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