【客観性の身につけ方とは!?】マッピング思考―人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」|ジュリア・ガレフ,児島修

マッピング思考―人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」
  • バイアスに支配されないで、なるべくものごとの見立てを素直にする方法はないでしょうか。
  • 実は、「マッピング思考」という方法が有効かもしれません。
  • なぜなら、この方法により本能的に支配されている「自分を守る」思考から距離を置くことができるからです。
  • 本書は、そんな「マッピング思考」とは何か、そしてその実践を説いた本です。
  • 本書を通じて、自分自身の思考との距離感を保ちながら、ものごとを見立てる筋道を得られるでしょう。

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過去の投稿「【VUCAの正しい備え方とは!?】最強の教養 不確実性超入門|田淵直也」は、とても良い本でした。この中で、予測不可能なはずの不確実性に対して、人は、予測をもって対応してしまうことから、現実を見誤るという法則が説かれました。そして、この誤りから逃れるためには、短期的にものごとを判断せずに、「正しいこと」を「中長期的に」行っていくことが、気長なようで、最短ルートであるというシンプルな回答を得たところです。

このアングルから、本書『マッピング思考』を見てみると、「正しいこと」の実践編のようにも読むことができると考えました。いずれの本でも、人間の性を取り扱いながら、いかにそれを克服することができるかについて、説かれている点が共通しています。ぜひ、合わせて読んでいただくなかで、自分なりの毎日の考え方の補助線を得ていただく、ヒントになれば!と願っています。

田渕直也
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「見たいものを見る」人の性とは!?

人は、見たいようにものごとを見がちです。残念ながら、過酷な進化というサバイバルを勝ち抜き、現代に生き残った人類の末裔であるわたしたちは、多かれ少なかれ、この「確証バイアス」に支配されているのです。かの有名なカエサルもこのような言葉を残しています。

人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない

ユリウス・カエサル

こうあって欲しい!という視点を持ち続けている限り、真実から遠く離れてしまうことになります。それは何を意味するか?というと、じつは、とても生きづらい袋小路に皆さんは自分自身を誘っていることになるのです。なぜなら、現実と乖離した判断や生き方を助長させていくことになり、それこそ、理にかなった選択から自分を遠ざけてしまうからです。

本書で「本当は信じていないことを、表面的に主張しているときの感覚」に気づきやすくし、俯瞰的な思考のトレーニングを行っていこう。

はじめに バイアスのワナから抜け出し、判断の精度・確度を上げる「マッピング思考」

本書は、この態度を「マッピング思考」と呼び、バイアスに支配されるだけの思考と区別しています。

「マッピング思考」とは!?

すなわち「物事を”こうあってほしい”という視点ではなく、まるで地図を描くように”俯瞰的に”とらえようとする考え方」である。

はじめに バイアスのワナから抜け出し、判断の精度・確度を上げる「マッピング思考」

著者のジュリア・ガレフさんは、「マッピング思考」と対比としてバイアスに支配された考え方として「守りの思考」を引き合いに二項対立で説明してくれています。

偵察者の「マッピング思考」

理性的で俯瞰的なものごとの捉え方、考え方です。地図をつくるように志向する態度のことで、常に「これは本当なのか!?」と自問自答しながら進みます。間違いを見つけたら、地図を柔軟に修正し、地図をさらに正確にするような証拠を探すことを志向します。それはまるで、戦時の偵察者のようであります。

「マッピング思考」を身につけることで、自分の間違いに気づき、死角を探し、仮定を検証し、軌道修正をしやすくできるのです。

兵士の「守りの思考」

本能的で主観的なものごとの捉え方、考え方です。自分を守るために考えをめぐらします。「信じたいものごと」はなんとかして信じるために情報をあつめたり、ものごとを自分なりに解釈します。こうした思考パターンにおいて、間違いとは即ち敗北を意味し、自分の考えを裏付け擁護するための証拠を必死になって探します。

問題なのは「マッピング思考」で考えるべきときも、兵士の「守りの思考」におちいっているケースが多すぎるということだ。この2つを賢く切り替えられるスキルを学べば、判断力も上がるし、人生を改善できる自由度が高まるにも関わらず。

中身がないのに、やたら自信満々な人

どちらかが良し悪しということではなく、TPOに合わせて、思考の使い分けが必要になるということでしょう。ですが、本能的な思考パターンは、「守りの思考」なので、どうしても陥ってしまう・・可能な限り、客観性を持ち、判断しなくてはならないときに、自分が「守りの思考」に陥っていないかどうかに気づけるかがポイントになります。

「マッピング思考」できてる!?チェックポイントとは!?

マッピング思考ができているかどうか、判断するには、思考をとらえるのではなく、「行動」でしか判断できないとジュリア・ガレフさんはいいます。そんな行動のものさしとして5つをあげてくれています。ぜひ、ご自身で悩んだら、この5つに照らして自分の「行動」を振り返っていただくのも良いかも知れません。

ものさし1.「相手の方が正しい」ときはそれを伝えられる:誰かに「私が間違っていた」と伝える気持ちがあるのは、エゴよりも真実を大切にする人間であることのはっきりとした証になります。

ものさし2.批判を素直に受け止められる:どんな世界であれ、率直に意見を交換することがものごとをよい方向に進めていくためには欠かせない。

ものさし3.自分の間違いを証明できる:ものさし1に近しい考え方として、自分の間違いをどう違ったのかを思い切って証明することも、ものごとの局面では重要な場合もあります。

ものさし4.情報が偏らないための工夫をしている:どんなに善意のある科学者でもデータなのなかにみずからが希望し、期待するものを見出そうとしてしまうことがあります。

ものさし5.「正当な批判」を認めることができる:かの有名なダーウィンも、自分の論説に対して異を唱える学説の中に的を得た物があることを認めていました。

広告代理店のマーケティング担当として仕事をしているときは、どうしても最短ルートを探しがちになってしまっていたと、反省します。広告会社のマーケティングは、プロジェクトの初動でいかにいくつかの「仮説」が提示できるか?!が、チームに大きく貢献できるポイントになります。自分で仮説を構築するからこそ、あまりにその仮説に依存しがちになるということも残念ながら事実です。自分が生み出した仮説を、否定して、さらにブラッシュアップをできるかどうか?!が実はチームへの最大の貢献であると、考えることがより良いのかも知れません。

「テーゼ」に対して、「アンチテーゼ」をぶつけ、最終的に「ジンテーゼ」へとたどり着く過程こそが、仕事において重要であり、また、この過程を外部者(例えば、得意先や顧客、あるいは、外注先等)と共有することで、プロジェクトがよりよい方向に向かっていく可能性も考えられます。

ちなみに「ジンテーゼ」へと向かう思考については、過去の投稿「【アウフヘーベンしようぜ?】直線は最短か?~当たり前を疑い創造的に答えを見つける実践弁証法入門~|阪原淳」がとても参考になります。読み物としても、大変興味深い、著書です!ぜひご拝読ください。

とくに、今回取り上げさせていただいた『マッピング思考』の中で、ドキッとしたのは著者ジュリア・ガレフさんのこんな指摘でした。

ある考えに同意するのと、それを自分のアイデンティティの一部と見なすのは同じではない。

なぜ「政治や宗教の話をしてはいけない」のか

ものごとの考え方は、往々にして、自分の信条と重なってきます。でも、プロジェクトや仕事においてその境界線をあいまいにしたままでは、過剰なストレスにさらされることが多々あるのです。自分の信条だけが表立って出せるような場面はそうそう多くないですし、自分の信条を押し付けるのがプロジェクトや仕事ではないからです。もちろん、自分の信条からものごとを見つめることは大切だし、それがないと、思い入れが少なくなってしまうのではないか、というのも最もな指摘だと思います。

しかし、あまりにそれを同一視すると、仕事が反対にスタックしてしまう可能性も知っておく必要があります。そんなとき「マッピング思考」をもって、全体を俯瞰して、自分の考えの発端を探しに行くことで、その場の対処の方策に新しいバリエーションを得ることが可能になるでしょう。

まとめ

  • 「見たいものを見る」人の性とは!?――これまでの進化の中で身につけた「確証バイアス」を誰しもが持っています。
  • 「マッピング思考」とは!?――自分の間違いに気づき、死角を探し、仮定を検証し、軌道修正をしやすくすることができる思考法です。
  • 「マッピング思考」できてる!?チェックポイントとは!?――5つの「行動」チェックをしてみましょう。

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