- 不確実性の時代と言われて久しいです。VUCAという言葉も一般化してきました。先行きが不透明な時代にどう対応すればいいでしょう。
- 実は、「予測」をしてしまう人の性が、私たちの邪魔をしています。
- なぜなら、不確実性は、「予測できない」からです。
- 本書は、銀行等で金融商品の取引で不確実性と向き合い続けてきた田淵直也さんによる、不確実性の入門書です。
- 本書を通じて、なぜ私たちは不確実性と向き合うことができないのか、そもそも不確実性とはなんなのか?にふれることができます。
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不確実性は、「予測」できない。だから、「予測」することをやめよう!
これが本書の趣旨です。不確実性は、その全体像をとらえられません。さらに人間の性が確率や不確実性を捉えるのにこんなんなバイアスを持ってしまっているので、正しく見ることも困難です。それなのにも、なお、人は、不確実性に際しても予測をすることを好んでしまいます。
予測が当たらないことが問題なのではなく、予測できないことに予測することで対処しようという考え方がそもそも間違っていると考えるべきなのだ。
予測は外れて当たり前
ではどうするか?答えはシンプルです。
正しいやり方の効果は長期的にしか現れない
正しいやり方の効果は長期的にしか現れない
不確実性への対処を考えるとき、時間軸を意識することはとても本質的で、重要なことである。不確実性のおかげで、短期的には、間違ったやり方でも成功することがあり、また正しいやり方でもうまくいかないことがあるからだ。原因と結果が直感的に結びつかない不確実性のもとでは、正しいやり方の効果は長期的にしか現れない。
ずばり、「正しいことをしよう!」そして「長期的視点で、モノゴトをみよう!」というのが田淵直也さんの主張です。これについては、実は別の投稿「【ものごとの本質的な見方とは!?】本質を見抜く「考え方」|中西輝政」とリンクします。中西輝政さんは、「正しいこと」と「効率的なこと」はおうおうにして、相反すると説きます。だから、放っておけば、みんな「効率的なこと」、つまり短期的に正しそうなことに流れてしまうのです。でも、本当に大切なのは、「正しいこと」を長い目で見て続けることなのです。
もっというと、「正しい」とはなんなのか、をひとりひとりが考えて、ブレない軸を見つけることが重要なのです。
山口周さんも、「ニューノーマル」というVUCA時代にも通じる新しい働き方を通じて、VISIONを持つことの重要性を繰り返し説かれています。詳しくは「【実践考③「あるべき姿」を見つける実務戦略】ニュータイプの時代|山口周」をご確認ください。
そうなのです。こんな不確実性で、短期的には、予想だにしない失敗や成功がつきものの時代だからこそ、それを予想したり、一喜一憂したりせずに、コンパスを持って進むことを志向したいのです。
それでも私たちを邪魔する失敗の4つのパターンとは!?
私たちは、確率やリスク、そして不確実性を正しく認識することができません。かなしいかな、私たちが生まれてからこのかた、生き永らえさせてくれた「バイアス」が、その原因となっています。バイアスは、モノゴトを単純化して捉えようとします。なぜなら、常に外的環境からの情報を読み取って考えていたら、肉食獣の獲物になっちゃうからです。「こういう状況なら、こう!」「こういうパターンなら、こう!」というふうにある程度の決めつけができてきた、先輩が生き残ったからこそ、私たちもその能力が強化されているのです。
で、このバイアス、大きく田淵直也さんは4つあげています。
1.成功体験と自信過剰
過去の成功体験が、あると今回もそのやり方や状況が適応できる、あるいは、されるのではないかという算段を付けてしまいうものです。このバイアスは、成功体験が多ければ多いほど、強化されてしまいます。
2.サンクコストと自己正当化
過去に投資をした分はかえってこないのに、それに固執してしまう傾向にあります。たとえば、お金もそうですが、時間や手間などのコストも当てはまります。自分は間違ってなかった、と思いたい気持ちもわかりますが、目を曇らせます。
3.希望的観測と神頼み
リスクを想定しないで、なぜかうまくいくと思ってしまいます。絶望的な状況でも、最悪は神風がふくという妄想を見ます。
4.異論の排除と意見の画一化
組織の見えない同調圧力も、目を曇らせます。特に日本の組織はこの傾向が強いと考えられます。
不確実性の正体!?リスクとべき分布のわなとは!?
ランダム性に起因する不確実性はリスクを生む。そのリスクがどのくらい大きなものなのかを測定するためには、やはり確率的に考えていく必要がある。
リスクを測定する
でも、人は、自分個人に降り掛かってくるエラーをリスクとはとらえられません。全体をとらえられないからこそ、そこに運を見てしまいます。結果、確率的な思考をすることを阻んでしまいます。本当なら、リスクが予測できる場合は、1)期待値でものごとを捉える。2)たったひとつの断定的な予測に決め打ちしない。ことがポイントになるはずです。しかし、上述の4つの失敗でも見るように、正しい判断ができないのも人の性なのです。
人はランダムな動きの多くをランダムなものとは捉えない。だから、世の中の至るところにランダム性が存在していても、そのほとんどに気付かない。
世の中はランダムに満ちている
さらに、捉えづらい不確実性として、「べき分布」があります。このべき分布は、累乗で表される分布で、確率的な分布と少し性格が異なります。例えば、地震の発生と震度、組織内での所得とポストをあげて、田淵直也さんは説明します。簡単にいうと、確率分布よりも「ファットテール」になります。つまり、ロングテールの先っちょの方でも一定数大きなエラー的な事象が発生するのです。超巨大地震は案外発生するものですし、社長や役員ポストという高所得者は一定数存在します。あるいは、長者番付を想像しても良いかも知れません。そして厄介なことに、これらのファットテールの部分は、「フィードバック」といって、さらに強化されて出現する可能性が高い場合があります。たとえば、出世をひとつすると、そのさらに先が開けるように・・。この強化は不確実に起こるので、さらに予測など不可能な状況を創出するのです・・。
まとめ
- 不確実性は、「予測」できない。だから、「予測」することをやめよう!――正しいベクトルをもって、時間軸を味方に中長期的にものごとを捉えることが秘訣です。
- それでも私たちを邪魔する失敗の4つのパターンとは!?――バイアスが私たちを正しい判断から遠ざけます。そして、予測できないはずの不確実性を予測で対処させてしまうのです。
- 不確実性の正体!?リスクとべき分布のわなとは!?――確率的に発生するリスクや、べき分布によるファットテールやフィードバックがあります。絶望的なほど、不確実性は予測できないのです。
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