- アイデアを生み出す想像力をどうしたら鍛えられるのか?アイデアジャンプと言うけれど、どうしたらジャンプできるの?なんて考えたりしながら、結局のところ、「本質的な課題はなんだろう・・」程度のアプローチしかできないことも多々ありませんか?
- 実は、1つのフレームワークと3つの思考法がそのお悩みを解決してくれます。
- なぜなら、論理的思考を超越するのにも技術があるからです。
- 本書では、著者がコンサルティングファームで学び、近年多くの人に読まれているビジネス書を紐解きながら、まとめた思考法を俯瞰することができます。
- 本書を読み終えると、漠然と飛んだアイデアを出さないと!という焦りが、TO DOとなって整理されていく感覚を体験し、今後のビジネスに役立てることができるでしょう。

1つのフレームワーク
物事は全て、「課題」×「解決方法」の組み合わせ
第1章 たった1つのフレームワーク
本書はまさに、そうした繋ぎ方の技術を具体的にお伝えするものです。そして、そのベースになる組み合わせこそが、「課題」×「解決方法」の組み合わせです。
この「課題」×「解決方法」の組み合わせを「思考のフレームワーク」として、後述する「3つの思考法」をこのフレーム上で、レゴのパズルのように組み合わせることで、誰でも創造的に考えることができるようになります。ちなみに「課題」は目的やニーズとも読み替えられます。
すべての物事には、その物事が解決しようとしている「課題」や目指している「目的」、そして、その課題を解消したり、目的を達成するための「解決方法」があります。あたりまえのことですが、これを俯瞰して捉えることがなによりも大切なのです。
たとえば、ヘアドライヤーは、「髪の毛を乾かしたい」という課題と、「熱風で髪の毛の水分を乾燥させる」という解決方法の組み合わせで成立しています。
これらの、課題の設定と、解決方法の組み合わせをいくつかのレイヤーで検討していくフレームワークが本書で提唱されています。
3つの思考法 ①統合思考
統合思考とは、トレードオフの課題をはじめ、さまざまな課題を同時に解決しようとする考え方です。
第2章 3つの思考法①統合思考
いくつもの課題や相反する課題を一気に解決する手法を検討することが、統合思考のポイントです。
そのために重要なことは、課題を構造化し、「本源的な課題」へ抽象度を上げていくことです。言い換えれば、本質的な課題を発見し、そこに遡っていく過程をいくつかのレイヤーで切り取ることです。
たとえば、スーパーの1階の階段の前で階段を上って2階のフロアに移動しようとしている人がいるとします。この人の「ニーズ」は「疲れずに階段を上って2階に行きたい」でしょう。この人のニーズを抽象化すると、たとえば「店内を移動せずに買い物したい」というふうになります。ここから導き出される、解決策は、エレベーターをつけよう!だけではなく、事前注文サービスや、入り口でのタッチパネル設置でオーダーできる工夫、なども射程圏になります。
こんなふうに、課題の抽象度を上げていくことで、いちどきに解決できる課題の数も増やせる可能性を帯びます。
この時、相反する課題を一挙に解決する「トレードオフ」に注目するのも得になります。
例えば、瓶で販売されていた調味料を、経費節減でエコなペットボトルに変える施策は、「経費節減」だけではなく「エコ対応」という相反しそうな2つの課題を一気に解決していることになります。
実は、相反する課題を見つけることこそが、ビジネスで新規事業を立ち上げる時に大切な着眼点になります。
例えば、ウォークマンは、「移動したい」と「音楽を聞きたい」という相反する課題を解決しました。そしてiPodが、「小さいプレイヤー」と「多くの曲を聞きたい」という課題で、さらに進化させました。
このように一見トレードオフに見えるような課題にこそ、イノベーションのチャンスの種は隠れているのです。
著者は、ここでアウフヘーベンを引用します。止揚と訳される概念ですが、たとえば、「花は美しいが、枯れる」という相反する状況を、「花は美しく、枯れるが、次世代に向けた種を残す」というふうに、別の捉え方をすることです。
発展的にいえば、世の中は大なり小なり、この対立構造が多くあるかもしれないですね。営業 vs 製品開発とか、経営 vs 現場とかとか。それを上位概念の課題や問題で統合して考えることがまず大切なのですね。
3つの思考法 ②アナロジー思考
アナロジー思考とは、類似する他の物事と結びつけて新しい発想をしたり当該物事の理解を深めようとしたりする考え方です。
第3章 3つの思考法②アナロジー思考
新しい発想、いわゆる飛んだアイデアを考えるためには、この思考法が不可欠です。
たとえば、りんごから連想できることを考えてみましょう。ロジック思考では、りんご→果物→みかんというふうな、連想をします。でもこれは、瞬時に「理解」できてしまいます。これでは面白みが出ません。誰もが納得できる合理性は、逆に言えば、誰もが同じ結論に至ってしまうつまらなさをはらんでいます。
アナロジーでは、りんご→りんごパイ→昔の恋人というふうに、連想した人の恋の経験によって左右される物事も大切にします。これは、ひとりひとりの感性が大切なので、ロジカルシンキングでは却下されてしまう連想です。でも、じつはここに飛んだアイデアを考えるヒントがあります。
グーテンベルクの印刷機は、ぶどうの圧搾機をヒントにされて発明されたそうです。ヘンリー・フォードのコンベヤーラインは、精肉加工工場のコンベヤがヒントに。それぞれ、当時はだれも繋がりを見いだせていないことに着目していたのです。
アナロジー思考の進め方は、「要素分解する技術」と「抽象化する技術」が大切です。
要素分解には、特に解決策のWhat と Howの要素に着目します。特にHowの方が効率的なジャンプが可能だそうです。たとえばカーシェアリングというビジネスアイデアは、What=自動車 × How=シェアリングする の組み合わせで成り立っています。こうして、What と Howに注目しながら、別の解決策を連想していきます。
抽象化する技術も同じように、要素分解がポイントになります。この時、5W1H(Who、Where、When、(Why)とWhat、How)で分けてそれぞれの要素を抽象化してみることをトライしましょう。
例えば、自動車(What)→人を乗せて四輪で動くもの→人を乗せてタイヤで動くもの→人を乗せて地上を動くもの→人を乗せて動くもの のような抽象化を進めることができます。こうして抽象化すれば、トラックやバス→バイク→電車→飛行機や船といったように対象物(What)も抽象化し、広い視野で物事を考えられるようになります。
また、抽象化を考える際には、「そもそも」というキーワードで物事を考えてみることもトライしてみましょう。
3つの思考法 ③転換思考
転換思考とは、先入観や思い込み、常識を捨てて、新しい枠組みで物事を捉える考え方です。もう少し噛み砕くと、常識を真逆にひっくり返したり、ずらしたりして物事を捉える考え方です。
第4章 4つの思考法
転換思考で大切なアプローチ、それは、まず、課題を転換できないか?と考えてみることです。
イーロン・マスク氏のスペースXの例を著者はあげています。ロケットは、正確で完璧なエンジンを搭載することが常識です。でもスペースXは、ここを真逆の発想で「別に、とまってもいいのでは?」と課題を真逆に捉え、そして何個ものエンジンを搭載することで、ちゃんとロケットが目的を達成できるようにしました。
課題を転換する方法は3つあるといいます。
1)当該課題を解かなくても、より上位の課題を解消したり、目的を達成できたりする別の課題があるのではないかと考える。
→みんなが必死に考えている課題に対して、そもそもこの課題は考える必要はあるの?別に解かなくても本来の目的は達成できるのでは?と考える方法です。上記のイーロン・マスク氏のスペースXもこれですね。
2)当該課題が逆に強みにならないかと考え、新たな上位の課題を解決できないか考える
→これは、当該課題が逆に強みにならないか逆転の発想で考え、その強みが新たな上位課題を解決できるのか考える方法です。例えば、ペッパーくんは技術的にコミュニケーションがギクシャクしてしまうのですが、これを逆転の発想で転換して、小学3年生くらいのかわいい少年というキャラクター付けをしたそうです。
3)当該課題(Why)を導くシーンを構成しているWho × Where × Whenを転換することで、当該課題が新たな課題に転換できないかを考える
→「Who × Where × When が Why を導く」ということに着目して、当該課題を構成する3つのWを転換することで新たなシーンを作り、そして、当該課題が新たな課題に転換できないか考える方法です。例えば、会社員が×自宅で×歯を磨く時として定義して歯ブラシができますが、この「自宅で」を「外出先で」と転換することによって、パナソニックの持ち運びできるおしゃれな携帯歯ブラシポケットドルツが生まれました。
3と同じような発想で、What と Howを転換して、新たな解決策を生み出すことも可能でしょう。
これからの時代の発想法
・AI時代に想像力を高めるためには、「知覚」がカギになる
終章 これからの社会で創造していくための2つの視点
・VUCA時代に創造していくためには、「創発」のマインドセットがカギになる
AIにできないことは、「知覚」ではないでしょうか。決まり決まったインプットがあれば、最適な分析解を即時にアウトプットできるAIですが、知覚の幅を広げることはできません。感性とでもいいましょうか。
たとえば、初雪から、実家を連想したり、あるいは失恋を連想したり、そういう客観的な情報の直前にもたらされる1つの段階が知覚です。
客観的なインプット→知覚→思考→アウトプットというふうにつながりますが、知覚を鍛えるには、強烈な思考とアウトプットを繰り返し回していくことが重要です。どんどんアウトプットして、まわりからフィードバックしてもらって、知覚力に磨きをかけていくことが大切な考え方です。
もうひとつの「創発」というのは、1つひとつの動きや性質には、全体に向けた目的がないものの、それらがコラボすることで、全体として予想し得なかったようなものができる。ことです。
だから最初から目的で自分を縛り付けるのではなく、何でも「やってみる!」の精神で試してみるマインドセットが大切ですね。
まとめ
- 1つのフレームワーク――課題と解決方法を分解して捉えるフレームを運用しましょう。課題はさらに、Who × Where × When でとらえるWhy(ニーズ)として要素分解され、解決方法は、What × How に分解されます。
- 3つの思考法 ①統合思考――さまざまな課題を同時に解決しようとする考え方です。【一石二鳥】をめざしましょう。
- 3つの思考法 ②アナロジー思考――類似する他の物事と結びつけて新しい発想します。【連想ゲーム】をめざしましょう。【「そもそも」】も大切なキーワード!
- 3つの思考法 ③転換思考――先入観や思い込み、常識を捨てて、新しい枠組みで物事を捉える考え方です。【あたりまえを疑うこと】です。
- これからの時代の発想法――「知覚」と「創発」がキーワードです。アウトプットと「やってみる!」精神を忘れずにトライしていきましょう。
物事にはレイヤーがあり、それらを知覚と思考の際に行き来することで、飛んだ発想が可能になるというのが、本書が首尾一貫して伝えたいことでしょう。あえて抽象化してポイントを抽出するならば、1)ものごとの要素分解をした上で、レイヤーを行き来しましょう。2)ものごとの要素分解をした上で、そもそもを疑いましょう。ということかなと、思いました。
柔軟な発想が求められるシーンは日常のそこここに潜んでいると思います。本書の提唱する思考モデルを意識しながら、身につけてみたいと思います。
