困難な組織を動かす人はどこが違うのか? POSITIVE LEADERSHIP|Kim S. Cameron

困難な組織を動かす人はどこが違うのか? POSITIVE LEADERSHIP

一般的に語られてきたリーダシップ論(チームワークの促進、ビジョンの明確化、従業員参加の奨励、信頼の育成、他者への敬意、組織文化の改善、顧客中心のアプローチ、ストレッチゴールを設ける等)に加えて、ポジティブリーダーシップ戦略で規定する4戦略の実行で劇的な業績改善が図れます。ポジティブな組織風土、人間関係、コミュニケーション、意味づけです。これらの実行に役立つ自己評価ツールを開発したことが本書の特徴です。

抜群の成果をあげた組織に、共通していることとは?

本書の内容は(中略)、すべて実証的研究によって裏付けられた方法に則っている。ここで示すのは、社会科学研究から生まれたリーダーシップの実用的なアプローチだ。

第1章 ポジティブリーダーシップとはなにか?

本書はリーダーシップ論を、ポジティブ組織研究、ポジティブ心理学、ポジティブ変革のアプローチから解釈し直し、「ポジティブリーダーシップ」を規定しています。

実証実験に基づき4つの戦略としてまとめ、相互関係を見出しただけではなく、実践的になれるようチェックリストまでも作成しています。

ポジティブリーダーシップは、次にあげる3つの方向性を重視しています。

1.ポジティブに逸脱した業績
準拠集団の規範を構成なやり方で外れる意図的行動によって、組織に並外れた成果を与えることです。

2.肯定的バイアス
人の強みや能力に着目して、潜在能力を信じることです。

3.徳性
人間のもっともいい面(すべての人間システムは、本質的な価値を求めて善に向かう傾向を持つ)を引き出すことに重きを置きます。

ポジティブリーダーシップの4つの戦略とは?

多くの調査による観察の結果と実証的エビデンスが、4つの戦略が群を抜いた業績を可能にする主要な要因であることを示している。

第1章 ポジティブリーダーシップとはなにか?

ポジティブな逸脱を果たす組織と一般の組織の違いを特徴づける、主要な「ポジティブリーダーシップ戦略」は次の4つに規定されます。4戦略は互いに関連し強化し合います。

戦略1「ポジティブな組織風土」
ネガティブ感情よりも、ポジティブ感情が優勢な職場の雰囲気のことです。従業員が楽観的ではつらつとしており、人々がストレスや不安、不振を感じている職場とは対象的な環境で、リーダーの姿勢に大きく影響を受けます。リーダーは自分のポジティブな感情を引き出し、発展さえ、みんなに示すことで、組織風土を大きく改善することが可能です。著者は、フレドリクソンの「拡張―形成理論」(人はポジティブな感情に浸ると、一時的に思考と行動のレパートリーが拡張され、個人の能力が形成される)を引き合いに説明しています。

戦略2「ポジティブな人間関係」
個人と組織の双方に「豊かさ、活力、学びをもたらす源」で、単にうまくやっていくとか、いざこざをなくすとかそういうことではありません。個々人の身体、心理、感情面に、組織全体にポジティブな逸脱という目覚ましい成果を与えます。ポジティブな人間関係を構築することで、人は「ホルモン」「心臓血管」「免疫」の各システムに影響を与え、そのことを通じて、組織全体の健康や幸福感を高めていきます。

戦略3「ポジティブなコミュニケーション」
チームの業績別にポジティブとネガティブなコミュニケーション(コメント)の割合を、比較すると業績が良いチームほど、ポジティブなコミュニケーションが多いことがわかりました。(業績良好)ポジ:ネガ=5.6:1/(業績不調)ポジ:ネガ=0.36:1。ポジティブなコメントとは、感謝、支援、協力、承認、称賛であり、反対にネガティブなコメントとは、批判、否定、不満、皮肉、不同意です。
さらに、問いかけと主張を比較しても、業績良好チームは不調チームよりも圧倒的に問いかけが多かったということです。(業績良好)問いかけ:主張=1.1:1/(業績不調)問いかけ:主張=0.05:1。

戦略4「ポジティブな意味づけ」
意味が感じられる仕事につくことが人間にとって普遍的な欲求です。単に報酬を得るための「勤め」、組織で上を目指す「キャリア」、仕事自体が意味を持つ「天職」のうち、「天職」を目指したいものです。天職を感じている人は、仕事に意味を感じ取り、それは個人的な利益や報酬を超越したものになるのです。この戦略はパーパスドリブンに近い解釈を持っていると考えられます。

ポジティブリーダーシップの実践方法とは?

不信感を持つ人や知識のない人がたくさんいる組織で、ポジティブリーダーシップを実践するのはなかなか大変である。

第6章 4つのポジティブ戦略の実践

実践的な方法として、リーダーと部下の間に1オン1の対話の機会を作れる「パーソナル・マネジメント・インタビュー(PMI)」プログラムが有効です。4つのポジティブ戦略の実行と成果は、計画的に頻繁にリーダーと部下との間に対話が行われる時、期待できます。事実、実験からはPMIを継続的に行ったチームとそうでないチームとでは、業績レベルの向上と維持に圧倒的な差が見られました。

PMIセッションは非常にシンプルで2つのステップからなります。

ステップ1――役割交渉セッション
1回だけの「役割交渉セッション」を行い、部下が期待される役割とそれに伴う責任、評価基準、指揮系統、組織文化、組織の価値観を明確にします。こうした話し合いが持たれない場合、自分がどんな役割を組織の中で求められているのか、どういう基準で評価されているのか、はっきりしません。あやふやなままでは、組織がポジティブな方向へ機能する可能性が低くなります。

ステップ2――継続的な1オン1のミーティング
PMIプログラムの最も重要なステップは、リーダーと直属の部下との対話を継続的に行うことです。これは定期的に1オン1を行うことがポイントで、少なくとも毎月行うことが理想でしょう。あくまで上意下達やマイクロマネジメントではなく、互いに協力して作る時間であると認識することです。協調、情報共有、相互利益を生み出す手段であり、4つのポジティブリーダーシップ戦略の実行につながっているということを意識しましょう。

本書は、リーダーシップ論×ポジティブ心理学で、新たなリーダーのあり方を問いています。実践編についても詳しく書かれているため、リーダーになって間もない方や、課題感をお持ちの方は、ご自身の行動を振り返る意味でもおすすめです。各セクションの末尾には、ポジティブなリーダーのためのチェックリストもあり、これに目を通されるだけでも気づきを得ることができると思います。

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