余白こそが、重要資源!?『TIME OFF タイム・オフ 戦略的休息術』ジョン・フィッチ他

TIME OFF タイム・オフ 戦略的休息術
  • どのようにしたらよりよく時間を使っていくことができるでしょうか。
  • 実は、TIME OFFという発想で、生産性と創造性を両方とも取り戻すことがキーかも。
  • なぜなら、詰め込みすぎては、人は考えられなくなるからです。
  • 時間を自ら創造するのが難しい時代において、いかに「自由」を得るか考えるための1冊です。
  • 本書を通じて、主体的な1日1日の過ごし方を検討することができるでしょう。
ジョン・フィッチ,マックス・フレンゼル,ローリングホフ育未
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働きすぎることは、本当に偉いことか!?

本書の筆頭著者ジョン・フィッチは、元・仕事中毒。かつて自らも“働きすぎの罠”に陥っていた経験から、本書はまさに「かつての自分」に向けて書かれています。

テキサス大学で経営とメディアを学び、デジタルプロダクト・デザインの現場でキャリアを積んだのち、「働く人が楽しくなさそうな仕事」は自動化してしまおうと、技術開発に投資するエンジェル投資家として活動。
現在は、未来の働き方に強い関心を寄せながら、ダンスや音楽、柔術、スイカの栽培まで、まさに「クリエイティブな休息」を体現するような日々を送っています。

共著者のマックス・フレンゼルは、ロンドンで量子情報理論の博士号を取得し、東京大学でポストドクター研究員としてAIの研究を続けてきた人物。

一方で、AIとアート、デザイン、音楽といった分野を横断する活動も積極的に展開しており、彼の手がけたAIアート作品はロンドンのバービカン・センターにも展示されたことがあります。

研究と創造のあいだを軽やかに行き来しながら、パンを焼き、コーヒーを淹れ、音楽を奏でる──そんな豊かな「タイムオフ」のあり方を探究し続ける異色の知性です。

「どうして日本の知的生産性は、ここまで低いのか?」

この問いは、単に統計の問題ではありません。実感として、多くのビジネスパーソンが日々感じているはずです。

長時間働いているのに、結果が伴わない。会議もメールもタスクもこなしているのに、創造的な成果が出てこない。
しかも、それを「努力」として讃える風潮すらある

本書の共著者マックス・フレンゼルが述べているように、日本では「タイムオフ=怠惰」とされがちで、意識的に“休む”ことにすら罪悪感がまとわりついてしまう。

その結果、働けば働くほど疲弊し、創造性も生産性も落ちていくという悪循環に陥っているのです。

G7の中で、日本の1時間あたりの労働生産性は最下位。製造業では一定の成果がある一方、ホワイトカラーの知識労働における非効率さは、目を覆うレベルだとすら言われています。

疲れ果てて燃え尽きるほどに、創造性も生産性もどんどん落ちる。だから焦って余計に長時間働く。そんな、悪循環にはまりっぱなしなのだ。

この背景には、「仕事中に働くのが当然」「時間で評価される文化」「余白がないと落ち着かない働き方」など、さまざまな構造的・文化的要因が絡み合っています。

本書が提唱する「戦略的休息」は、こうした“働きすぎ社会”の根底にある価値観そのものを問い直そうとする試みです。

余白にこそ、本質が詰まっていく!?

私たちが誤解しているのは、「休む=止まること」「生産を止めること」という固定観念かもしれません。
本書で語られるTIME OFFとは、「意識的に余白を設計すること」であり、「創造的な人生を育むための戦略的時間」です。

それは単に、有休を取りのんびりすることではありません。むしろ、忙しさの中に埋もれていた“本当の価値”とつながり直す時間です。

TIME OFFとは──
・生産性の源泉に立ち返る時間であり
・創造性のタネを見つける時間であり
・自分自身と社会との関係性を問い直す時間でもあるのです。

実際、本書ではTIME OFFを、「高尚な余暇」への旅と定義します。
これはアリストテレスが語った「余暇こそが人生の究極目的である」という思想にも通じるものであり、著者たちはこの“光り輝く最終目標”を現代に取り戻そうと試みています。

その鍵として紹介されているのが、心理学者グレアム・ウォーラスによる創造性の4段階モデルです。

創造性は、休息から始まる

グレアム・ウォーラスによる創造の4ステップとは、以下の直感的なステップです。

クリエイティブな4つのプロセスとタイムオフ

  1. 準備:課題に対して一生懸命に向き合う
  2. 温め(熟成):「手放す」ことで無意識が働く
  3. ひらめき:突然、アイデアが閃く瞬間
  4. 検証:実行・評価し、現実へと落とし込む

TIME OFFとは、まさにこの“温め”のフェーズにあたります。
外側から見れば「何もしていない」ように見える時間。
しかし、内面では無数のアイデアが醸され、再構成され、形になろうとしています。

つまり、何もしないことは、創造の一部なのです。
そしてこの「温めの時間」を意識的に取り入れられる人こそ、より深い思考と豊かな発想にたどり着けるのでしょう。

そしてこの4つのステップを見つめることで、そして、何かを得るためには、「何かを手放していく」ということも、とても重要であることを再確認することができます。

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「忙しさ」は、本当に正義なのか!?

「可視化された時間2.0」として、本書は鋭く指摘します。
──現代においては、“忙しさこそが価値であり正義”になってしまっている、と。

多忙であること、手帳が埋まっていること、何かに追われていることが、まるで「頑張っている証」かのように評価されている社会。
しかし、よくよく考えてみれば、それは人類にとって比較的新しい“当たり前”にすぎません。

農耕社会の時間は、自然に同期していました。
狩猟採集社会では、必要な分を得れば、あとは「余暇」こそが文化や共同体の基盤となっていたとも言われています。

けれども、産業革命以降、そしてデジタル時代に入ってから、私たちの時間は「見える化」され、「成果で測られる」ものへと変質していきました。
いまやストレスすら、ある種の“努力の証明”として称賛されることすらあるのです。

本書は、こうした「忙しさに価値を置きすぎる文化」がいかに生産性と創造性を奪っているかを明らかにし、こう問い直します。

忙しさは、本当に前に進んでいる証拠なのか?

成果が出ないまま時間だけが過ぎる──そんな働き方は、本来「非効率」であるはずです。
それなのに、忙しければ忙しいほど評価され、ポーズとしての“多忙”が蔓延していく。

この悪循環を断ち切るには、「時間の価値とは何か?」という根本からの見直しが必要です。
それは、本書が掲げる「TIME OFF」という思想が、単なる休息ではなく、働き方そのもののリフレーミングであることを意味しています。

創造的な人生を、もう一度デザインし直す

ベートーヴェンも、チャイコフスキーも、創作のために“散歩”を欠かさなかった。
心と身体を動かすことで、沈黙の中にある創造性のタネに触れていたのです。

私たちもまた、仕事という「沼」から一度立ち止まり、創造的で文化的な生活を取り戻す必要があるのではないでしょうか。
それは、単に生産性を上げるためのテクニックではありません。

「どのように時間を使いたいか」
「どのように生きたいか」
「自分にとっての“価値ある余白”とは何か」

──これらを、自らの手で主体的にデザインし直すことこそが、本書が投げかけるTIME OFFの本質です。

疲れをただ癒すための一時的な回復ではなく、日々の中で深い集中と遊び、再構築のための時間をどう確保するか。
本書は、日常に潜む“非生産性”を恐れず、むしろそれを味方につけるためのヒントに満ちています。

そして、こう締めくくられているのです。

高尚な余暇とは、光り輝く最終目的である。

これは贅沢ではありません。
むしろ、創造性と人間性を取り戻すための、現代の私たちにとっての“最低限の準備”なのかもしれません。

歩くことも、自分の時間を取り戻すためのヒントになるかもしれません。こちらの1冊「人が歩けば、幸せになる!?『歩く マジで人生が変わる習慣』池田光史」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 働きすぎることは、本当に偉いことか!?――人生はわたしたちに何を期待しているのかを知ること、そのためには、思考なき多忙に身を置くのではないということです。
  • 余白にこそ、本質が詰まっていく!?――いかに余白を意識的に創り出すことができるかが、人生にとって欠かせない資源となっていきます。
  • 「忙しさ」は、本当に正義なのか!?――これは比較的新しく作られた当たり前なのです。
ジョン・フィッチ,マックス・フレンゼル,ローリングホフ育未
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