【業務プロセスにビジョンを!?】Process Visionary|山本政樹,大井悠

Process Visionary
  • これからの時代、どのようなビジネスプロセスのアップデートが必要でしょうか。
  • 実は、デジタル技術をいかに活用するかがキーです。
  • なぜなら、デジタル技術の進展は目覚ましく、取り入れることなく、これからの時代に生き残ることは困難であるとされるからです。
  • 本書は、業務プロセスを改革し、正しくデジタルを導入することにより、企業全体を変革するための1冊です。
  • 本書を通じて、次世代につながる企業変革の方法論を知ることができます。
山本政樹,大井悠
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ビジネスアナリストとは?

本書『Process Visionary』の詳細については、こちらもご覧ください。

管理職とオペレーション担当者が一体となって業務を最適化する、現場におけるカイゼン活動は日本企業、躍進の原動力であったと言えます。しかし、いま企業のビジネスプロセス全体を見渡した時に、非常に問題が複雑化し、より本質的な課題に全社最適で向き合わなければ、対応が難しいことが見えてきています。

理由は、ビジネスのデジタル化でしょう。1990年前後からビジネスプロセスの変革には、デジタル技術の活用が必須となってきました。これらを活用するためには、知識やエンジニアとの協働が必要になります。デジタル技術の浸透は、経験を通して担当業務を理解することも難しくしました。

この30年で業務とは、「経験則で習得し、自利医で改善するもの」から、「専門性を駆使して分析し、エンジニアと共同作業で変革し続けていくもの」へと変わったと言えるでしょう。

こうした中、特に海外では、「ビジネスアナリスト」と呼ばれる役割を置く企業が増えています。ビジネスアナリストとは、次の4つの役割を果たす人のことです。

1.客観的な立場で業務・サービスの問題分析を行うこと。
2.多くの関係者からあがる要求をまとめ、新たなビジネスプロセスを設計すること。
3.ソリューションを開発するエンジニアに要求を伝え、要求通りのソリューションとなっているか検証すること。
4.取組みに関する部門・組織のコミュニケーションハブとなり、関係者の協力体制を構築すること。

実は日本企業でもビジネスアナリストを置く企業は増え始めており、代表的なところでは、ファーストリテイリング、ZOZO、三菱UFJ銀行、日産自動車、DeNAなどがあげられます。

今の時代、企業ではさまざまな機能を統合し、プロセス全体を俯瞰して再設計することが求められているのですが、一方で、企業は機能別、職能別に細分化された、専門職で構成されているため、タコツボ化して問題解決を困難なものにしています。ビジネスアナリストは、こうした状況に横串を指しながら、経営トップと現場をつなぎ、変革を可能にするために働きます。

本来であれば、こうした横串をさすのは、本来的には経営者の役割ですが、複雑な自社の構造を細部まで理解し、実行可能なプロセスを再設計することは、困難でしょう。

いま、プロセスの理想像を描きながら、さらにそれをアップデートし続けていくという“プロセスビジョナリー”な人や企業が求められている時代ということが言えるでしょう。

「Process Visionary(プロセスビジョナリー)」というこの本のタイトルには、“自社のプロセスの在り方にビジョンを持つ人”という意味と、“プロセスビジョナリーな企業”という組織そのものの在り方としての2つの意味を込めています。

ビジネスアナリストは、2000年前後に誕生し、足元20年で急速に(とくに米国を中心に)広がっています。きっかけは、1990年前後から盛んになったビジネスプロセスへの情報システムの導入で、失敗が連続していたことによります。単純にシステムだけを導入して、業務をそのままにしていたため、システムを使うことが返って業務負荷を高めて、意味のないコストを生んでしまっていたのです。

見えないことの見える化?

ビジネスアナリストの仕事の根幹は、見えないものを見える化する仕事というふうに捉えることができそうです。

業務プロセス、とくにホワイトカラーの現場の業務プロセスは、すでに目に見えなくなっているのが現実ではないでしょうか。情報を取り扱うホワイトカラーにとって、活動のフィールドはすでにパソコン、デジタルの中です。その中で、どのようなことをインプットしアウトプットしていくのかが業務であるため、一人の人の業務プロセスを描き出すにも苦労がつきものです。それが、チーム、部門、全社と広がっていった先には、さらに複雑な見えない構造が想定されます。

個別の人の業務プロセスではなく、大局的にすべての業務プロセスを俯瞰する視点が大切なのにもかかわらず、これらは見える化しておらず、かつ、タコツボ化しているため、横串を通して見つめること、さらには変えていくことなど、とても難しいと言えます。

日本の経営者の中には、現場主導でものごとを変革してきた!という自負をお持ちの方も多くいらっしゃると、本書はしてきます。しかし、そのことが全社視点でのものごとの再構成のハードルとなっている可能性があります。

「仕事は現場で業務を経験している者が最も理解している」という認識のもとで「業務のカイゼンは現場が行うべき」という思想を持っていると、プロセス変革に専門性を認めて教育を行ったり、外部の専門家の助けを借りたりという発想は持てないでしょう。

すでに指摘の通り、デジタルの力を借りながら、会社の業務全体を改革・変革していくためには、全社視点が欠かせません。経営トップが「仕事は現場だけがよく知っているから、ボトムアップで変えていくべきだ」というマインドセットをまず、変えることがキーになるのです。

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ニーズにエッジを立てよ?

全社的な業務プロセスの改革を目指すに当たり、仕事をプリミティブに理解してみることが大切です。根源的には、仕事というのは、「ニーズ」から始まります。そして、デジタルはあくまで「ニーズ」を実現するための手段でしかないということを、前提においておく必要があります。

ひとりひとりやいち部署を取り上げてしまうと、ニーズの根源というのは、社内に散在しているという捉え方になります。一方で、会社総体を考えたときにはどうでしょうか。ニーズの根源は、得意先あるいは顧客ということになり、外部の情報をいかに掴み、それに対して、いち早く、品質高く反応することが大切かが見えてきます。全社的にビジネスプロセスを変革するには、そうした外に向けられた目線により、全く新しい「プロセス・ビジョン」を描き出すことが欠かせません。

こうした根本的な視点を持ちながら、会社の存在意義にも触れつつ、業務プロセスを見直していきましょう。プロセスを見直すプロジェクトの進行ステップは次のようなものです。

ステップ1)プロジェクトのビジネス要求の検証をする。
ステップ2)ビジネス要求をステークホルダー要求に分解する。
ステップ3)適切なソリューションを選定する。
ステップ4)ソリューションを実行可能なレベルまで要求を落とし込む。
ステップ5)“アナログソリューション”への要求事項も明確にする。
ステップ6)ステークホルダーと調整して要求を確定させていく。

ステップ2~5まで、ステークホルダーの要求を、ソリューション要求に分解していくのですが、これらは定期的に、継続的にステークホルダーとミーティングを行いながら、アップデートしていくことがキーです。

起点となるビジネス要求というのは、ビジネスのニーズを簡潔に表現したもので、企業の戦略上の要求事項であり、取り組みの目的や目指す成果を示す宣言となります。

すべての要求は企業の外からやってくる

この着眼点を忘れることなく、社会に対するバリューを以下に発揮していくのかについて、俯瞰した検討を行いましょう。バリューについてはこちらの1冊「【自ら問い続けよ!?】バリューのことだけ考えろ トップ1%コンサルタントの圧倒的な付加価値を出す思考法|松永エリック・匡史」もぜひご覧ください。

変革を担うビジネスアナリストは、2つの顔を持ちます。

ひとつは、“トレーナー”としての顔です。新しい業務の説明会や教育、業務マニュアル(システム操作マニュアル)の提供などを通して、業務担当者が新しい仕事にスムーズに適応できるように支援する役割です。また、もう一つの顔は、“プロモーター”としての側面です。推進者や促進者という意味で、関係者が企業の目指す変化の姿を理解して、納得した上で新しい業務を受け入れるように支援していきます。

変化については、こちらの1冊「【真の「成長」とは!?】トランジション ――人生の転機を活かすために|ウィリアム・ブリッジズ」もご覧いただきながら、外部の変化を内部に取り込んでいきましょう。

まとめ

  • ビジネスアナリストとは?――企業を俯瞰して業務プロセスを変革し、企業自体の力を高めることです。
  • 見えないことの見える化?――情報のやり取りを見える化し、管理できるようにしましょう。
  • ニーズにエッジを立てよ?――ビジネス変革には、外部の要求(ニーズ)に注視しましょう。
山本政樹,大井悠
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