問いを持つことが、生き方に繋がっていき続ける!!『生き残る技術』野村克也

『生き残る技術』野村克也の書影と手描きアイキャッチ
  • あなたは「何のために生きているのか」と問われたら、即答できるでしょうか?
  • 実は、この問いを持ち続けるかどうかが、プロフェッショナルとして生き残れるか否かの分岐点になるんです。
  • なぜなら、この問いがあるからこそ、日々の出来事に意味を見出し、自分なりの判断基準を持ち、困難な状況でも折れない軸を保てるからなんですね。
  • 本書は、テスト生からプロ野球選手、そして監督として24年間を過ごした野村克也さんが、「生き残る」ために実践してきた思考法と行動原則をまとめた一冊です。
  • 本書を通じて、表面的なテクニックではなく、「何のために」という問いを持ち続けることで生まれる、本質的なプロフェッショナリズムを理解できるはずです。
野村克也
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野村克也さんは、1935年生まれのプロ野球選手、監督です。

南海ホークス(現福岡ソフトバンクホークス)にテスト生として入団し、捕手として史上2人目の三冠王を獲得。その後、ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を務め、「ID野球」と呼ばれるデータ重視の野球を確立しました。

特筆すべきは、野村さん自身が「リーダーの資質がない」と認めながらも、24年間も監督を続けたことです。才能に恵まれなかった自分だからこそ見えてきた、「生き残るための思考法」を、現役時代から一貫して問い続けてきました。

宣伝大臣・大沢啓二先生の影響を受け、「本を読む」ことで知見を広げ、様々な情報を収集し、努力を積み重ねてきた野村さん。その姿勢は、野球界のみならず、人生を生き抜いていく上での大切な知恵を私たちに授けてくれます。

「何のために生きるか」という問いが生む、プロフェッショナルの視点

野村さんは本書で、「プロ野球で生き残るための15ヶ条」を提示しています。

その中には「常に目標を持つ」「人と同じことをやっていては人並み以上にはなれない」「打撃や守備や教養を学ぶこと」といった具体的な行動指針が並んでいるんです。

でも、これらの条項をただのチェックリストとして読んでしまったら、本書の本質を見逃すことになります。

なぜなら、野村さんがこれらの「技術」を獲得できたのは、その根底に「何のために生きているのか」という問いを持ち続けていたからなんですね。

監督時代、野村さんは選手たちに、日常的に哲学的な問いかけをしていたといいます。

「野球とは?」「いい技術とは?」「いい投球とは?」「勝つための練習とは?」「勝つための戦術とは?」

こうした問いを毎日が自問自答の連続にすることで、選手たちは精神的にも肉体的にも強くなっていく。

そして、この問いかけの最も根源にあるのが「人生とは?」という哲学的な問いなんです。

野村さんは語ります。

現役の時も、監督となってからも、私は常に「何のために生きているのですか?」「いい人生とは?」「いい技術とは?」「いい投球とは?」「勝つための練習とは?」「勝つための戦術とは?」といった日常的な哲学的な問いかけまで、毎日が自問自答の連続。そしてそんな考える日々が、私を精神的にも肉体的にも強くしてくれたのである。

この姿勢が、野村さんの全てのベースにあるんです。

  • 「何のために」という問いがあるから、目の前の練習に意味が生まれる。
  • 「何のために」という問いがあるから、失敗を次に活かせる判断基準が生まれる。
  • 「何のために」という問いがあるから、表面的な成功や失敗に一喜一憂せず、長期的な視点を持てるんですね。

野村さんが強調する「生き残る条件は努力する才能にあり」という言葉も、この文脈で理解すべきなんです。

ここでいう「努力する才能」とは、単に「頑張れる能力」ではありません。

むしろ、「何のために努力するのか」を常に問い続けられる能力なんです。

目的が明確だから、一見中練習をしていたという自己的かつ自然に動いてしまっている状態にある、というのが本当の努力だと野村さんは言います。

「気づいたら一晩中練習していた」という状態は、「頑張ろう」という意志の力ではなく、「何のために」という問いが自然に行動を生み出している状態なんですね。

この視点があるかないかで、同じ「15ヶ条」を読んでも、まったく違う意味になってきます。

単なるチェックリストとして読めば、「目標を持とう」「人と違うことをしよう」という表面的なアドバイスにしか聞こえません。

でも、「何のために生きるか」という問いを持ちながら読めば、これらすべてが自分の生き方を問い直すためのヒントとして機能するんです。

プロフェッショナルとして生き残るというのは、テクニックを磨くことではなく、自分の行動に意味を与え続けられる思考習慣を持つことなんですね。

問い続ける人だけが持てる「客観性」と「信念」

「何のために生きるか」という問いを持ち続けることで生まれるのが、一流と二流を分ける決定的な違いです。

野村さんは、一流の選手の特徴をこう語ります。

一流の選手は、自分が不調になったとしても「スランプです」などとは絶対に言わない。一流の選手というのは不調に陥った時、「なぜ自分はこういう結果になったのか?」と自問し、そこから検証している。その対処がすぐに浮かぶ時もあれば、ある程度の時間を要する時もあるだろう。だが、原因が分かっているから結果が出なくても落ち込むことはまったくない。

この言葉には、重要な洞察が含まれています。

一流の人間は、好調な時も不調な時も「自分は今こういう状態にある」ということが分かっているんです。

つまり、自分を常に客観視できる能力を持っているんですね。

では、なぜ彼らは客観視できるのか?

それは、「何のために」という問いを持っているから、「本来の自分」の基準が明確だからなんです。

「本来の自分」が分かっているから、今の自分が本来の状態からどれくらいズレているのかが分かる。

ズレが分かるから、修正の方法も見えてくる。

だから、二流の選手が「スランプだ」と嘆いている時でも、一流の選手は冷静に「今はこういう状態で、こう修正すればいい」と判断できるんですね。

野村さんは、監督になってから「スランプだ」と言っていた選手に「それはスランプじゃなくて下手なだけだ」と返したエピソードを語っています。

これは厳しい言葉に聞こえますが、実は深い意味があります。

「スランプ」という言葉は、「本来はできるはずなのに、一時的にできなくなっている」という前提を含んでいます。

でも、その「本来の自分」が曖昧なまま「スランプだ」と言っても、何の解決にもならないんです。

一流の選手は、調子のいい時も悪い時も「自分は今こういう状態」という客観的な認識を持っています。

そして、この客観性を支えているのが、もう一つの要素——「信」なんです。

野村さんは、必要なのは「心」と「信」の両方だと言います。

私が必要だと述べた「心」は「信」にも通じている。「信」は人材育成において欠かせない条件である。もう少し、そしてその「信」のこと「心」であり、純粋な人としての力量である。「信」という信念を貫き、そこに確固たる根拠が付いてくれば、人としての「格」が磨かれていく。それは決して肩書きやテクニックや処世術で身につくものではない。

「心」とは、純粋な人としての力量。
「信」とは、確固たる信念。

この2つを持っている人は、ブレない軸を持っているんです。

そして、この「信」こそが、「何のために生きるか」という問いから生まれるものなんですね。

自分が何のために努力しているのか、何のために技術を磨いているのかが明確だからこそ、周囲の評価や一時的な結果に左右されない信念が生まれる。

その信念があるから、自分を客観視しても折れない。

むしろ、客観視することで「今はここがズレているから、こう修正しよう」と冷静に対処できるんです。

これが、プロとして長く生き残る人の思考法なんですね。

野村さん自身、「リーダーの資質がない」と自覚しながらも、24年間監督を務めました。

それができたのは、「何のために監督をするのか」という問いを持ち続けていたからなんです。

その問いがあったから、自分に足りないものを客観的に認識し、それを補う方法を考え続けられた。

そして、「選手を育てる」「チームを強くする」という信念を持ち続けられたんですね。

一流と二流の違いは、才能の差ではありません。

「何のために」という問いを持ち続け、そこから生まれる客観性と信念を兼ね備えているかどうかの差なんです。

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「人を生かす」という使命に気づく

野村さんは、「人生」という言葉から連想するものとして、4つの段階を挙げています。

1 人として生まれる
2 人として生きる(責任と使命)
3 人を生かす(仕事、チーム力)
4 人を生む(繁栄、継続)

この4段階は、単なる概念の整理ではなく、野村さん自身が歩んできた道のりを表しているんです。

テスト生として入団した野村さんは、まず「人として生きる」ために必死で努力しました。

才能がないからこそ、人より考え、人より工夫し、人より練習する。

そうして、プロ野球選手として「生き残る」技術を身につけていったんですね。

でも、野村さんの歩みはそこで終わりませんでした。

監督になってから、野村さんは「人を生かす」という新たな使命に気づいたんです。

球団経営に関わる多くの人たちが考えを繰りに練り、検討、相談、入選を重ねた上で、最終的に私のところに話が来るわけである。そのプロセスを考えただけでも光栄すぎて、自分の勝手な理由が見つからない。私が球団のお役に立てるかどうかはやってみなければ分からない。だが、私にはある程度の結果は残せるという確信があった。

ここに、野村さんの使命感が表れています。

自分が生き残ってきた経験や知恵を、次の世代に伝える。

選手たちが「生き残る」ための視点を授ける。

それが、監督としての野村さんの役割だったんです。

そして、この「人を生かす」という段階に進むことで、野村さん自身の「何のために生きるか」という問いも、より深い次元に到達したんですね。

野村さんは語ります。

いい指導者とは「選手が力を発揮できないのは指導者の側に原因がある」と考えられる人である。そのように考えられる指導者は、原因を探り、対処法を考え、選手に自信をつけてやることができるのだった。この「己の限界」を取り除くには、何よりも自信を取り戻してもらうことになる。

生き残ってきた人間は、一流になることはできなくても、一流を育てることはできるんです。

むしろ、苦労してきた人間だからこそ、選手のつまずきが分かる。

才能に恵まれなかったからこそ、「どうすれば限界を超えられるか」を真剣に考えてきた。

その経験こそが、人を生かす力になるんですね。

野村さんは、睡眠時間10時間という健康法についても語っています。

唯一の健康法は睡眠時間10時間 世の中には1日2〜3時間程度しか寝ない(眠れない)「ショートスリーパー」と呼ばれる人たちがいると聞くが、私はその正反対。現役時代は「これだけは続けていないといううような健康法はない」と言えるが、監督になってからは「1日10時間は眠る」ということぐらい。80歳を超えてなお、こうして元気でいられるのは毎日しっかりと睡眠を取っているからかもしれない。

この言葉は、一見すると「健康法」の話に聞こえます。

でも、実はもっと深い意味があるんです。

「よく食べ、よく眠る」は、野村さんの健康を保つ秘訣だったかもしれません——そう語る野村さんの言葉には、長く生き残るためには、基本を大切にすることが何より重要だという教えが込められています。

派手なテクニックや特別な方法ではなく、当たり前のことを当たり前にやり続ける。

それが、結局は最も確実な「生き残る技術」なんですね。

そして、最後に野村さんは問いかけます。

では、私自身が「何のために生きているのですか?」と問いかけられたら「世のため、人のため」って言うだろう。そんなふうに答える方もいるっしゃるだろうが、そんなのはウソ。「私のため」なんて当たり前すぎて陳腐でつまらない答えだ。そんなふうに思う方もいるんだろうから、そう答えるしかないのだ。

プロ野球選手として、そして現役引退後は解説者として、さらに監督として生きてきた中で、私は自分が何を大切にしてきたかを考える機会を得た。そして、いろんな人たちと関われば関わるほど「人はひとりでは生きられない」「私はいろんな人の助けがあって生きてくることができた」ということを体の芯の、深い部分で理解したんです。

野村さんは、「何のために生きるか」という問いに対して、明確な答えを出しています。

それは、「生き残った自分が、誰かを生かすため」なんです。

自分が苦労して獲得してきた技術や視点を、次の世代に伝える。

それが、生き残った人間の使命だと、野村さんは理解したんですね。

この境地に至るまでには、長い時間がかかります。

でも、日常的に「何のために」という問いを持ち続けていれば、いつか必ずこの段階に到達できるんです。

そして、その時初めて、「生き残る技術」が「誰かを生かす技術」に変わるんですね。

問いについては、こちらの1冊「【問いが、人を動かす原動力になる!?】問いかけが仕事を創る|野々村健一」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 「何のために生きるか」という問いが生む、プロフェッショナルの視点――野村さんの「プロ野球で生き残るための15ヶ条」は、単なるチェックリストではありません。その根底には「何のために生きるか」という問いがあり、この問いを持ち続けることで、日々の行動に意味が生まれ、長期的な視点が養われます。「努力する才能」とは、目的を問い続けられる能力のことなのです。
  • 問い続ける人だけが持てる「客観性」と「信念」――一流と二流を分けるのは、自分の状態を常に客観視できる能力です。そしてこの客観性を支えるのが、「何のために」という問いから生まれる信念。本来の自分の基準が明確だからこそ、不調の時も冷静に対処でき、周囲の評価に左右されないブレない軸を持てるのです。
  • 「人を生かす」という使命に気づく――生き残ってきた人間は、やがて「人を生かす」という新たな段階に進みます。苦労して獲得した技術や視点を次の世代に伝える。それが、生き残った人間の使命だと野村さんは理解しました。この時、「生き残る技術」は「誰かを生かす技術」へと変化するのです。
野村克也
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