- 目まぐるしく変化する社会の中でも前向きさを忘れずに、仕事に取り組むには何を拠り所にしましょう。
- 実は、問いかも。
- なぜなら、問いが、仕事を創るからです。
- 本書は、問いかけの力に関する1冊です。
- 本書を通じて、問いがどのように、人に作用し、仕事を創り上げていくのかについて触れます。
問いかけが、世界をつくる?
変化の時代において、市場や環境を固定的に捉えることは、矛盾します。これまであった場所や、これまであった収入源などなど、これらは絶えず変化していく世界にさらされて、同じように変化をしていきます。だから、私たちもその変化を自らに取り入れて、絶え間ない変容を受け入れて、世界と同期していく心構えの方が自然であると言えるのです。
目まぐるしく変化する社会で生きる我々は、日々「答えのない課題」と向き合っています。
そもそも課題自体が何であるのかさえ、分かっていない状況ということもあります。わからないことが多いのは当然のことです。短い時間の中で、前提条件がガラリと変わっていくから。
予測不能で不確実な時代においても、自ら、時代を切り拓いて、よりよくその環境と関係性を持って行くには、何かポイントが有るのでしょうか。
それこそが、問いかけであると本書は説きます。
今求められているのは、「新しい選択肢を創造」することです。
「他と違うこと」「これまでにないもの」「時代の変化に絶えず適応していくこと」を造っていくのであれば、すでに明確になっている問いではなく、これから生み出される問いであるべきです。
問いかけの力を実感するために、次の1文に触れてみましょう。
「どうしれば空を活用して、天候や災害などに影響されず、農家が楽になる畑を作ることができるだろうか?」
どんな印象を受けるでしょう?次のような感想を第一印象として持つ方もいらっしゃると思います。
- 現実的な話じゃない!
- お金にならなそう!
- コストがかなり掛かりそう!
- うちの会社には関係ないことだ!
その一方、「ワクワクする話だ」という感想を持つ人だっているでしょう。
そんなワクワクする人はついで、次のように考えを膨らましていくかもしれません。
- 畑を空にし飛ばして天候やシーズンにあわせて場所を変えられるようにできないかな?
- ソーラーパワーとドローン技術を使って畑を小さく区切ったらできないかな?
- なんならその畑で食事もできたら最高の観光名所にできるんじゃないかな?
実は、良い問いというのは、さらにそこから、新しい良い問いを生む力を持ちます。
自ら「問う」ということは、日々に意味を与えてくれる気がします。ちょっと難しいかもしれないと思っていたことにも、チャレンジできるかもしれないし、これまで当たり前と思っていたことを、疑って見るような、視点を私たちが持てるように、「問い」は促してくれます。
そして、問いというのは、大人しくて実行可能性があるようなものでなくて、実行可能性を無視したような「ワイルド」なもので問題ないのです。
GAFAMの一角として有名な世界的なテック企業Google(企業名は、アルファベット社)は次のようなビジョンを掲げています。
「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」
そのために何をしたらいいのかを、世界中から集まった志あるパートナーたちが日夜研究に励んでいます。たとえ今、世界中の人が情報にまんべんなくアクセスすることができていなくても、それを信じて、いかに達成することができるのか、問いの力で自ら考え、行動することを促してくれます。
5つの変化で問いの重要性を知る?
問いが重要になる理由は、5つに集約されそうです。
1)知識や専門性から、好奇心やクリエイティビティの世界へ・・上述のようなGoogleのような企業、あるいはAIを社会実装する会社によって、専門的な情報や考えに誰もがアクセスしやすい環境になりました。そうした環境では、情報をいかに加工し使っていくかのガイドライン(思想)の方が相対的に重要になります。
2)モノから、コトへ・・「よいモノを作る」だけではなく、そのモノを使ってどのような体験ができるのか?までをセットで考えるプレイヤーに注目が集まる時代です。例えば、Appleは、そのデバイスだけを販売しているのではなく、それらからもたらされる日常生活の中でも気持ちよくデジタル空間やデータにアクセスし、生活を向上することを私たちは少なからず感じることができます。
3)常識から、非常識へ・・変化する時代において、過去に当たり前とされていたことの賞味期限は非常に短くなるでしょう。例えば、コロナ禍で、私たちの同じ場所に集まって、同時に働くという仕事観は、抜本的に変わりました。新しいことを受け入れて行くためには、常識よりも、むしろ非常識を受け入れて、それを新しい常識として提案できるかどうかが問われているのだと思います。
4)“なぜ”だけでは原因にしかたどり着けない・・なぜというのは、現状をよりよくするためにとても有効なアプローチです。しかし、“なぜ”を深堀りしていっても、原因にしか行き当たらず全く新しい何かを創造する考え方は生まれづらいものです。“なぜ”とは、どうしても時間を遡る方向へのちからを持ちます。
同じように大切なのは、未来に向けて展開する力です。そのために、“Why not”(なぜやらないのか?)、“What if”(もしこうだったら)、“How might”(どうすればできる)と広げていく視点が大切です。
- なぜ○○しないのか?
- こんなことをやってみたらどうだろうか?
- もし○○の代わりに△△だったら?
- どうしたら○○をせずに○と△を表現できる?
このような問いのようになぜから生まれるもう一歩先への投げかけが、アクションを生み出し、新しいものを創る結果へとつながっていくのです。
5)戦略から文化へ・・組織の「文化」という側面に目を向けていくこともとても大切なことになっています。自らをより良くしようとして、よりよい戦略を立案したところで、企業が根本的に変わることはありません。本当に変化させるべきは、企業で働く人がになっている文化の側面です。
変わりたいと思っている企業が欲している人物は、戦略を立てられる人物ではなく、文化を少しずつでもいいので変えていける人物。
これまで見つけられていないその方法を、自ら探索して、自らの問いを元に、行動を通じて提示していける人物であるはずです。
人中心の問いを?
私たちが、日常的に考えたり触れたりするものごとには、実は「答え」が1つのものは少ないことに気が付きます。ビジネスの場面でも同じです。
明確に「答え」が決められなさそうなことを避けずに、勇気をもって考え続けることを「問いかけ」は支援してくれます。「問いかけ」は人を動かすことにあります。人とは、ユーザーだけでなく、そのものごとに関与するすべてのステークホルダーを指します。つくる人、届ける人、メンテナンスする人、選ぶ人などなどすべての人が、自ら考えて、行動できるようなものです。
よって、問いかけは人を中心にしてみると、ポジティブに受け入れられるようになります。例えば以下のケースをみてみましょう。
「なんでターゲット層はうちのサービスを使わないのか?」「なぜヒット商品を生み出せないのか?」という問いに、人のニュアンスを入れてみましょう。すると以下のようになります。
- どうすれば首都圏で○○に困っている人たちのサービスをいつでももっと便利に使ってもらえるだろう?
- どうすれば私たちは日本でストレスを抱えているビジネスパーソンに新しい通勤体験を提供する商品をつくれるか?
いかがでしょうか。ぐっと、人に寄り添った問いになることで、考える熱量が与えられるような感覚を持てるようになります。
問いが少し前向きに変わります。つまり、「問いかけの中に『人』を入れる」のです。
また、人の差し込み方として、「私たち」を使ってみるとさらに、前向きな考え方を促進し、上述のような企業文化の変容を促すことにつながるかもしれません。
「どうすれば私たちは○○できるのか」という問いかけを使ってみましょう。一人ではなく、一緒に考えるというスタンスを共有することができ、対話の可能性を示唆してくれます。
問いかけはあくまでツールです。問いかけは、私たちがもともと持っていた考えや感性を「解放してくれる」ものです。そう考えてみると、問いかけを使って、自らの考えや感じたことに素直になってみるというのが、本当に大切なことなのかもしれません。
問いかけについては、こちらの1冊「【問いで自由になれる!?】問うとはどういうことか~人間的に生きるための思考のレッスン|梶谷真司」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。
まとめ
- 問いかけが、世界をつくる?――人を動かす原動力になります。
- 5つの変化で問いの重要性を知る?――新しい概念や考え方を作り出していくことが求められる時代です。
- 人中心の問いを?――人を動かすのは、どんな時も人の力が大きいのかもしれません。