- あなたは普段、どのような「学び方」をしているでしょうか?
- 実は、多くの人が実践している学習方法は、情報を収集して記憶するという従来型のアプローチに留まっているかもしれません。
- なぜなら、私たちは学校教育を通じて「答えを覚える」ことに慣れ親しんできたからです。しかし、正解が用意されていない現代社会では、この学習観だけでは限界があります。
- 本書は、そうした従来の学習観を根本から見直し、「自ら考える力」を鍛えるための具体的なメソッドを提示した一冊です。
- 本書を通じて、単なる知識の習得を超えた、真の意味での「独学の思考法」に出会うことができるでしょう。
山野弘樹さんは1994年東京都生まれの若手研究者です。 上智大学文学部史学科を卒業後、東京大学大学院で比較文学比較文化を専攻し、現在は博士課程に在籍されています。
専門は哲学、特にポール・リクールの思想研究で、日本哲学会優秀論文賞や日仏哲学会若手研究者奨励賞を受賞するなど、学術界でも高く評価されています。
特筆すべきは、山野さんが「哲学の知と実社会を繋ぐ」という明確な理念を持っていることです。 象牙の塔に閉じこもることなく、哲学の意義と魅力を世に幅広く発信することをライフワークとされています。
本書もまさに、そうした理念の結実として生まれた一冊といえるでしょう。
「答えがない時代」に求められる新しい独学
この本を読んで最初に感じたのは、現代という時代への深い洞察力です。
山野さんは冒頭で、私たちが生きている時代状況を的確に捉えています。
このような時代状況の中で喫緊の課題となっているのが、「いかにして自ら思考する力を身につけられるか」という問題です。
VUCA時代と呼ばれる現代は、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性に満ちています。
正解が用意されていた時代は終わり、私たち一人ひとりが自分で考え、判断していかなければならない状況に置かれているんですね。
従来の教育は「答えを教える」ことが中心でした。 しかし山野さんは、これからの時代に求められているのは、問いを立てる思考力を養う教育だと明確に指摘しています。
特に印象的だったのは、「複雑な問題を、どのようにグループ分けするべきか」「ここで解説されている内容をこのようにまとめるとしたら、どのような要素が問われるような独学の工夫をしなければ、短い期間で各領域につながることはできない」という具体的な問いかけです。
これは単なる知識の詰め込みではありません。 情報の質や重要性を節目に応じて分けていく力――それこそが、私たちがこれから訓練しなければならない分節力なのです。
私自身、中小企業診断士の勉強をしていたとき、恩師から「なぜをしっかり考えて、背景を捉える工夫を常にすること」を教わりました。
これが本当の学習・学びのガイドラインになったんです。 山野さんの言葉と重ね合わせてみると、まさに「探究のための独学」の実践だったのだと気づかされます。
直感から始まる思考のメソッド
この本で特に革新的だと思うのは、思考プロセスにおける「直感」の位置づけです。
山野さんは独学を2つに分けて考えています。
ひとつは「速成のための独学」――すぐに答えを出す、試験問題的なアプローチ。
もうひとつが「探究のための独学」――普遍的かつ創造的な問いを扱う、より本質的な学びです。
後者において重要になるのが、直感を起点とした思考プロセスなんです。
まず確認しなければならないのは、「ぺたっと事実を列挙するだけでは、論文を書くことはできない」ということです。論文を書くためには文章を作ることにメリハリをつけるために効果的なのが、「問い」によって各ロジックを繋ぐということです。
単なる情報収集ではなく、「自分で何が大切かを設定する」という主体的な判断が前提になります。 これこそが分節力の本質だと思うんです。
具体的には3つのステップで実践できます。
1)情報を一つにまとめる
2)情報の関係性を整理する
3)理解の違いが何処にあるか確認する
この流れの中で特に重要なのは、最初の段階での「直感による重要度の判断」です。 膨大な情報の中から、何が本当に重要なのかを見極める力。
これは論理だけでは身につきません。
経験と洞察に基づく直感的な判断力が不可欠なんです。
現代のような情報過多の時代だからこそ、この能力がより一層重要になってきます。 GoogleやChatGPTで簡単に情報は手に入りますが、その情報をどう料理するか、どう組み合わせて新たな洞察を生み出すかは、まさに人間の思考力にかかっているわけです。
独学から共有へ~物語化の力~
この本のもう一つの核心的な洞察は、独学でありながら最終的には他者との共有が不可欠だという点です。
山野さんは鋭く指摘しています。
問題の本質は、「自分が何を考えているのか、実は自分でよく分かっていない」という状況が非常に多いということです。こうした状況は恥ずかしいことでも何でもなく、むしろ当たり前のことだと言われてしまうことによって生じます。
これは独学の本質的なパラドックスですね。
一人で考えているだけでは、自分の思考の限界や盲点に気づけない。 他者に説明しようとして初めて、自分が何を理解していて何を理解していないのかが明確になるんです。
特に「物語化」という概念が印象的でした。 自分の思考を他者に伝わる形で整理し、ストーリーとして構成する。 この過程で思考はより深化し、精緻になっていきます。
私の診断士試験の経験でも、知識をただ暗記するのではなく、「なぜそうなるのか」を常に問い続けることで、点と点がつながって線になり、やがて面として理解できるようになりました。 そしてその理解を他者に説明することで、さらに理解が深まっていったんです。
山野さんが提唱する「オンライン上でメソッドを公開する」という新しい学習方法も、まさにこの物語化と共有の実践例だと思います。 個人的な学習を社会的な知へと昇華させる仕組みとして、大きな可能性を感じます。
この本は、単なる勉強法の指南書ではありません。
変化の激しい現代社会を生きる私たちに必要な、根本的な思考力を鍛える方法を体系的に示した一冊です。
特に印象深いのは、山野さんが「探究のための独学」と位置づけた学習観です。 これは「人生全体を生きる力」に直結する、より大きな視野から見た人生全体を支える力に他なりません。
実際に実践してみて感じるのは、この思考法は仕事や日常生活のあらゆる場面で応用できるということです。 情報を鵜呑みにするのではなく、常に「なぜ?」を問い続ける習慣。 直感を大切にしながらも、論理的に整理していく姿勢。 そして自分の考えを他者と共有し、対話を通じてさらに深めていく実践。
これらは決して難しいことではありません。
日々の小さな積み重ねの中で身につけていける技術なんです。
答えのない時代だからこそ、自分で考え抜く力を身につけたい。 そう感じている方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。 きっと新たな学習観に出会えるはずです。
考えることについては、こちらの1冊「【自分の頭で考えるとは、どういうことか!?】哲学思考トレーニング|伊勢田哲治」もおすすめです。

まとめ
- 「答えがない時代」に求められる新しい独学――情報の質や重要性を節目に応じて分けていく力――それこそが、私たちがこれから訓練しなければならない分節力になります。
- 直感から始まる思考のメソッド――直感を駆使して、「自分で何が大切かを設定する」という主体的な判断が前提になります。
- 独学から共有へ~物語化の力~――他者に説明しようとして初めて、自分が何を理解していて何を理解していないのかが明確になります。
