- どうしたら「自分の頭で考える」ことを、習慣にしていくことができるでしょうか。
- 実は、批判的に考えるということからはじめてみると良いかもしれません。
- なぜなら、それこそ自分の言葉で、世界や社会と関わることにつながるからです。
- 本書は、哲学的思考を行うための実践書です。
- 本書を通じて、批判的視点がいかに創造を生み出していくのかを知ります。
クリティカルに見つめる!?
哲学的思考は、自分の目でものごとをみて、それにもとづき、自らの頭で考えることを促してくれます。別の言い方をすればクリティカルシンキングとも言えます。批判的思考とも訳されるクリティカルシンキングですが、日本語の批判的というニュアンスとはことなるものを含みます。
それは、単なるネガティブな指摘ではなく、既存のものごとの見方ではない確度や仮説を自ら持ち、それに向き合うというスタンスのことです。
ある意見を鵜呑みにせずによく吟味することを「批判」という。
実はクリティカルシンキングには、2つのパターンがあります。
修理型クリティカルシンキング・・人間の思考はどういう間違いを犯しやすいかを学び、その間違いを避ける方法を学ぶ思考法です。家に例えるならば、不調をきたしている部分を取り替えてみたり、部分的に修理を施してみたりする考え方のことです。
もう一つが、改築型クリティカルシンキングです。
改築型クリティカルシンキング・・どういうルールに従って思考すると正しい結論につながるか、という基礎の部分から考えていくというアプローチです。これは、家でいうと、土台から立て直すという考え方になります。
日本で多く紹介されているのが、前述の修理型です。心理学をベースにしていることがほとんどです。これに対して、哲学的なアプローチは、後述の改築型であると言えるでしょう。
自分たちが当たり前に使っている言葉の定義や、社会通念、前提条件などについて建設的な疑いの目を向けることからはじめるからです。
重要なのは、改築型のイメージをベースにしながら、修理と部分的改築を行いながら、ものごとに向き合っていくスタンスです。
他者とともに考えよう?
クリティカルシンキングは、建設的な共同作業であるという視点を持つことが大切です。価値観が異なるのは、人としては当たり前のことです。その程度の差はあれど、一人ひとり人は違います。でもそうした人として違いが、ものごとに対する見立てをスライドさせて、多様な見解をもたらすことは自明です。
一見主張が異なっている2者を考えてみましょう。それらの2者は、実は根っこのところでつながっている可能性があります。
例えば環境問題で、「人間のことだけを考えるのをやめて自然生態系そのものを大切にするべきだ」という倫理的主張をよく耳にします。この主張は、一見「人間だけを大事にするべきだ」という主張とは対立するように見えるのですが、よく聞いてみると、「生態系を大事にしないと人間も滅んでしまうから」という理由で「生態系そのものを大事にすべきだ」と主張している人も多いととらえることができます。
両者の対立は「生態系そのものを大切にする態度を身に着けないと本当に人類は滅ぶのか」という問いを見出すことができそうです。きちんとお互いの主張を突き詰めないと何が対立点になっているかを見誤ってしまうことになります。
意見の調停に際して見当はずれの努力をするのは避けられるだろう。
反対に「わかるわかる~」ということで、さらりと表面的な意見を聞いただけで、安易に同意してしまうことも、日常生活の中には多くありそうです。でも、よくよく聞いてみると、お互いの意見を支えている背景や理由は異なる場合もあります。
そうした相違をネガティブに捉えるのではなく、しっかり互いに説明することによって、自分の考えを深める機会を得ることができます。なぜなら、何をどうして、そう思っているのか、を知ることは、ものごとの捉え方の多様性を担保します。
奥深く理由を深堀りしていくことで、共通点として、人としての最大公約数的な結実点を見出すこともできるかも知れません。
一見、対立するようなことがらを深堀りしていくためにこちらの1冊「【パラドックス・マインドセットとは!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス」もとても素晴らしい視点を提供してくれます。おすすめです。
一致点を頼りに?
実は違う文化に属する人で、違う価値観を持つ人であっても、2人の人間があらゆる面で対立するということは普通考えづらいです。
どこかで意見は一致するものである。
例えば、「人をあやめてはいけない」とか「ものを盗むんではならない」など、具体的すぎかといって、抽象的すぎもしない中間レベルの主張によって、論点を一致させながら、互いに対話をしながら問いを深めていくことも可能です。
一致点は、一種の確実性をそなえた出発点として扱うことができる。
哲学的な思考を深めるためには、一人で考える孤独な時間も求められますが、他者の考えを聞くことも大切です。
他者の考えを聞くことによって、自分の問いを別の角度を見つめることになって、それまでの視点との違いから、認識を新たにすることができるためです。あるいは、他者の中に、自分の意見を見出すこともあるかもしれません。
すでに確立されているかのようにみえる常識や紋切り型の言葉に対して意識を向けることはとても有意義な行為です。また、一人で行うのではなく、それを他者とともに問いを共有する形で、掘り下げていくことが、自分の頭で考える習慣につながっていきます。
哲学的な思考については、こちらの1冊「【深い対話とは、自分を変えるものである?】ゼロからはじめる哲学対話|河野哲也」もぜひご覧ください。
まとめ
- クリティカルに見つめる!?――批判的に考えていくことから、自分の頭を使う行為が始まります。
- 他者とともに考えよう?――自分ひとりではなく、他者との対話の中から思考を進めましょう。
- 一致点を頼りに?――他者との対話の中で、一致するところから話をスタートしてみましょう。