- 「節約」という言葉から連想するのは、多くの場合、我慢や制限といったネガティブなイメージです。
- 実は、月13万円でセミリタイア生活を送るなにおれさんが提示する節約観は、この従来の概念を根底から覆すものです。
- なぜなら、節約とは目的ではなく、自分らしい丁寧な暮らしを追求した結果として自然に生まれるものだからです。
- 本書は、日常生活そのものをアートとして捉え、「よく観て、よく選ぶ」技術を通じて豊かさを創造する方法論を示しています。
- 本書を通じて、制約の中にこそ創造性があり、誰もが今日から始められる「生活のアーティスト」への道筋を発見することができるでしょう。
節約の再定義—結果としての豊かさと自己理解
なにおれさんは1991年生まれ、現在33歳の男性です。月13万円で妻と暮らしながらセミリタイア中という、一見すると制約の多い生活を送っているように見えますが、その実態は全く違います。2018年から「少ないものとお金で楽しく暮らす」をコンセプトにブログ『なにおれ』を運営し、累計1000万PV超え、各種SNSでも多くのフォロワーを獲得されています。
特筆すべきは、その発信内容の多様さと実践性です。「生きづらい人のためのシリーズ」から「ミニマリスト式シリーズ」まで、人生戦略、節約術、自炊術、片付け術など、生活のあらゆる側面について具体的な方法論を提示されています。商業出版も2冊手がけており、節約ブロガーの枠を超えた、現代の生き方そのものを問い直す思想家としての側面を持っています。
なにおれさんの魅力は、制約を創造性に変える発想力にあります。限られた収入という制約の中で、むしろ豊かで自由な生活を実現し、それを多くの人に共有することで新しい価値観を提示されています。
「節約」という言葉を聞くと、多くの人は我慢や制限をイメージするでしょう。しかし、なにおれさんが提示する節約観は全く違います。
「僕が節約がしたいのではなくて、毎日を心地よく生きられるようになりたい」
この一文に、従来の節約観を根底から覆す視点があります。節約は目的ではなく、あくまで結果なんです。では、何の結果かというと、丁寧で無理のない、自分らしい自然な暮らしの結果だということです。
私たちは「支出を減らす」という行為そのものに注目しがちですが、なにおれさんはその前段階である「自分にとって本当に必要なものは何か」という自己理解に重点を置いています。
「支出が減るというのは、あくまで結果にすぎず、その本質は、『自分という人間をどこまで深く理解する』ということでした」
これは単なる家計管理の話ではありません。自分が何を大切にし、何に価値を見出し、どんな生活が心地よいと感じるのか。この根本的な問いと向き合うプロセスこそが、節約という形で現れる豊かさの源泉なんです。
現代社会では「選択肢が多いことが豊かさ」だと思われがちです。しかし、なにおれさんの実践は、選択肢を絞り込むことで得られる豊かさがあることを教えてくれます。月13万円という制約は、実は無限の可能性を秘めた創造的な条件だったのです。
日常という選択の連続—「よく観て、よく選ぶ」技術
なにおれさんの生き方を支える技術は、実はとてもシンプルです。「よく観ること」と「よく選択すること」。この2つに集約されます。
「何を選び、何に触れないか」という話です
現代は情報過多の時代です。なにおれさんは情報について、こう語っています。
「情報だから有益ということはなく、情報とは文脈の存在しないただの劇薬の塊のようなもの」
これは情報だけでなく、モノや人間関係、仕事の選択にも当てはまります。大切なのは量ではなく、自分にとっての適切さです。
生活をアートにするということは、日々の小さな選択一つひとつに意識を向けることなんです。朝何を着るか、何を食べるか、どんな情報に触れるか、誰と時間を過ごすか。これらすべてが創作活動の一部になります。
「生活のアーティストであることは、生き抜くための技術」
アーティストと聞くと特別な才能や環境が必要だと思いがちですが、なにおれさんの定義は違います。
「生活のアーティストとは離島や特別な技能のことではない。『自分には世界がどのように見えていて、自分がそこにどう関わるか』という態度のこと」
つまり、自分なりの世界の見方を持ち、それに基づいて行動することが、生活をアートにする本質なんです。これは誰にでもできることですが、同時に日々の意識的な選択を積み重ねる必要がある技術でもあります。
誰もが実践できる生活アーティストへの道—孤独と相互依存の両立
なにおれさんの思想で最も深いのは、一見矛盾する2つの価値観を両立させている点です。一方で自分らしさを追求する孤独への覚悟、もう一方で真の自由を得るための相互依存の深化。
「自分の身近にあるものをよく観て、自分の外側にあるものも知った上でよく考え、そして、『自分はこうありたい!』と願うほうに向かって努力する」
これは簡単なようで、実は相当な覚悟が必要な生き方です。自分なりの価値観を持つということは、多数派から離れる孤独を引き受けることでもあるからです。
「大切なことは多くできるかどうかでも、他人と比べてどうかでもありません。自分にとって『心地よい』と感じられるやり方を、自分にとって『美しい』と思える道筋を、自分の感覚で選ぶこと、選び続けることです」
しかし同時に、なにおれさんはこうも語っています。
「本当の自由とは、何でも依存せず独りで生きることではない。むしろその逆です。誰かと助けあいながら生きていくほうが自由度が高い」
これは深い洞察です。真の自立とは、依存を拒絶することではなく、相互依存の質を高めることなんです。自分らしさを追求しながらも、他者との関係性を豊かにしていく。この一見矛盾する2つの方向性を統合するところに、なにおれさんの生き方の真髄があります。
私たちが実践できることは何でしょうか。まずは日常の小さな選択に意識を向けることです。なぜこれを選ぶのか、これは本当に自分が欲しているものなのか。そう自問する習慣をつけることから始められます。
そして、自分なりの価値基準を育てること。他人の評価や社会の常識ではなく、自分の感覚を信頼する練習をすることです。これは時に孤独を感じさせる道のりかもしれませんが、その先にある自由と豊かさは、きっと想像を超えるものになるはずです。
なにおれさんが教えてくれるのは、制約の中にこそ創造性があり、日常の中にこそアートがあるということです。特別な才能や環境がなくても、今ここから始められる生活アーティストへの道。
それは「よく観て、よく選ぶ」という、誰にでもできる技術の積み重ねなのです。
なにおれさんの思想には、まだまだ探求すべき深い層があります。次回も本書のレビューを続けさせていただきながら、現代社会における新しい生き方のモデルとして、なにおれさんの提案がどのような可能性を秘めているのか、引き続き探求していきたいと思います。
なにおれさんの考え方に触れて、こちらの1冊「【それは、期待しないこと!?】機嫌のデザイン――まわりに左右されないシンプルな考え方|秋田道夫」を思い出しました。日常における自分と他者と生活を大切にするデザイナー秋田道夫さんの思考も、ぜひ触れられてください。

まとめ
- 節約の再定義—結果としての豊かさと自己理解――節約は我慢ではなく自己理解の結果です。
- 日常という選択の連続—「よく観て、よく選ぶ」技術――よく観てよく選ぶ日常の「技術」こそが重要です。
- 誰もが実践できる生活アーティストへの道—孤独と相互依存の両立――孤独と相互依存を両立する道を極めていきましょう。
