【弱さが、コミュニケーションのヒント!?】〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション|岡田美智男

〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション
  • コミュニケーションのヒント、どこに探ればいいでしょうか!?
  • 実は、「弱さ」を見つめることも重要かもしれません。
  • なぜなら、私たちは自分自身に弱さを孕んでいるから、他者を頼るためです。
  • 本書は、ロボット開発者、岡田美智男さんによるロボットを通じた人の研究です。
  • 本書を通じて、人への理解を深めることができるでしょう。

弱いロボットの可能性とは!?

バスケットに車輪だけつけた、お掃除ロボットを岡田美智男さんが開発しました。

床に落ちているゴミなどの前で止まって、バスケットをかがめたりするだけの機能を持っています。実験では、多くの人が立ち止まったり、自分の行動を止めて、ゴミを拾って、ロボットのバスケットに入れてあげたそうです。ゴミが入ると、ロボットはまたかがみます。受け手にしては、同じロボットがかがむ行為にしても、ゴミを目の前にしたものと、ゴミを入れられたあとのものと、どうしても意味合いが異なるように受けてしまいます。

このロボットの<弱さ>は、わたしたちにお掃除に参加する余地を残してくれている。

第1章 気ままなお掃除ロボット<ルンル>――ゆきあたりばったりのなかから生まれてくるもの

一緒に部屋を掃除するという共同性や、「部屋の中をすっきりと片付けられた」という達成感をもたらしてくれ、なんとも不思議な存在です。

掃除という機能だけを重視すれば、機能としては極めて低いロボットですが、しかし、付加的にもたらしてくれる多くのことに、何か、コミュニケーションや人がロボットとともに、あるいは、人とともに生きるヒントがあるように思えるのです。

人と世界の関わりとは!?

アフォーダンスという言葉を思い出します。

アフォーダンス(affordance)とは、「与える・提供する」という意味を持つ「afford」を元にした造語であり、「人や動物と物や環境との間に存在する関係性」を示す認知心理学における概念です。 アメリカの心理学者、ジェームス・J・ギブソンによって提唱されました。

アフォーダンスとは?意味・効果・活用例・シグニファイアの違い

自分の意志を持って生活しているようで、実は外界からの影響をかなり多く受けている生き物です。たとえば、街のなかを散歩しているとして、「街のなかを散歩する意志があるからしている」と認識もできるのですが、果たしてそれは100%自分の意志でしょうか。

人の流れ、通りの看板、由緒ある石畳の路地、建物の装飾など、その街が、私たちを「歩かせている」ともとれるのです。

自分の意志とは内発的なものとして確固たるものか、というゆらぎを経験します。過去の投稿「【仏教の教えを一言でいうと!?】完全版 仏教「超」入門|白取春彦」において、仏教でもこの世界観を説いています。ぜひあわせてご覧ください。

ゆきあたりばったり……。
「自分の力だけで何とかしたい」というこだわりを捨てて、ときには周囲の状況に身を委ねてみる。

第1章 気ままなお掃除ロボット<ルンル>――ゆきあたりばったりのなかから生まれてくるもの

この「委ねる」「委ねてみる」というのは、なんともいい加減な印象をもたれやすい言葉ですが、どうも、そこから一緒に生み出される何か、について、捨てがたいものを感じます。

他の参加を上手に引き出して、一緒に意味を生み出していくような、そうした「余地」や「余白」も必要なのです。

私たちの身体は自分の内側から眺める時、必ずしも完結したものになっていません。全部捉えることができないので当然です。だからこそ、自分の身体を閉じて完璧を見出すのではなく、むしろ外界と接合した「オープンなシステム」としてとらえ直すことができるのです。

発話とは!?

発話にも、そうした「オープンなシステム」との関わり方を見ることができます。

どうなってしまうかわからないとドキドキしつつも、その意味を周囲に委ねてみる。

第3章 自らの視点から描いた自画像――わたしたちの身体にまつわる<弱さ>の起源を探る

言葉を繰り出そうとすることは、クルマの運転に似ています。

クルマの中から、それを操作するときに、俯瞰した視点で完璧に周囲の状況を知りながら操れているかと言うとそうではありません。恐る恐るアクセルを踏み、都度、風景の動きを確認しながら、操作の手応を確認していく。そうした、常に完結しない状況を繰り返しながら、周囲との関係性の中で、自分の行為を規定していきます。

言葉も同じで、これを言ったらどうなるか・・と推し量りながら、発話をして、そのやり取りを周囲との間の中で常に育ててていく感覚です。

なにげない発話とは、「何かを伝えようとする伝達的な意図」を半ば抱きつつも、その不完結な発話の意味や価値を周囲に委ねつつ見出そうとするものだろう。

第4章 <ことば>を繰り出してみる――相手の目を気にしながらオドオドと話す<トーキング・アリー>

どうなってしまうかわからないとドキドキしつつも、その意味を周囲に委ねてみることとして、「対話」の可能性と、場の作り方の重要性を想像します。

発話と同じように、自分のアイデンティティや価値観なども、やはり確固たるものではなく、外からの刺激を受けながら、絶えず揺らいでいるものだと考えるのが、その正体を表しているかもしれません。常に変わり、常に成長の途上にある、自分という存在に、可能性を見つけていきたいものです。

まとめ

  • 弱いロボットの可能性とは!?――相手との関係性に焦点を当てます。
  • 人と世界の関わりとは!?――関係を育むことです。
  • 発話とは!?――周囲に委ねてみることの1つの例です。
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