ポジティブダイバーシティ ―― 違いを力に変えるには「自己開示」が重要!?

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増田みはらし書店・店主の増田浩一です。

チーム運営や企業支援の現場で、さまざまな声に出会います。

「意志を明確に語るのではなく、感じてもらいたい」という人がいます。言葉にしなくても、振る舞いや雰囲気で伝わるはずだ、と考えている。

「周りの状況にあわせて、その都度自分の役割を決めていきたい」という人もいます。固定された役割ではなく、その時々の文脈で柔軟に動きたい、という考え方です。

「自分のパーパスや信念から逆算して発想していきたい」という人もいます。軸を明確にして、そこから判断を導き出す方が、ブレない意思決定ができる、と信じている。

どれも間違っていません。
それぞれに理由があり、美徳があり、これまでの経験から培われた仕事の作法があります。

これは確かに、多様性です。

けれど、この違いが並列されているだけでは、一つの力にはなりません。むしろ、言葉にしづらい噛み合わなさが生まれてしまう。会議で話が進まない。プロジェクトで方向性が定まらない。そんな場面に、何度も立ち会ってきました。

違いを力に変えるために、必要なものは何か。

最近、その答えが少しずつ見えてきました。それが「自己開示」です。

多様性が力にならない理由

多様性という言葉は、もはや当たり前のように語られます。組織の中でも、社会の中でも、違いを認め合うことの大切さは、誰もが理解している。

けれど、違いを集めただけでは、何も生まれません。

たとえば、「意志を感じてもらいたい」と考える人は、自分の想いを言葉にしないことを美徳だと思っているかもしれません。背中で語る、察してもらう、そういった文化の中で育ってきた。日本の組織には、長くそうした暗黙のコミュニケーションが根付いてきました。

一方で、「パーパスから逆算したい」と考える人は、軸を明確にすることで、判断をブレさせないことを大切にしています。特に、スタートアップや若い世代には、こうした考え方が浸透しています。

この2人が同じチームにいたとき、何が起きるでしょうか。

一方は「なぜ、いちいち言葉にするのか。空気を読めばわかるはずだ」と感じ、もう一方は「なぜ、何も語らないのか。何を考えているのかわからない」と戸惑う。

どちらが正しいわけでもありません。ただ、お互いが「自分のスタンス」を明かしていないから、違いが見えないまま、すれ違いが生まれてしまうのです。

そして、このすれ違いは、放置されたまま積み重なっていきます。気づけば、チームの中に見えない壁ができている。そんな経験をした方も、少なくないのではないでしょうか。

ポジティブダイバーシティとは何か

ポジティブダイバーシティとは、違いを競わせることでも、どちらかに合わせることでもありません。

ダイバーシティをもっとポジティブに開示していくという意味で、ポジティブダイバーシティ。

それぞれが、自分の意志を自覚的に持ち、多少なりとも周りと共有していくスタンスのことです。

「私は、こういう考え方で仕事をしている」 「私は、こういうことを大切にしている」 「私は、こういう場面では、こう動きたいと思っている」

その自己開示があって初めて、違いが見えるようになります。

そして、違いが見えたとき、初めて「では、どう組み合わせるか」を考えることができる。

ここで大切なのは、自己開示とは、自分のすべてをさらけ出すことではない、ということです。

完璧に言語化する必要はありません。「多少なりとも」でいい。ただ、自分がどういうスタンスで立っているのかを、少しでも周りに示していく。その小さな積み重ねが、違いを見えるものにしていきます。

沈黙を美徳にせず、かといって、声の大きさを正義にもしない。

それぞれのスタンスを肯定しながら、その力が立ち上がる場所をつくっていく。

それが、ポジティブダイバーシティの本質だと考えています。

自己開示が生む、新しい配置

自己開示は、弱さをさらけ出すことではありません。

むしろ、自分がどう立っているのかを示すことで、周りとの関係性を設計し直すことができます。

たとえば、ベテランの企業人の中には、「どう仕事をしていていいのか分からない」と悩んでいる人が少なくありません。日本経済新聞社の記事でも、そうした声が取り上げられていました。

50代社員、「上司は年下」が半数近く 双方の悩みを晴らすには?(日本経済新聞社2026年1月2日)

彼らは、上に従い、役割を果たすことを教えられ、組織を回すことで評価されてきた世代です。場を壊さないこと、関係を保つこと、長い時間軸で物事を見ることに、高度に最適化されてきた。

それは美徳です。組織という「場」を、持続させてきた知恵でもあります。

ただ、その美徳が、新しい時代の仕事の中で、力として再配置されていない。

なぜなら、彼ら自身が「自分は何を大切にしているのか」を周りに示してこなかったからです。「どう役立てばいいのか」が示されないまま、期待だけが変わってしまった。

問いを立てる部下を持ち、正解がない状況で意思決定を求められる今、かつて身につけた振る舞いだけでは、立ち位置を見失ってしまう。

能力の問題ではありません。怠慢でもありません。ただ、役割がアップデートされていないだけなのです。

けれど、もし彼らが「私は、場を保つことを大切にしている」「長い目で見ることを重視している」と自己開示できたら、どうでしょうか。

その美徳は、チームや会社の中で「長期的視点を持つ役割」として、機能し始めるかもしれません。急ぎすぎるプロジェクトにブレーキをかける存在として、その経験が活きてくる。

違いが見えれば、配置が変わります。配置が変われば、力が生まれます。

翻訳し、再配置すること

かくいう私は、まさにベテランの世代に教え込まれながら、同時に、すぐ下のZ世代とチームをつくり、スタートアップのスピードや問いの中で、仕事を続けてきました。

なぜこの仕事をやるのか。それは、誰のためなのか。何を大切にして、何を捨てるのか。

その問いに答えられないと、世代も立場も違う人たちと、仕事が前に進まなくなった。

だからパーパスを掲げたくて掲げたのではなく、必要に迫られて、定義し始めたのです。

その経験から学んだのは、違いを翻訳し、再配置することの大切さでした。

それぞれのスタンスを理解し、どう組み合わせれば力になるのかを考え、場を設計していく。

多様性とは、違いの数ではなく、違いが前向きに作用している状態のこと。

そして、その状態をつくるためには、自己開示という小さな一歩が必要なのです。

そんな当たり前のことを、改めて考え直しているところです。

それでは、また来週お会いしましょう。

ダイバーシティについては、こちらの1冊「【デジタルの次を見通せ?】ビヨンド・デジタル――企業変革の7つの必須要件|ポール・レインワンド他」もぜひご覧ください。

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