成長する会社と、停滞する会社。~不完全リーダーシップのすすめ~

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増田みはらし書店・店主の増田浩一です。

今日は、ある公的機関での企業支援の現場で、不思議なほど心に残った出来事がありました。
「成長する社長」と「停滞する社長」を分けるもの。その問いに、ひとつの答えをくれたような気がしています。

公認会計士の先生とご一緒して、ある中小企業の社長のお話をうかがう機会がありました

中小企業診断士として、先生は公認会計士として、それぞれ別の部屋で同じ社長と向き合いました。 同じ時間、同じ会社の現状についてヒアリングをして、課題やこれからの展望について対話をしたんです。

面談が終わったあと、控え室でふたりで感想を共有する流れになりました。「どう感じましたか?」 そんな軽い問いかけから始まった雑談は、やがて少し深い「問い」に変わっていきました。

「結局、伸びていく会社と、そうでない会社を分けるものって、何なんでしょうね」

そう口にすると、公認会計士の先生が少し考えて、ふっと笑いながら、こう言いました。

「うーん……究極的には、社長が周りを巻き込めるかどうか、じゃないですかね」

ああ、と思いました。同じようなことを、さっきまで頭の中でぐるぐる回していたからです。「やっぱりそうですよね。同じことを考えていました」

立場も、専門領域も、見ている数字の解像度も違うふたりが、同じ会社を見て、まったく同じ結論にたどり着いた。その事実が、何か静かな確信のようなものを残しました。

周りを巻き込める社長の、静かな3つの力

ここで言う「周りを巻き込める」というのは、単に話が上手いとか、カリスマ性があるという意味ではありません。
もっと静かで、もっと根っこの方にあるものです。

1)この会社をこうしたい、と素直に信じていること。それを、
2)恥ずかしがらずに言葉にできること。そして、
3)「自分ひとりではそこに届かない」と認めて、人に助けを求められること。

この3つが揃ったとき、社長のまわりには少しずつ仲間が集まりはじめます。

社員も、取引先も、ときには金融機関や専門家も、その“信じているもの”の輪の中に招き入れられていく。会社は少しずつ“ひとりの仕事”から“みんなの仕事”へと変わっていきます。

逆に、事業が停滞していく局面には、別の風景があります。数字の悪化、取引先の離脱、人材流出。そこには必ずといっていいほど、「社長がひとりで抱え込んでいる構図」が見えてきます。

不安があっても言葉にできない。相談できる相手がいない。「こんな弱音を吐いたら、がっかりされるんじゃないか」と恐れてしまう。

社長が自分の内側に閉じてしまうと、会社の空気も少しずつ閉じていきます。現場との対話は「指示」と「報告」だけになり、未来の話よりも、今日の売上と明日の支払いの話ばかりがテーブルに並ぶ。誰も「一緒に見たい景色」の話をしなくなったとき、その会社は、目に見えないところからゆっくりと縮み始めているのかもしれません。

覚悟とは、2つの信じる力の掛け算

では、「周りを巻き込める社長」とは、なにが違うのでしょうか。 今日の出来事を振り返りながら、改めて言葉にしてみると、それはやっぱり「覚悟」なんだと思います。

ここでいう覚悟は、声を張り上げて宣言するような、劇的な決意ではありません。もっと静かな、日常に溶け込んだ覚悟です。

この事業には、こういう意味があると信じ続けること。うまくいかない日が続いても、「それでも、この方向に進みたい」と心のどこかで握りしめていること。そして、目の前の人に対して「あなたと一緒に、その景色を見たい」と言えること。

覚悟とは、自分を信じられる力と、人と共にあることを信じられる力の掛け算なのではないか。今日の帰り道、電車の中でぼんやりと、そんなことを考えていました。

自分を信じられないと、すぐに揺らいでしまいます。 少しうまくいかないだけで、「やっぱり無理なんじゃないか」と諦めたくなる。 逆に、人を信じられないと、すべてを自分でコントロールしようとしてしまいます。 「自分がやったほうが早い」「どうせ言ってもわかってもらえない」と、どんどん仕事を抱え込んでしまう。

どちらか一方だけでは、長くは持ちません。 自分を信じることと、人を信じて委ねること。 その両方を少しずつ育てていくことが、結果として「周りを巻き込める社長」への道なのではないでしょうか。

もちろん、まだまだ道半ばです。中小企業診断士として、広告会社の一員として、たくさんの経営者の方々とご一緒するなかで、「社長は孤独であってはいけない」と何度も感じてきました。 けれど同時に、ひとりで抱え込んでしまう癖を持っている人間でもあります。

だからこそ、今日のように、公認会計士の先生と「同じ答え」にたどり着けたことに、ささやか手応えを感じました。専門も立場も違うふたりが、「社長が周りを巻き込めるかどうか」という一点で、すっと視線を揃えられたこと。 それは、「やっぱりこの感覚を信じていいんだ」と背中を押してもらえたようなできごとだったんです。

孤独ではなく、共創を選ぶということ

成長する社長は、特別な才能を持っているわけではないのかもしれません。

むしろ、自分の弱さや不安を認めたうえで、それでも人と一緒に前へ進もうとする人です。 完璧ではない自分を抱えたまま、「それでも、この未来を一緒に見に行きませんか」と差し出せる人です。

停滞する社長は、才能がないからそうなるのではありません。

むしろ、真面目で、責任感が強くて、誰よりも会社のことを考えている人が多い。ただ、「自分だけで何とかしなければ」と思い込んでしまうがゆえに、結果として孤独になり、誰も巻き込めないまま、静かに体力を削ってしまうんだと思います。

もし、いまこの記事を読んでくださっているあなたが経営者で、「最近、少し行き詰まりを感じているな」と思っているのだとしたら。今日の小さな発見を、そっと手渡したい気持ちがあります。

全部を一気に変えなくても大丈夫です。

まずはひとつだけ、自分の頭の中にしまい込んでいた本音や不安、あるいは「本当はこうしたい」という構想を、誰かに話してみませんか。 社員でも、パートナー企業でも、金融機関でも、専門家でも構いません。

そのとき、大事なのは「正しい解決策」を提示してもらうことではなくて、「自分はこの未来を信じているんだ」と、言葉にしてみることです。 そして、「ひとりではそこに届かないから、一緒に考えてもらえませんか」と、お願いしてみることです。

人は、完璧なリーダーについていきたいわけではありません。

むしろ、自分と同じように迷い、悩み、それでも何かを信じて歩もうとしている人に、心を動かされるんだと思います。その姿に、自分の居場所や役割を見つけたとき、人は「巻き込まれる」のではなく、「自ら一緒に歩きたい」と感じるのではないでしょうか。

成長する社長と、停滞する社長。

その分かれ目は、壮大な戦略でも、華やかなプレゼンでもないのかもしれません。

「自分を信じること」と「人と共にあることを信じること」。
そのふたつを重ね合わせながら、孤独ではなく共創を選び続けられるかどうか。

今日の小さな現場から、そんなことを改めて考えさせられました。

あなたは、どんな未来を信じていたいでしょうか。 そして、その未来を、誰と一緒に見に行きたいでしょうか。

それでは、また来週お会いしましょう。

リーダーシップについては、こちらの1冊「【リーダーとは、役職ではなく、役割!?】リーダーシップ・シフト|堀尾志保,中原淳」もぜひご覧ください。

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