点と点をつなぐには!?『セレンディピティ 点をつなぐ力』クリスチャン・ブッシュ

セレンディピティ 点をつなぐ力
  • どうしたら幸運を手繰り寄せることができるでしょうか。
  • 実は、点と点をつなぐということに、真っ直ぐ見つめるということかも。
  • なぜなら、そのスタンスがセレンディピティを招くから。
  • 本書は、セレンディピティ的生き方を進めるための1冊です。
  • 本書を通じて、幸福へと向かう生き方のモデルケースを知ることができます。
クリスチャン・ブッシュ,土方奈美
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セレンディピティとは何か?

クリスチャン・ブッシュ(Christian Busch)さんは、偶然をチャンスに変える「セレンディピティ」の研究で知られる、経営学者・社会起業家です。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で教鞭をとりながら、ニューヨーク大学(NYU)でも講義を担当するなど、国際的なフィールドで活躍されています。もともとはドイツ出身で、世界経済フォーラム「グローバル・シェイパーズ」や、「Sandbox Network」などの若手リーダー育成プロジェクトにも関わりながら、社会変革とイノベーションをテーマに活動してきました。

彼の専門は、「いかにして予測不可能な出来事を、有意義な成果につなげることができるか」という問いに対する、実践的かつ理論的なアプローチ。これまでの成功論では語られてこなかった、“偶然”を力に変える技術を明らかにし、多くの人や組織に新しい行動の視座を与えています。

幸運は備えのある者に訪れる

そもそも、「セレンディピティ」という言葉を聞いたことはありますか?

なんとなく“偶然の幸運”のような意味で使われることが多いですが、実はもう少し奥深い概念です。語源は、18世紀にホレス・ウォルポールが使い始めた造語で、「セレンディップの三人の王子たち」という物語の中で、旅の途中に思いがけない発見を繰り返していく王子たちの姿に由来しています。

つまり、セレンディピティとは、「偶然に出会った事象を、意味ある発見へとつなげる能力」だと言えるのです。

偶然そのものは、誰の人生にも起こります。しかし、それを“ただの偶然”で終わらせるのか、“次につながる点”としてつかまえるのかは、自分自身の姿勢と行動次第。セレンディピティは、棚ぼた式に降ってくる運ではなく、「準備された心が引き寄せる偶然」なのです。

ビジネスの現場でも、イノベーションの種は「想定外」の中に潜んでいます。にもかかわらず、計画通り・効率重視で動いていると、せっかくの“点”に気づかずに通り過ぎてしまう。

だからこそ、今あらためて「セレンディピティとは何か?」を問い直す意味があるのです。

本書のテーマは、偶然と人間の志や創造力の相互作用です。つまりそれがセレンディピティなのですが、これを改めて本書ならではの視点で定義するのであれば、「予想外の自体での積極的な判断がもたらした、思いがけない幸運な結果」となるでしょう。

変化の時代――。

今、この時代に成功し、幸福を感じ続けるために重要なのは、すべてを綿密に計画しようとすることではないかもしれません。

わたしたちに求められるのは、予想外の状況を受け入れ、人生のめぐり合わせを最大限活かすことです。

人間の可能性を解き放つには、「備えあるものに幸運はかならず訪れる」という構えではなく、「人生における好ましい偶然を増やし、育み、活用するためには方法がある」という証があるのです。

では、その「方法」とは何なのでしょうか。

幸運をただ待つのではなく、自らの手で“つくり出す”ことができるとしたら——?

本書『セレンディピティ 点をつなぐ力』は、まさにその問いに真正面から応えてくれる一冊です。

クリスチャン・ブッシュさんは、セレンディピティを「偶然」と「行動」のあいだにある現象として捉え直します。運命的な出会いや思いがけない出来事は、ただのラッキーではなく、それに気づく「感度」と、意味づけて活かす「姿勢」によって生まれるのだと語るのです。

たとえば、道端で出会ったひとこと、偶然の会話、想定外のミス——そうした日々の小さな“ズレ”や“違和感”を、私たちはどのように受けとめているでしょうか。

見過ごしていませんか?
忘れていませんか?
「もしかして」の直感を。

セレンディピティとは、準備と偶然の“掛け算”によって生まれるものです。そしてそれは、特別な人にだけ許された才能ではなく、誰もがトレーニングできる「技術」でもある。

不確実性が増すこの時代にこそ、ブッシュさんが提唱するセレンディピティ・マインドセットが、わたしたちの仕事や人生に新しい視点をもたらしてくれるのです。

セレンディピティを知るには!?

具体的なマインドセットを説く前に、そもそもセレンディピティの効用を見つめてみましょう。

3つの類型で把握していきます。ちなみに、これで全てかというともしかしたらそうでもないということが、セレンディピティ・マインドセットでもあるので、注意です!!

類型① アルキメデス型

――解決したい問題への予想外の解決法

これは、自分が取り組んでいた課題に対して、思ってもみなかった角度からヒントや打開策がもたらされるタイプです。まさにアルキメデスが「ユーレカ!」と叫んだように、問題意識を持ち続けていたからこそ偶然に意味を見出せた瞬間です。
日々の関心や問いが“セレンディピティの受信装置”となっていることを、思い出させてくれます。

類型② ポスト・イット型

――別の問題への予想外の解決策

こちらは、もともとの目的とは違う文脈での応用が生まれるケースです。ポスト・イットが、失敗した接着剤の研究から生まれたように、「失敗」や「未活用のリソース」が、別の文脈で価値をもたらすというものです。
この型は、固定観念から解き放たれる柔軟な発想、越境的な視点が鍵となります。

類型③ サンダーボルト型

――予想外あるいは潜在的問題への“たなぼた”的解決策

最後は、まさに「想定していなかった問題」自体への出会いと、その場での発見的な解決です。まるで雷に打たれるようなインパクトのある瞬間――でも実は、何かを探していたわけでもなかったけれど、結果として何かが劇的に動き出すきっかけとなる。
この型は、偶然を偶然のままにせず、「これはもしかして?」と意味づけられる好奇心と感性がものを言います。

このように、セレンディピティは単なる“運”ではなく、「問いを持つこと」「柔軟性をもつこと」「意味をつかまえること」で実現できるものだとわかります。

この3つの型を踏まえながら、私たちも日常の中に「点」を見つけ、それを「線」に変える視点を持ってみませんか?

セレンディピティで重要なのは、予想外の出会いや情報の価値を認識し、活用する能力だ。1つひとつのステップは学習できるし、後押しすることもできる。セレンディピティ・マインドセット、すなわちこの強力な影響要因に気づき、つかみ、活用する能力は伸ばすことができる。

上記も踏まえて、セレンディピティの特徴は3つあることを知ります。

1.セレンディピティ・トリガーが存在すること。
2.トリガーをきっかけに点と点が結ばれていくこと。
3.実現したものは、事前に予測されていた、期待されていたものではないということ。

1.セレンディピティ・トリガーが存在すること

偶然の出会いや気づきには、きっかけとなる“トリガー”が必ず存在します。それは、何気ない会話かもしれませんし、道端で見かけた貼り紙、あるいはふとした違和感かもしれません。

重要なのは、それを「偶然」で終わらせず、“引っかかり”として受け止める感性と余白です。セレンディピティは、無意識に流れていく日常のなかで、意識的に「ひっかかる」ものに目を向けることから始まります。

2.トリガーをきっかけに点と点が結ばれていくこと

セレンディピティは、単なるひとつの出来事ではありません。トリガーを起点として、「あれ?」という気づきが別の出来事と結びつき、新しい意味や方向性が生まれていきます。

これは、脳内にある知識や経験、他人との会話などの“点”が、想定外の回路で接続されるプロセスです。まるで点と点がつながり、ひとつの文脈として立ち上がってくるような現象です。

3.実現したものは、事前に予測されていた、期待されていたものではないこと

最後に重要なのは、それが「予測された未来」ではないという点です。セレンディピティから生まれる成果は、往々にして、当初の計画にはなかったものです。

だからこそ、それは驚きと発見を伴い、個人や組織の進化に拍車をかけるのです。そしてその驚きの質こそが、創造性やイノベーションの原動力でもあるのです。

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マインドセットのあり方とは!?

具体的にセレンディピティ・マインドセットのあり方を見つめていきましょう。

クリスチャン・ブッシュが提唱するエッセンスをもとに、以下に8つのヒントをご紹介します。

1.「仕事は何をされていますか?」から卒業する

カンファレンスやイベントの場で、ありきたりな質問をするのはもったいないことです。むしろ、その人の“いま”に触れる問いかけをしてみましょう。

2.親しくなったら、少しだけ踏み込んでみる

「最近、やりがいを感じたのはいつですか?」「これからの1年を一言で表すなら?」「たとえ誰に反対されても譲れないものは?」――そんな問いが、思いもよらない会話をひらきます。

3.データではなく、物語に耳を澄ませる

表面的な事実よりも、相手の経験そのもの――どんな気持ちだったのか、何が印象に残っているのか――に注目してみてください。

4.質問に困ったら、自分から“ひっかかり”を差し出してみる

「最近、〇〇にハマっていて……」「気づいたらこんなことをしていました」など、自分の関心を言葉にすることで、偶然の糸が引き寄せられます。

5.自己紹介は“名刺の裏側”を話すチャンス

自分の関心・夢中になっていること・挑戦していることを語ることで、相手との共通項が見つかるかもしれません。

6.他者には、耳と心を開いて向き合う

熱心に聴き、相手の行動の裏にある意図や情熱を感じ取る姿勢が、新たな意味の“点”を見つける起点になります。

7.心からやりたいことを、あらためて3つ書き出してみる

問いをもつことは、セレンディピティの感度を高めます。小さな願望でもいいのです。まずは可視化してみましょう。

8.「これまで」と「これから」の自分の物語を描いてみる

過去の出来事のなかに、意外な“点”が潜んでいることがあります。それらを線としてつなぐ作業自体が、新しい偶然の準備運動になるのです。

これらのふるまい方は、どれも難しいことではありません。
しかし、こうした小さな習慣が、人生の方向すら変えてしまうような“点と点をつなぐ力”へとつながっていくのです。

セレンディピティは偶然の産物であると同時に、それを引き寄せ、育み、活かす「姿勢の体系」でもあります。
日々のふるまいのなかに潜むエッセンスを、5つの行動原則にまとめてみましょう。

1.関心をひらく(Open your Curiosity)

興味関心を持つことは、偶然の“入口”をひらく行為です。
自分が何に惹かれているのかを言語化し、相手にも関心を持つことで、セレンディピティのトリガーが生まれます。
→ 例:自己紹介で「いま夢中になっていること」を語る、相手の物語を聞く。

2.問いを育てる(Grow your Questions)

良質な問いが、見えない“点”を浮かび上がらせます。
日常の中で「なぜ?」「それってどういうこと?」と問いかけを持ち続けることで、出来事に意味を見出す感度が高まります。
→ 例:相手に「やりがいを感じる瞬間」などの内面に触れる質問をしてみる。

3.越境して混ぜる(Mix your Worlds)

異なる文脈が交差するとき、新しい“線”が生まれます。
自分の専門性だけに閉じず、異分野・異文化・異世代の視点と触れ合うことで、偶然が意味へと昇華されるのです。
→ 例:普段接点のない人や場所に、自らアクセスしてみる。

4.余白をつくる(Make Room for the Unexpected)

偶然を受け入れるには、予定を詰め込みすぎず、“間”を持つことが必要です。
沈黙、雑談、立ち話――そうした“何でもない時間”の中にこそ、思いがけない出会いが潜んでいます。
→ 例:イベントで移動中の時間やコーヒーブレイクも、意味あるものとして大事にする。

5.物語に編みなおす(Reframe into Narrative)

偶然の出来事を、意味のあるストーリーへと昇華させる力。
あとから振り返って「あの時、あの出会いが転機だった」と言えるようにするには、自分の歩みを物語として捉える視点が欠かせません。
→ 例:自分の「これまで」と「これから」を一度書き出してみる。

この5つの原則は、セレンディピティを単なるラッキーイベントではなく、「習慣としての偶然活用力」へと転換するフレームです。

私たちがこのマインドセットを携えることで、どんな日常も、どんな出会いも、未来への“点”となり得るのです。

幸運な人はたいてい肩の力が抜けている

セレンディピティには、インキュベーションの期間が必要です。時間が自分や環境を変えてくれていき、もしかしたら点と点を結びつけるヒントを提供してくれるかもしれません。

昨今のような不確実性が高まっている時代にこそ、セレンディピティ・マインドセットという生き方がもっと脚光を浴びていいのだと思います。

答えを焦って、自分を縛るのではなく、常に可能性に対して心をひらいている状態をいかに作れるのか、日常的な感度と考えと行動が欠かせないのかもしれませんね。

まとめ

  • セレンディピティとは何か?――偶然を味方につけるスタンスです。
  • セレンディピティを知るには!?――類型に触れて、日常にごくありふれていることを知りましょう。
  • マインドセットのあり方とは!?――8つの行動指針、5つの論点を参考に、自らで考えてみましょう。
クリスチャン・ブッシュ,土方奈美
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