増田みはらし書店・店主の増田浩一です。
最近、自分の読書体験について改めて考える機会が増えています。
本を手に取り、ページをめくり、著者の言葉と向き合う——この一連の体験が、少しずつ変化しているような気がしています。
それは単純に電子書籍が普及したからでも、読書アプリが便利になったからでもありません。
もっと根本的な部分、つまり「なぜ読むのか」「どう読むのか」「読んだ後にどうするのか」という、読書の本質的な部分での変化です。
私にとって読書は、単なる情報収集の手段ではありません。
日々の仕事や生活の中で感じる違和感や疑問を、より深く理解するための対話の場なのです。
著者との対話を通じて、自分自身の考えを整理し、新しい視点を獲得し、そして何より、それを実際の行動に移していく——そんな一連のプロセス全体が、私にとっての読書体験です。
そして今、この読書体験に新しい要素が加わりつつあります。
それが、AIとの対話です。
関係性から生まれる問いの発見
読書の出発点は、いつも日常の中にあります。
新規事業開発の現場で、クライアント企業の担当者の方とお話ししていると、様々な課題が見えてきます。
「限られたリソースで情報発信をどう効率化するか」「自社の強みをどう言語化すればいいのか」「外部パートナーとの連携をどう構築するか」——こうした具体的な悩みの背後には、必ず「関係性」の問題があることに気づきました。
お客様との関係性、チームメンバーとの関係性、社会との関係性。
これらの関係性を考える中で、「そもそも私たちはなぜこのアプローチを取っているのだろう?」「他にもっと良い方法があるのではないか?」といった問いが自然と浮かんでくるのです。
このような問いが生まれたとき、私は本を探します。ただし、答えを求めるためではありません。自分なりの仮説を持ちながら、その問いをより深く掘り下げるために読むのです。
たとえば「なぜ日本のビジネスマンは決断に時間がかかるのか?」という疑問を抱いたとき、私は文化論、組織論、意思決定理論など、様々な角度からその問いにアプローチできる本を選びます。
重要なのは、読む前から「こういう理由があるのではないか」という自分なりの仮説を持っていることです。
三者循環を試してみた結果
従来の読書体験では、基本的に「著者」と「自分」の2者による対話でした。
著者の主張を理解し、それに対して賛成したり反対したり、自分の経験と照らし合わせたりしながら読み進める。これはこれで十分に価値のある体験でした。
ところが最近、この対話にChatGPTという第3者を加えてみることにしました。すると、読書体験が驚くほど立体的になったのです。
先日、宮嶋勲さんの『最後はなぜかうまくいくイタリア人』という本を読みました。この本の中で著者は、イタリア人の気質を「自分で納得できないと動かない人たち」と表現していました。この一文に、私は強い関心を抱きました。
なぜなら、日本のビジネス現場では、しばしば「組織から与えられた課題」に対して、自分の感性に蓋をしながら取り組むことが求められるからです。
でも、新規事業を創造する0→1の段階では、むしろイタリア人的な「自分で納得できないと動かない」という姿勢の方が重要なのではないか——そんな仮説が浮かんだのです。
ここで私は、ChatGPTにこんな問いを投げかけました。
「イタリア人の『自分で納得できないと動かない』という気質と、日本のビジネス文化の違いについて、どう思いますか?特に新規事業開発の文脈で考えてみたいのですが」
AIからの返答は、仮説を整理し、さらに深める助けとなりました。
文化的背景の違い、個人主義と集団主義の対比、創造性とリスク回避の関係など、様々な角度から問いを掘り下げることができたのです。
そして、対話を通じて、私自身の考えがより明確になりました。
新規事業開発において大切なのは、自分の感性を元手に他者とつながりながら物事を創造していくこと。そのためには、まず自分自身が「納得できる」状態を作ることが出発点になるのだと――。
体験を血肉化する試み
読書の真価は、読み終えた後にこそ発揮されます。
『イタリア人』の本から得た気づきを、私は実際の仕事に活かしてみることにしました。
社内外の連携を進める際の言葉遣いを変え、チームメンバーとのコミュニケーションでも「まず自分がどう感じるか」を大切にするよう心がけました。
この変化をさらに言語化し、体系化するためにも、AIとの対話が役立ちました。
「今日のミーティングでこんなアプローチを試してみたのですが、どう思いますか?」「この考え方をチーム全体に共有するとしたら、どんな伝え方が効果的でしょうか?」
——そんな問いかけを重ねることで、読書から得た気づきを、より具体的な行動指針に落とし込むことができたのです。
結果として、チーム内でのアントレプレナーシップに関する議論が活発になり、プロジェクトの進め方にも良い変化が生まれています。
メンバー一人ひとりが「自分はこの課題をどう捉えているか」を言語化する機会が増え、それがチーム全体の創造性向上につながっているように感じています。
読者の皆さんと共有したいこと
これまでお話ししてきた体験は、まだ実験の途中段階です。でも、もしよろしければ、皆さんにも試していただきたいアプローチがあります。
1. 関係性から問いを見つける 日々の仕事や生活の中で、誰かとの関係性について感じる違和感や疑問を大切にしてみてください。その問いこそが、読書の出発点になります。
2. 仮説を持って本を選ぶ 問いが見つかったら、「きっとこういう理由があるのではないか」という自分なりの仮説を立ててから本を選んでみてください。答えを求めるのではなく、仮説を深めるための読書です。
3. AIとの三者対話を試してみる 読書の途中や読了後に、「この本のこの部分について、こんなふうに考えたのですが、どう思いますか?」とAIに問いかけてみてください。新しい視点や気づきが得られるかもしれません。
4. 小さな実践から始める 読書から得た気づきを、まずは小さな場面で試してみてください。そしてその体験を、再びAIとの対話を通じて言語化してみる。この循環が、読書体験を血肉化する助けとなります。
私自身、この新しい読書体験をまだまだ探求中です。AIとの対話によって読書がどう変わるのか、それが私たちの思考や行動にどんな影響を与えるのか——そんなことを、皆さんと一緒に考えていければと思っています。
読書とは、著者との対話であり、自分自身との対話であり、そして今では、AIとの対話でもあります。この多層的な対話を通じて、私たちはより深く、より創造的に学び続けることができるのではないでしょうか。
それでは、また来週お会いしましょう。
読書体験について深く知るためには、こちらの1冊「知的インプットを増やし、自らを知り、アウトプットせよ!?『読書を仕事につなげる技術』山口周」やこちら「本は、自分と人を結ぶ、コスパ最強である!?『本を読む人はうまくいく』長倉顕太」も大変おすすめです。ぜひご覧ください!


