言葉とはなにか!?『22文字で、ふつうの「ちくわ」をトレンドにしてください』武政秀明

『22文字で、ふつうの「ちくわ」をトレンドにしてください』武政秀明の書影と手描きアイキャッチ
  • 「伝わった」と思っていた言葉が、相手には全く違う意味で受け取られていた――そんな経験はないでしょうか。
  • 実は、言葉は「見えない多数決」で意味が決まっているんです。
  • なぜなら、同じ言葉でも、受け手の経験や背景によって、まるで違うイメージが立ち上がるからです。
  • 本書は、コピーライターとして数々のヒットを生み出してきた著者が、「伝わる言葉」を作るための技術を体系化した一冊です。
  • 本書を通じて、私たちは言葉という曖昧な存在を改めて捉え直し、相手理解の本質に迫ることができます。

武政秀明さんは、WEBメディア編集長として活躍する言葉のプロフェッショナルです。

限られた文字数で人の心を動かす言葉を生み出してきました。

何の変哲もない商品を、言葉の力だけでどう魅力的に見せるか。

その挑戦の中で培われた技術と思考法が、本書には詰まっています。

著者は、言葉を操る技術は特別な才能ではなく、相手を深く理解する姿勢から生まれると説きます。

言葉は「見えない多数決」で成り立っている

「お金」と「言葉」には、ある共通点があります。

どちらも、私たちが共同で信じているからこそ価値を持つという点です。

お金は、みんながそれに価値があると信じているから機能します。

言葉も同じで、多くの人が同じような意味で使うから、コミュニケーションが成立するんです。

でも、その「同じような意味」というのが曲者なんです。

例えば「おかし」という言葉を考えてみましょう。

平安時代には「趣深い」というニュアンスで使われていたこの言葉が、現代では「面白い」という意味で使われています。

これは私の連想ですが、言葉の意味は時代とともに変化し、その時々の「多数決」で決まっているんです。

現代でも、同じ言葉が人によって違うイメージを喚起します。

「高級感」と聞いて、ある人は重厚な革製品を思い浮かべ、別の人はミニマルなデザインをイメージするかもしれません。

「温かい雰囲気」という言葉も、木のぬくもりを想像する人もいれば、人の優しさを思い浮かべる人もいます。

日常の中で、私たちはこうした言葉の曖昧さをほとんど意識していません。

「伝えた」と思った瞬間に、コミュニケーションは完了したと錯覚してしまうんです。

でも実際には、送り手と受け手の間には常に認識のズレが存在しています。

本書が提示するのは、この曖昧さを前提として、それでも「伝わる言葉」を作る技術です。

著者は「22文字」という制約の中で、いかに相手の心に届く言葉を紡ぐかを追求してきました。

その過程で見えてきたのは、言葉そのものではなく、「相手」を深く理解することの重要性だったんです。

相手を理解する3つの力

著者は、伝わる言葉を作るために必要な力を3つに分類しています。

①見る力

「何を書けばいいかわからない」と悩む人の多くは、実は「何を書くか」が見えていないのだと著者は指摘します。

「ふつうのちくわ」を前にして、「どう表現しようか」と考える前に、まず「ちくわの何が価値なのか」を見つける必要があります。

同じものを見ていても、視点を変えることで全く違う発見ができるんです。

本書では、視点をずらす具体例として次のような変換が紹介されています。

・「本日のパスタ」→「漁師町で生まれた絶品パスタ」
・「商品質」→「職人が一つずつ手作業」
・「無添加」→「赤ちゃんも安心して食べられる」
・「実績十分」→「看板から価値へ」
・「読書会」→「著者の真意を考察し合う読書会」

視点をずらすとは、対象の別の側面に光を当てることです。

②分解する力

物事の「いいところ」を見つけたら、次にそれを分解します。

「なぜそれがよいのか」を言語化していくプロセスが、分解なんです。

例えば「このカフェは雰囲気がいい」という感想があったとします。

それを分解すると、「窓が大きくて明るい」「木材が多く使われている」「BGMのボリュームが小さい」といった要素に落とし込めます。

分解は、意外と簡単です。

あなたが見つけた「いいこと」について、「なぜそれがよいのか」を自分自身に問いかければいいんです。

そして、それを小学生にもわかるように、「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」と細かく分解していきます。

「なぜ」を分解して深掘りすることで、あなたの語彙力は飛躍的に高まっていきます。

③言い換える力

まず、自分が言いたいことを定めることが大切です。

そして、その言いたいことと、相手が理解できる表現のギャップを埋めていくんです。

人間は知らない言葉はわからないからです。

逆に、知っている言葉なら安心して読み進められます。

相手が知らない言葉を、相手が知っている言葉に置き換える。

知名度の高い固有名詞を「てこ」にするのも効果的です。

サザコーヒーが究極のナンバー1を続けられる理由、といえば「茨城でスタバとコメダを圧倒する名店の正体」と言い換えられます。

ポリュームたっぷりの定食、といえば「大盛り無料 ご飯150グラム→300グラム おかず7品の健康定食」と具体的な数字を使うことで、相手がイメージしやすい表現に変換できます。

限られた文字数の中で、相手に伝わる本質的な言葉だけを選び抜く必要があるのですね。

伝わる言葉は「相手の中」で完成する

「書き出しの一言が運命を分ける」という指摘は、非常に示唆的です。

A「1年で売上トップになった新人営業マンの秘訣」
B「新人営業マンが1年で売上トップになった秘訣」

AとBで何が違うのか。

語順を変えただけですが、Aは「すでにトップになった人の話」として受け取られ、Bは「成長プロセスの話」として受け取られやすいんです。

相手が何に関心を持つかで、同じ内容でも響き方が変わります。

一般的な文章術とコピーライティングは、ちょっと違うと著者は言います。

一文で相手の心をつかみ、想像力を働かせ、最大の効果を狙います。

短い言葉だからこそ、多くを語ることができるのです。

「ふつうのちくわ」をトレンドにするというタイトル自体が、最初の言葉の実践例になっています。「22文字」という具体的な数字が、身近に存在する「ふつうのちくわ」という意外な組み合わせと結びつき、読者の好奇心を刺激するんです。

これは、言葉によって読者を当事者にする、つまりこのタイトル自体が「最初の言葉」の実践になっているんですね。

他者との対話でも、同じことが言えます。

相手が何を大切にしているか、どんな言葉に反応するか。

それを見極めずに、自分の言いたいことだけを並べても、言葉は届きません。

伝わる言葉は、送り手が完成させるのではなく、受け手の中で完成するんです。

私たちにできるのは、相手の中で言葉が豊かに育つための「種」を丁寧に選び、適切に植えることだけです。

本書が繰り返し伝えているのは、言葉を操る技術ではなく、相手を理解する姿勢なんです。

相手のことを想い、言葉をシンプルにしていくには、こちらの1冊「なぜ、あなたの話は相手に伝わらないのか!?『言葉を短くする技術』岡田真一」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 言葉は「見えない多数決」で成り立っている――同じ言葉でも受け手によってイメージは異なり、送り手と受け手の間には常に認識のズレが存在します。お金と同じように、言葉も共同幻想として機能しているという視点が、コミュニケーションの本質を照らし出します。
  • 相手を理解する3つの力――見る力で視点をずらし、分解する力で本質を要素に落とし込み、言い換える力で相手が理解できる表現に変換する。短くシンプルに語ることは、この3つの力を極限まで研ぎ澄ます訓練になります。
  • 伝わる言葉は「相手の中」で完成する――一般的な文章術とコピーライティングの違いは、相手基準で考えるかどうかにあります。私たちにできるのは、相手の中で言葉が豊かに育つための種を丁寧に選び、適切に植えることだけです。
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