- リーダーとして、あなたは部下に何を教えているだろうか?
- 実は、多くのリーダーが「技術」や「スキル」ばかりを教え込もうとして、肝心なことを見落としているんです。
- なぜなら、人を育てるということは、仕事のやり方を教えることではなく、その人が自ら考え、気づき、成長していく土台をつくることだからです。
- 本書は、野球界の名将・野村克也が、監督として選手を育ててきた経験から導き出した「人づくり」の哲学を凝縮した一冊。
- 本書を通じて、技術の前に人間力を磨くこと、教えるのではなく気づかせること、そして優先順位を間違えない教育こそが、人を変え、組織を変え、社会を変えていく原動力になることを学べます。
野村克也さんは、1935年生まれ、京都府出身のプロ野球選手・監督です。
現役時代は南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)の捕手として活躍し、三冠王に3度輝くなど球史に残る実績を残しました。
引退後は、ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスで監督を歴任。
特にヤクルトでは、弱小チームを日本一に導き、古田敦也をはじめ多くの名選手を育て上げました。
野村さんの特徴は、「ID野球」と呼ばれるデータ重視の戦略と、徹底した人間教育を両立させたことです。
テスト生から這い上がった自身の経験から、「人間は自分の思うようにならないことがふたつある。ひとつは人間はひとりでは生きていけないということ。もうひとつは自分の思うようになることはほとんどない」という人生観を持ち、それを選手育成に活かしてきました。
本書は、そんな野村さんが監督として培ってきた教育哲学を、惜しみなく公開した貴重な記録なのです。
「気づかせ屋」としてのリーダーシップ
野村さんが監督として最も重視したのは、選手に「気づかせる」ことでした。
監督は「気づかせ屋」でなくてはならないということだ。判断基準をレベルアップしていかねばならない
この言葉が示すように、リーダーの役割は答えを教えることではないんです。
部下が自分で考え、自分で気づき、自分で判断基準を高めていけるように導くこと。
これが本当の教育なんですね。
多くの組織では、上司が「こうやれ」「ああやれ」と指示を出し続けます。
でもそれでは、部下は言われたことしかできない人間になってしまう。
野村さんは、ちょっとしたヒントや上司の言葉で何かに気づき、「自分はもっこうすすべきだ」「自分が感じているいるのは感じているのか」という問いを持てる選手を育てることに注力しました。
なかには、ちょっとしたヒントや上司の言葉で何かに気づけば、「自分はもっこうすべきだ」と感じいる選手もいれば、無知である ことを自覚させ、無知は恥なのだと気づかせなくてはならない選手もいる。
さらに何が正しくて、何が間違っているのか、問題点を明確にして正していく。
つまり、監督は「気づかせ屋」でなくてはならないということだ。
これは現代の組織にこそ必要な視点なんです。
変化の激しい時代、答えのない問いに向き合わなければならない時代だからこそ、自ら考え、気づき、行動できる人材が求められています。
そしてそういう人材は、指示命令では育たない。
「気づかせる」というアプローチこそが、これからのリーダーシップの核心なんです。
野村さんは、この「気づかせる」教育を実践するために、徹底的に経験を重視しました。
指導者に求められるのは、選手にどうすれば実践力をつけることができるかということである。「実際にやってみる」というタイプのビッチャーにはこう対処した。おまえも一度やってみるか」といったアドバイスができるように
指導者自身が経験していなければ、適性や過酷さを考えることができない。
当然、いい管理職にはなれない。
この原則は、あらゆる組織に当てはまります。
現場を知らない管理職、苦労を経験していない上司には、部下を本当の意味で導くことはできないんです。
野村さんが名監督になれたのは、テスト生から這い上がり、捕手として現場の最前線で戦い続けた経験があったから。
その経験があるからこそ、選手一人ひとりの状況を理解し、的確なヒントを与えることができたんです。
「おれと同じ感覚なんだな」と驚く点がいくつかあった。ひとつは「掃除の徹底」ということは小さなことの積み重ねだ」といっていた点。
そしてもうひとつ、野村さんが重視したのが「小事が大事を生む」という哲学です。
の好きな言葉に「小事が大事を生む」というのがある。小事が大事を生む。これはいいことをいうなと思い、大きいことを目指すのではなく、小さい事柄を積み重ねていくことで大きな目標が達成できるという意味だ。彼の姿勢は まさに私の野球哲学に通じる ら感銘を受けた。
華々しい成果ばかりを追い求めるのではなく、日々の小さな積み重ねを大切にする。掃除を徹底する、基本を繰り返す、当たり前のことを当たり前にやり続ける。
こうした地道な努力の先に、大きな成長があるんです。
リーダーの役割は、この「小事」の重要性に気づかせること。
そして、それを続けることの価値を理解させることなんですね。
人間教育が先、技術は後
野村さんの教育哲学で最も印象的なのが、「技術の前に人間力」という優先順位の明確さです。
監督の役目というとすぐにチームづくりとなるが、チームをつくるにはまずひとりひとりの選手をつくらなくてはならない。
多くの組織では、すぐに「スキルアップ」や「業績向上」を求めます。
でも野村さんは違った。
まず「人」をつくる。
人間として成長させる。
その土台があって初めて、技術が活きてくるという考え方なんです。
野村さんが選手に伝え続けたのは、「仕事」と「人生」は切り離せないということでした。
「仕事」と「人生」は切っても切り離せない関係にある。「人生とは幸福への努力である」(トルストイ)といういい方もあるように、仕事を通じて成長と進歩があり、人生と直結しているのだ。
野球は単なる技術の習得ではない。
人生そのものなんです。
だから、人としてどうあるべきか、幸福とは何か、努力とは何か——そういう根本的な問いに向き合える選手を育てることが、監督の仕事になる。
そして野村さんは、人間を変えるためには「心」を変えることから始めなければならないと説きます。
私が心打たれた言葉がある。心が変われば態度が変わる。態度が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる。
この言葉の最初の2行を、「考え方が変われば行動が変わる」とアレンジしているのが、野村さんの教育の核心です。
つまり、技術を教え込むのではなく、まず「考え方」を変える。
そのためには、選手自身が気づき、納得し、腹落ちすることが不可欠なんです。
だからこそ、野村さんは「気づかせる」ことにこだわった。
人間教育において最も重要なのは、本人が自分で気づくことだからです。
野村さんは、人間教育を怠った選手の末路も見てきました。
しかし、選手を人間的に教育するといった意識をもって監督になった者など、今の12球団を見渡してもひとりもいない。ただし、それを彼らだけの責任にするわけにはいかない。監督を任命したオーナーにも責任の一端はある。
技術だけで勝てる時代は終わりました。
人間として成長できない選手は、どこかで壁にぶつかります。
これは野球だけの話ではありません。
ビジネスの世界でも、技術やスキルだけでは限界がある。
人間力、人間性、人としての器——そういうものが、長期的な成功を左右するんです。
野村さんが34歳でプレイングマネージャーとして監督になったとき、年上のチーム選手たちを率いるために何が必要かを考えました。
そして至った結論が、「人間的にまだ未熟だった これに外部からの不満や嫉妬といったものを跳ね返める方法はひとつしかなかった」ということ。
つまり、人間学を深めること。
土台となる人間性を磨くこと。
それなくして、真のリーダーシップは発揮できないんです。
人間学のない者に指導者の資格なし
この言葉が、野村哲学のすべてを物語っています。
組織を変える教育の力
野村さんの教育哲学が最も力を発揮したのが、組織を変革する場面でした。
弱小チームだったヤクルトスワローズを日本一に導いた背景には、徹底した「意識改革」があったんです。
意識改革で組織は変わる
野村さんが監督として最初に取り組んだのは、選手たちの「偉大なる常識」を植え付けることでした。
原理原則。野球界にかかわらず、どの世界でもそれが仕事をするうえでの礎となる。では原理原則とは何か。それは、「偉大なる常識」である(=「誰もが知っていることを誰もができるまで磨き上げられた心自ら閉ざり」)である。
当たり前のことを、当たり前にできるまで徹底する。
これが組織変革の出発点なんです。
多くの組織が改革に失敗するのは、華々しい戦略や新しい制度ばかりに目を向けて、この基本を疎かにするからなんですね。
野村さんは、選手一人ひとりの意識を変えることで、チーム全体を変えていきました。
個人主義が結集してチーム優先となる
バラバラだった個人が、共通の目的のもとに結集する。
そのためには、一人ひとりが「なぜ自分はここにいるのか」「何のために戦うのか」を理解しなければならない。
野村さんの教育は、常にそこに立ち返るものでした。
そして、組織を変えるために野村さんが最も重視したのが、「気づき」の連鎖です。
一人の選手が気づけば、その影響は周囲に広がる。気づいた選手が行動を変えれば、チームの雰囲気が変わる。チームの雰囲気が変われば、弱小チームでも強豪に勝てるようになる。
人間教育はもちろん、技術的なことでも気づかせることがポイントとなる。理屈にかなったフォームとか、ボールのとらえ方、配球、そういったものについても、「こうやってみたらどうだ」「こういう対応の仕方がある」のでやってみないか」と選手に言った。何度も同じことを繰り返し、何年もかけてそうやって教えていくしかない。
この地道な積み重ねこそが、組織を変える力になるんです。
野村さんの教育哲学は、短期的な成果を求めるものではありません。
何年もかけて、じっくりと人を育てる。
その結果として、強い組織ができあがる。
これは現代の組織にこそ必要な視点なんです。
四半期ごとの業績、短期的なKPI——そういうものばかりを追いかけていては、本当に強い組織は作れません。
人を育てる。
人間力を高める。
その積み重ねが、長期的な競争力につながるんです。
そして野村さんが強調するのが、「優先順位を間違えない」ということ。
まずは選手たちの「人づくり」に読むである。
技術より人間教育。
短期的成果より長期的成長。
個人の能力より組織の結束。
こうした優先順位を明確にすることが、リーダーには求められます。
野村さんの言葉を借りれば、教育という概念をアップデートすること。
それは、「教える」から「気づかせる」へのシフトであり、「技術」から「人間」へのシフトであり、「短期」から「長期」へのシフトなんです。
この積み重ねが、確実に人を変え、そして周囲を変え、社会を変えていく原動力になる。
野村さんが野球界で実証したこの原則は、あらゆる組織、あらゆるリーダーにとって普遍的な真理なんです。
自らの人としての土台にフォーカスしてみるのは、言語化・見える化が重要だと思います。こちらの1冊「変化を主体的に作るには!?『人生の純度が上がる手帳術』本橋へいすけ,井上ゆかり」もぜひご覧ください。

まとめ
- 「気づかせ屋」としてのリーダーシップ――野村さんが監督として最も重視したのは、選手に答えを教えることではなく、自ら考え気づかせることでした。「小事が大事を生む」という哲学のもと、経験に基づく指導を通じて、選手が自分で判断基準を高めていける土台をつくる。これこそが、変化の激しい現代に求められるリーダーシップの本質です。
- 人間教育が先、技術は後――「仕事」と「人生」は切り離せないという前提に立ち、野村さんは技術よりも先に人間力を磨くことを優先しました。心が変われば態度が変わり、態度が変われば行動が変わる。この連鎖を生み出すために、人間学を深め、選手一人ひとりが自分の人生と向き合えるよう導いたんです。
- 組織を変える教育の力――弱小チームを日本一に導いた背景には、徹底した意識改革がありました。個人主義を結集させチーム優先の組織をつくるために、野村さんは何年もかけて気づきの連鎖を生み出し続けました。優先順位を間違えず、人づくりに注力する。この地道な積み重ねこそが、組織を変え、社会を変えていく原動力になるんです。
