個人の力を本当に引き出せているか!?『チームプレーの天才』沢渡あまね,下總良則

『チームプレーの天才』沢渡あまね,下總良則の書影と手描きアイキャッチ
  • あなたの職場では、本当の意味での「チームプレー」ができているでしょうか?
  • 実は、これまでチームプレーだと言われてきた(そして多くの人がそう思い込んできた)ものと、共創の時代に求められる「これからの時代のチームプレー」は違うんです。
  • なぜなら、従来の上意下達型や単なる外注関係では、もはや複雑化する課題に対応できないばかりか、優秀な人材ほど離れていってしまうからです。
  • 本書は、業務改善の専門家である沢渡あまねさんと、人材育成のプロフェッショナルである下總良則さんが、新時代の協働スタイル「チームプレー3.0」を提唱する一冊です。
  • 本書を通じて、単なるチームワークを超えた「共創」の本質と、それを実現するために個人と組織が何をすべきかが見えてきます。

沢渡あまねさんは、業務改善やインターナルコミュニケーションの専門家として、多くの企業の組織変革を支援してきました。「バリューサイクル・マネジメント」や「職場の問題地図」シリーズなど、現場で実践できる組織改善のメソッドを数多く提唱しています。組織の硬直化や縦割りの弊害を現場目線で捉え、実効性のある解決策を示し続けてきた経験が、本書の実践的な視点につながっています。

下總良則さんは、人材育成とキャリア開発の第一人者です。組織と個人の成長をつなぐ仕組みづくりに長年携わり、特にプロティアン・キャリア(変化する環境に適応できる自律的キャリア)の重要性を日本企業に伝えてきました。個人の多様性を活かしながら組織全体の力を引き出す方法論は、多くのビジネスパーソンに影響を与えています。

おふたりが、本書を執筆した背景には、「従来型の組織運営では人が育たず、優秀な人材ほど離れていく」という危機感がありました。

変化の激しい時代に、組織も個人も生き残るためには、対等でフラットな関係で共に創造する「共創」のスタイルが不可欠だという確信が、本書の執筆動機となっています。

なぜ今「チームプレー3.0」が必要なのか

職場で「チームワークが大事だ」と言われない日はないでしょう。でも、その「チームワーク」の中身は、本当に時代に合っているでしょうか。

本書が提示するのは、チームプレーの進化論なんですね。

従来の「チームプレー1.0」は、メンバーに多様性がなく、上意下達でフラットとは言い難い組織スタイルでした。確かにこれでも一定の成果は出せたかもしれません。でも、変化のスピードが遅く、答えが見えやすい時代の話です。

次に登場したのが「チームプレー2.0」。他社(取引先)、他部署、他チームなど「外」の人たちとも仕事を発注して事業を構築するスタイルです。これは一見、開かれた協働に見えますが、本質は「発注と受注」の関係。上下関係や力関係が存在し、本当の意味で対等な協力関係とは言えません。

共創が「センス」ではなく「開発可能な能力」である

この言葉が示すように、これからの時代に求められるのは「チームプレー3.0」なんです。

他業界の取引先など組織の外の人たちと、対等でフラットな関係を構築し、「共創」関係で共に事業運営や課題解決をするスタイル。権力やお金の力のみで相手を従えるのではなく、理念やストーリーへの共感を得つつ、各々の立場や利害関係を尊重し、内発的な動機によって活動を共にする形です。

なぜこの進化が必要なのか。それは、複雑化する課題に対して、一つの組織や限られた視点だけでは解決策が見えなくなっているからです。多様な視点、多様な専門性、多様な経験を持つ人たちが、対等な立場で知恵を出し合わなければ、イノベーションは生まれません。

そして何より、本書が警告するのはこの現実です。

「共創」できない組織から、人は離れていく

なぜ自分(メンバー)が関わるのか。そこに面白みややりがいを見つけられそうか。そのような姿勢で向き合うか。そのチームの活動を通じて、自分は成長できそうか(あるいはどんな利益が得られそうか)──こうした問いに答えられない組織は、もはや人を引きつけることができないんです。

特に、自律的にキャリアを考え、成長を求める優秀な人材ほど、「ただの指示待ち」や「形式的な協力関係」には魅力を感じません。本当に意味のある仕事、自分の価値を発揮できる場、共に何かを創り上げる実感──これらを提供できない組織は、人材流出という形で代償を払うことになります。

「ゼロから創るビジョン」という表現も印象的です。与えられたビジョンに従うのではなく、メンバーが共にビジョンを創り上げるプロセスそのものが、共創の第一歩なんです。

共創を実現する3つの土台と4つの役割

では、具体的にどうすれば「チームプレー3.0」を実現できるのか。本書が示すのは、まず3つの基盤を整えることなんです。

1つ目は「創るビジョン」です。

あなたがゼロから創るビジョン

ビジョンが「存在しない」、あるいは示されたビジョンが「わかりづらい」場合もあります。でも本当の問題は、それが押し付けられたものであること。

次のような事態に陥るかもしれません。

(あなたが)他者を巻き込めない、
(相手が)メリットがわからない、
(組織全体が)目指す方向とやっていることのズレを認識/修正できない、
(組織全体的に)目指す方向とやっていることのズレを認識/修正できない。

共創の出発点は、メンバーが共にビジョンを創り上げるプロセスにあります。「ここには敵がいない」環境を創ることで、言うべきことは言う。

モヤモヤを放置せず、違和感を口に必要で対処していく。育ってきた環境や境遇が違う人たちが集まる共創の場だからこそ、その葛藤と能力が必要なんです。

2つ目は「心理的安全性」です。

「心理的安全性が高い=馴れ合いの関係」ではありません。チームや組織をより良くしていくために、言うべきことは言う。

これは誤解されやすいポイントです。心理的安全性とは、単に居心地が良いとか、対立を避けるということではありません。むしろ逆で、建設的な対立ができる状態を指すんです。決めるための対立、内発的な動機が鍵となり、相手と新たな景色を創り上げていくこと。これが真の心理的安全性であり、チームプレー3.0が体現された形なんです。

3つ目は「多様性の尊重」です。

本書は2つの多様性について語っています。イントラパーソナルダイバーシティとは、一個人または一組織が多様な視点や役割を持っている状態を示します。個人内多様性と訳されます。複数の顔を持つことで組織人としての柔軟性を高める意義があると考えてもよいでしょう。

一方、コグニティブダイバーシティとは、ものの見方や考え方、価値観などの認知的な多様性を指します。多様な体験やインプットをすることは、イントラパーソナルダイバーシティとコグニティブダイバーシティの双方を実現する手立てと言えるでしょう。

この2つの多様性を理解し、尊重することで、チーム内に豊かな視点と創造性が生まれます。一人ひとりが複数の顔を持ち、異なる考え方を持ち寄ることで、これまでにない解決策が見えてくるんです。

そして、これら3つの基盤の上に、4つの役割をチームに配置していく必要があります。

なかにも、プロジェクトマネージャーの存在はとくに重要で、タスクを書き出して作業化し、担当者のお尻をたたくことはもちろん、もっとタスクの進捗管理とかかわる仕事あってもいい

本書が示す4つの役割は以下の通りです。

  • ①ビジョナリー/リーダー 強いビジョンを持ち、周囲に影響力をもたらす判断力
     
  • ②ファシリテーター/ファウンダー リーダーシップ・マネジメント、および巻き込み型関係をつくるものの中で必要とする。なお、私はリーダーシップとはファシリテーターを持ったファシリテーターを兼ね備えたリーダーが理想だと思っています。ファシリテーターとはファウンダーと呼んでいます。
     
  • ③コミュニティマネージャー チームの人間関係に外なく、上下関係を意識させない、いわば「場づくり運営者」の存在
     
  • ④プロジェクトマネージャー そのチームやプロジェクトにおけるタスク管理、貴様的な活動目標の定義や義務、役割分担、進捗管理、ドキュメント・モノ・カネなどのリソースのマネジメント

重要なのは、これらの役割が一人に集中する必要はないということです。プロジェクトマネージャーがいくつもの定義できることにリーダーやメンバーがいまいち分かっておらず、心もラクになり、チームも良くなります。

むしろ、それぞれの強みを活かして役割を分担し、補完し合うことで、チーム全体としての力が最大化されます。「自分だけで満足しない」姿勢が、共創の文化を育てるんです。

個人として共創できる人材になる

組織として共創の体制を整えることも重要ですが、同時に個人としても「共創できる人材」になることが求められています。

本書が最終的に問いかけるのは、「この仕事の経験が、自分の未来にどう役立つか?」という視点なんです。

その仕事の経験が、自分の未来にどう役立つか? それによって将来「食いっぱぐれない」人材になれるのか? あらゆる仕事において、この問いが頭をよぎります。

これは決して利己的な問いではありません。むしろ、自分自身のキャリアに対して主体性を持つことが、共創においては不可欠なんです。なぜなら、共創とは対等な関係性だから。指示されたことをただこなすのではなく、自分の価値を理解し、それを発揮できる場を見極める力が必要になります。

共創活動を進める上でも、各メンバーの「キャリア」は無視できません。

共創活動を進める上でも、各メンバーの「キャリア」は無視できません。

組織が個人のキャリア形成を支援し、個人も自分の成長に責任を持つ。この双方向の関係があって初めて、持続可能な共創が実現するんです。一方的に組織に尽くすことを求められるのでも、個人が勝手に自分の利益だけを追求するのでもない。お互いにとって意味のある関係を築くことが、チームプレー3.0の本質です。

本書はここで「プロティアン・キャリア」という概念を紹介しています。

プロティアン・キャリアは、次の2つの軸から成り立っています。※identity(アイデンティティ):自己認識、欲求・価値観など ※Adaptability(アダプタビリティ):変化する環境に適応できる能力

プロティアンとは、ギリシャ神話の神プロテウスに由来する言葉で、「変幻自在」を意味します。つまりプロティアン・キャリアとは、環境の変化に応じて自分自身を柔軟に変えていける自律的なキャリアのことなんです。

この2つの軸が重要です。まずアイデンティティ(自己認識)
自分は何者で、何を大切にし、何を実現したいのか。
この軸がしっかりしていないと、変化に流されるだけになってしまいます。自分の価値観や強みを理解することが、共創において自分の立ち位置を明確にする土台になります。

そしてアダプタビリティ(適応力)。変化する環境に合わせて、新しいスキルを学び、新しい役割に挑戦できる柔軟性です。これがなければ、いくら自己認識が明確でも、時代遅れになってしまいます。

どうしても重なり合う部分や選手できる部分が見いだせない場合は、無理して一緒にやる必要もないでしょう。

この言葉は厳しく聞こえるかもしれませんが、実は健全な考え方なんです。すべての人と共創する必要はありません。価値観や目指す方向が根本的に異なる場合、無理に協力しようとすることは、お互いにとって不幸な結果を招きます。

だからこそ、自分が何を大切にしているのか、どんな環境で力を発揮できるのかを理解することが重要なんです。そして、自分と共鳴できる人たちと出会い、共に価値を創り出していく。そのためには、自分から動き、様々な場に足を運び、多様な人と関わる必要があります。

何でも自分たちだけで満足ろうとしない。足りない能力や経験や意欲は公開して他者の協力を仰ぐ。受信には自己開示の意義が、受信には他者理解の意義がある

この「自分だけで満足しない」という姿勢こそ、共創の出発点です。

完璧な個人や組織など存在しません。お互いの不完全さを認め合い、それを補完し合うことで、一人では到達できない高みに到達できるんです。

そのためには、自分の弱みや足りない部分を隠すのではなく、オープンにすることが必要です。

「ここは苦手なので助けてほしい」「この分野はよく分からないので教えてほしい」──そう素直に言える関係性が、心理的安全性の土台になります。

同時に、他者の強みや個性を理解し、尊重する姿勢も欠かせません。自分と異なる考え方や価値観を持つ人を排除するのではなく、その違いを価値として受け入れる。それがコグニティブダイバーシティの実践であり、共創を豊かにする源泉なんです。

最終的に、共創できる人材になるということは、自分のキャリアに主体性を持ちながら、同時に他者と協力して価値を創り出せる人になることです。アイデンティティとアダプタビリティを磨き、多様性を受け入れ、オープンに協力し合う。これが、これからの時代を生き抜く力になります。

組織と個人が共に成長する関係を築くこと。それが「チームプレー3.0」の目指す世界なんです。

沢渡あまねさんのご著書については、ぜひこちら「越境せよ!?『新時代を生き抜く越境思考 ~組織、肩書、場所、時間から自由になって成長する』沢渡あまね」もご覧ください。

そして、下總良則さんのご著書については、こちら「【まだ言葉になっていないこと?】インサイトブースト:~経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本~|下總良則」もぜひあわせてご覧ください。

まとめ

  • なぜ今「チームプレー3.0」が必要なのか――従来の上意下達型(1.0)や発注・受注関係(2.0)では、複雑化する課題に対応できず、優秀な人材ほど離れていく時代になりました。対等でフラットな関係で共に価値を創る「共創」のスタイルが、これからの組織と個人の生存戦略なんです。
  • 共創を実現する3つの土台と4つの役割――共にビジョンを創る、心理的安全性を確保する、多様性を尊重する。この3つの基盤の上に、ビジョナリー、ファシリテーター、コミュニティマネージャー、プロジェクトマネージャーという4つの役割を配置することで、チームは機能し始めます。
  • 個人として共創できる人材になる――プロティアン・キャリアの視点で、自己認識(アイデンティティ)と適応力(アダプタビリティ)を磨くこと。自分だけで満足せず、オープンに協力し合う姿勢が、共創を実現する個人の力になります。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!